六百四十一話 火山の中
「うわぁ~~~~……暑いな」
「そうですね」
「うむ、暑いな」
三十一階層に足を踏み入れた三人は同じ事を思った。
(そりゃ熱いってのは分かってたけど、それでもいざこういったエリアに来てみると、予想以上に暑いな)
しかし三人は以前、火山のふもとで探索した時に必要だと判断して買ったマジックアイテムを装備しており、何もしてない状態よりは暑さを軽減している。
(それでも……ちょっと暑いな)
碌に動けないほど暑くはない。
だが、それでも真夏の日に外に出たときぐらいの暑さを感じる。
「多分、火山のふもとで探索した時よりも暑いよね」
「……そうですね。場所が場所ということもありますし、それは仕方ないかと」
ソウスケは少し動きやすくする為に、水の魔力を使って自身の周りの温度を下げた。
「だよな……とりあえず、ゆっくり進むか」
三十一階層からは火山の内部といった表現が正しく、周囲にはマグマの海がチラホラとある。
「……美味そうだな」
「ん? 何かいたか」
「マグマの海に泳ぐサーペントがいた」
「それはマグマサーペントですね。確か食料としての価値も高いらしいですよ」
「へぇ~~、それはそれは……ザハーク、チャンスがあったら積極的に狩っていこうか」
「あぁ、任せてくれ」
マグマサーペントの鱗は耐熱性が高く、マグマエリアなどを探索する時の防具材料として重宝される。
「それにしても……以前探索した火山のふもとと比べて、きちんと休める場所が少ないですね」
「暑さだけでダメージを受けそうな階層だからな……モンスターもそれなりに強いだろうし、セーフティーポイントでないとゆっくり休息出来なさそうだな」
「そうか? 俺たち三人で水の壁を張って休めばどこでも休めそうな気がするが」
「それは……そうかもしれませんね」
ソウスケのパーティーは三人とも水魔法が得意であり、魔力量も多い。
三人で繰り返し水の壁を設置すれば涼みながら休むことが可能。
(一般的な場所と比べて水の壁が消える時間は早いだろうけど、三人もいれば問題無いか……もしかして、俺たちってこういった場所を探索するのに凄い向いてる面子なのでは?)
ソウスケは今更そんな事実に気が付いた。
ミレアナやソウスケの氷魔法に限っては、数秒程度ではあるがマグマを凍らせることも可能。
つまり、マグマの海を泳ぐモンスターであっても海面に現れれば沈む前に狩るのも難しくない。
「俺としては、やはりあの時戦ったアシュラコングのようなモンスターと遭遇したいものだ」
「可能性としては低いと思いますが……まぁ、ゼロではないでしょう」
二十一階層から三十層の間でダンジョンイレギュラーと遭遇した。
だからという訳ではないが、ミレアナの中でまたダンジョンイレギュラーが起こるかもしれないという考えが浮かんでいた。
「その時はザハークに任せるよ」
「ふふ、有難いな……ソウスケさん、このまま行けば二体と当たる」
「三十一階層に入って早々か、いったいどんなモンスターだろうな」
ここに来るまで無駄に魔力を消費しない程度の速さで降りてきたが、もう目的地にやって来たのでモンスターとのんびり戦っても構わない。
「赤いというか、熱そうなゴーレムだな」
「おそらくマグマゴーレムかと」
物陰から現れた巨体のモンスターはCランクのマグマゴーレム。
あまり質が高くない武器で斬りかかってしまうと、逆に溶かされてしまう。
更に魔力を纏えば、ランク三や四の武器であっても溶かされてしまう可能性がある。
そんな敵を前にしてザハークはニヤッと笑い、いつも通りまずは素手で戦いに挑んだ。
三人が三十一階層に突入し、火やマグマの属性を持つモンスターと戦い始めた頃、ギリスたちは導きの書を使用して三人の居場所を把握。
だが、ここで一つ問題が起こった。
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