六百五話 肉も売る
地上に戻って来たミレアナはまだ夕方ごろということで、日が暮れる前に冒険者ギルドへと向かう。
(フォレストタイガーの素材は色々と使えそうですし、体が他と比べて大きかった個体の素材は丸々残しておきましょう。他は……トレントとエルダートレント以外、魔石を除いて売っても良さそうですね)
何回も中級者向けダンジョンに潜っているので、素材はたんまりとある。
ただ、ソウスケの空間収納と違ってミレアナが持つ複数の収納袋には、収納できる容量に限界がある。
なので……ここらで一気に消費しておきたい。
(明日から……いえ、夕食後も含めて数日は杖造りに没頭しましょう。数をこなせば良いものではないかもしれませんが、私はまだまだ素人ですからね。数をこなせなければ話にならないでしょう)
高品質の品を造る為には、まずある程度の数を造らなければ到底辿り着けない。
ミレアナの腕は、まだまだ素人。
ソウスケの様な最初からチートを持っているわけではない。
ただ、才能はそれなりに持っている。
なので完全に素人という域からは脱している。
冒険者がゆえに、素人が使う素材としては破格な物をいくつも使える。
そしてミレアナは高級な素材を完全に駄目にしてしまうことはない。
可能性を全て引き出すことは不可能だが、ルーキーなりに良い結果を出せている。
「ふぅ、ようやく着きましたね」
ミレアナとしては、今回の討伐に関してもっと早く終わると思っていた。
最下層まで降りてついでにボスを狩ることなく、二十一階層に戻って地上に帰る。
最初のプランはそうだったのだが、標的であるフォレストタイガーが中々見つからなかったが故に、依頼を達成するまで予定以上に時間が掛かってしまった。
(……相変わらず視線が鬱陶しいですね)
単純に興味本位で向けられる視線は何も感じないが、下品な考えが籠った視線を向けられると無意識にイライラとしてしまう。
ただ、割り込んで前に行くわけにはいかないので、自分の番が来るまで我慢我慢。
(視線を遮断できるようなスキルやマジックアイテムはないでしょうか……いえ、それはそれで駄目ですね。そういった視線が分からないと、奇襲に反応出来なくなってしまう……無視するのが一番ということですね)
ソウスケの奴隷として街に出たころと比べれば、嫌らしく下品な視線への耐性はできた。
「受けていた依頼の品です」
「ッ! 少々お待ちください」
ミレアナのギルドカードとアイテムバッグから取り出されたフォレストタイガーの毛皮を見た受付嬢は、毛皮を丁寧に扱いながら査定を行う。
「とても非常に良い状態ですね」
「そうですか、ありがとうございます。それでは、こちらの査定もお願いします」
「……か、かしこまりました」
アイテムバッグの中らから大量の素材が取り出される。
杖の素材として使えそうな物は残しているが、それでも出会うモンスターを全て倒してるだけあって、その量は毎度のことながらかなりのもの。
ソウスケがいれば食える肉は取っておくのだが、ソウスケとは現在別行動中なので、取っておく必要がない。
ダンジョンに潜る際も、入る前に露店で適当に買った料理を入れておく。
昼飯はそれで十分であり、一日も探索していれば食えるモンスターを狩れる。
というわけで、ミレアナだけで狩りをしている時は普段売らない肉の分も金が入ってくる。
フォレストオークやタイガー、サイクロプスやシャドウスネークなどの肉もそれなりの値段で売れるので、ミレアナの懐はホクホク状態。
そしてミレアナは食事に金を使うことはあるが、武器に関してはソウスケから買ってもらった弓や飛竜の双剣があるので買うのは偶に使う矢のみ。
(そういえば随分と宝箱が溜まりましたね。ソウスケさんに会ったら渡しておかないと)
特にソウスケが強制している訳ではない。
だが、ミレアナは一人探索の際に手に入れた宝箱に関しては全く手を付けていない。
(さて、宿に戻って……まずは夕食ですね)
飯を食わねば戦はできぬ。
戦ではないが、杖造りにはかなりの集中力を使っているので、造り終わると体力を大きく消費したように感じる。
だが、宿に戻る前にミレアナに用事がある人物がギルド内にいた。
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