八百八十四話 最後までしっかりしろよ
「とりあえず今日はこの街で一泊だな」
リアス達が所属する学園までは距離が遠く、流石に一日では辿り着かない。
カラスクという街でその日は宿泊することになった。
ただ、既に日は落ちているので晩飯を食べてそれで終わり。
翌朝には朝食を食べて再び都市に向かう……という流れだったのだが、そうはいかなかった。
夕食を食べている最中、ザハークは従魔用の宿裏で食事を食べており、食堂の中には子供一人と美女と美少女が四人という状況だった。
そんな一党を見て……下心が出ない男は残念ながらいなかった。
「よぅ、姉ちゃん達。良かったら俺達と一緒に飯を食べないか?」
五人に……正確には四人に声を掛けてきた冒険者達が四人。
乱暴者、という印象はない。
ワイルド系と優男系の男が二人ずつのパーティー構成。
(……ふ~ん。弱くはない、って感じだな)
鑑定を使ってはいないが、四人が遺影だけは一丁前の雑魚では無いということが解った。
「もちろんお代は僕達が奢るよ。見たところ、四人共冒険者かな? 色々と情報交換でもしないかい?」
(言葉に下心を見せない……もしかして常習犯か?)
四人がどこまで狙っているのか……ワンナイトまで狙っているのか、それとも単純に四人に興味を持っているかはっソウスケも解らない。
ただ、優男の一人はミレアナの怒りを少々買ってしまった。
「あなたの眼は節穴でしょうか。私達は五人で食事をしているのですが」
「あぁ~~、それはすまなかったね。坊や、お兄さん達はこっちのお姉さん達とお話がしたいんだけど良いかな?」
(坊やって……俺とリアス達は殆ど年齢変わらないと思うんだが。とりあえずお前に用は無いから引っ込んでろって言いたいんだよな)
男達は確かにそこそこ良い装備を身に着けている。
冒険者達の中でも彼らを侮るような者は多くないだろう。
ただ、優男たちが本心ではソウスケの事をどう思っているのか……それはミレアナやリアス達も解っていた。
「申し訳ありませんが、私達はあなた達と食事をする気はありません。自分達の席に戻ってください」
「私達も同意見です。折角楽しい時間を送れていたのに……邪魔しないで貰えますか」
「そうですわね。あなた達がいると空気が悪くなります。それと……言葉は隠せていても漏れ出ている気持ちが隠せていませんよ」
「……き、気持ち悪いです」
(ぶっ!!……な、何気にカレアの言葉がきついな)
四人の反応に周囲の客達からはちらほらと笑い声が聞こえてくる。
自分達のナンパが盛大に失敗したことで四人の顔が赤く染まる。
ミレアナ一人だけに断られたならまだしも、リアス達からも断られたら流石に付け入るスキがない。
そして最後にミレアナがダメ押しを加えた。
「それと……私達はあなた方に奢られるほどお金には困っていませんので」
そう言いながらミレアナは懐から白金貨一枚を取り出した。
「「「「なっ!!!???」」」」
取り出された物の正体を知った四人は悲鳴に近い声を上げる。
白金貨は例えCランク冒険者でも中々見る機会がない硬貨だ。
それをさも当然な表情で取り出したのを見て、一気に得体のしれない集団に思えてしまう。
「そういう訳ですから、お引き取りください。本当に邪魔ですよね、ソウスケさん」
(ここで俺に振る?)
完全に自分の出番は無いと思っていたところで声を掛けられた。
さっさと終わらせたいという気持ちもあったので、裏にいるザハークの力を借りることにした。
「あぁ……そうだな。あんまりしつこいと、俺達の従魔であるオーガに頼んで潰して貰おうかな」
オーガを連れた冒険者が街に訪れたという情報が少々広まっており、それは四人の耳にも入っていた。
Cランクの冒険者である彼らならオーガを相手にそこまでビビる必要は無いのだが、徐々に殺気が強めていくミレアナに気付き、慌てて適当に謝罪して店から出て行った。
(……上手くポーカーフェイス出来てたんだから最後まで続ければ良いの)
そう思いながらため息を一つこぼした。
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