五百八十二話 珍しいルーティーン
順調にダンジョン攻略を進め、圧倒的な速さで十階層のボス部屋前に到着。
そしてミレアナは今まで得た経験からここでもダンジョンの入り口と同じく、冷気を漏らせば自分に声を掛ける馬鹿はいないと学び、実戦。
すると見事、ミレアナの前後に並ぶパーティーは全く声を掛けようとしなかった。
ただ、十層のボスモンスターがどんなモンスターなのか知っているので、ミレアナが生き残れるか心配する者はいた。
十層のボスモンスターはロックゴーレムが三体。
レベルは一階層から十階層までではレアモンスターであるワームと同じく二十台後半。
ロックゴーレムの特徴として、斬撃系の攻撃が効きづらい。
ポケ〇ンのように水や草による攻撃を行ってもダメージは入るが、効果抜群とはならない。
素手による格闘技も攻撃主の五体がロックゴーレムよりも劣れば、逆に自分がダメージを食らうことになる。
ハンマーや槌による攻撃が有効打なのだが……エルフは基本的にハンマーや槌を使わない。
中には使う者もいるが、それはごく少数。
素手や斬撃武器、弓などで戦う場合は相当な力が必要になる。
(確か十層のボスはロックゴーレムが三体でしたね……まぁ、素手だけで十分でしょう)
ソウスケから貰った飛竜の双剣など、ロックゴーレムに通じる武器は持っているが、ミレアナは使うまでもないと判断を下し、自分の番が回ってくるまでいつも通りポーションを造っていた。
その光景には思わず並んでいた冒険者たちも首を傾げた。
何故ここでポーションを造るのかと。
人それぞれ強敵に挑む前のルーティーンがある。
それは上級者向けダンジョンに潜る冒険者なら知っている常識。
だが、今までボス戦の前にポーションを造る冒険者などは見たことがなかった。
声を掛けられることはなくなったが、好奇な目を向けられてもミレアナは淡々と作業を続けた。
そして一つ前のパーティーが中に入ると、薬草などをしまって扉が開くのを待つ。
ダンジョンには勿論初めて挑む者もいるが、何度も潜り慣れているベテランも挑む。
ミレアナの前に並んでいたパーティーはそんなベテランたちであり、三分ほどで苦も無く三体のロックゴーレムを倒した。
そしてミレアナの番になり、ボス部屋には新たなロックゴーレムが現れていた。
「さて……直ぐに終わらせましょうか」
いつも通り身体強化と脚力強化を使用し、更にはエアステップを発動。
ロックゴーレムに向かって一直線に走る。
そう、一直線に走るのだが……ロックゴーレムたちはその姿を捉えきれなかった。
次の瞬間にはミレアナが放ったウィンドブレードにより三つの首が地面に落とされた。
そして体は綺麗に三つに斬り裂かれる。
魔石は傷付けないように、回収され……ボス戦は五秒ほどで終了。
頭部を砕かれても動けるのがゴーレムだが、少々空きが生まれてしまう。
そして体を三等分されてしまえば、もうまともに動くことは出来ない。
「おそらくレベルはそれなりに高かったのでしょうが……まともな勝負になりませんでしたね」
それは戦う前から解っていた。
そしてミレアナがそもそもザハークやソウスケのように戦いを楽しむ気がないので、ロックゴーレムと遊ぼうとは思わない。
「さて、一旦帰りましょうか」
十層のボスを倒したことで、次からは十一階層に転移して潜ることができる。
ただ、ソウスケたちと潜る場合は、もう一度一階層から潜らなければ一緒に降りることが出来ない。
地上に戻ったミレアナはふと思った。
ダンジョン探索で手に入れた素材をどうしようか。
魔石に関しては小さいので場所を取らないが、モンスターの素材はかなり場所を取る。
ミレアナが現在ソウスケから譲り受けた収納袋はかなりの容量を持つが、今のペースで探索していればいずれ限界を迎える。
杖の素材として使える物もあるが、そうでない素材もある。
ボス戦で手に入れたロックゴーレムの岩などがそれに当てはまる。
「……少しぐらい売っても問題ありませんね」
食欲を満たす前に冒険者ギルドに向かい、ダンジョンで手に入れた素材の一部を買い取ってもらった。
当然、ミレアナ一人がそれを出したのでギルド内は少々ざわついたが、捕まる前にミレアナは速足で退場した。
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