四百七十五話 魔法戦士
(ふむ、一応仕事だから遠距離攻撃で攻めておいた方が良いと思ってやったが……やはりあっさりと破壊されてしまうな)
ウォーターボールやアロー、ランスは炎を纏う拳一発で蒸発して消えてしまう。
(そもそも俺がそこまで得意という訳では無いが……それでもここまで効かず、破壊されてしまうとはなぁ……それなら、少し方法を変えてみるか)
先程よりもウォーターアローの数を増やす。その数は十ニ。
アシュラコングの腕の数の倍だ。
そしてウォーターアローはザハークの魔力操作により回転しており、貫通力が増している。
「くらえ」
アシュラコングに捕まらない様に素早く動き回りながら貫通力を上げたウォーターアローを放つ。
勿論、六つ腕ゴリラの頭の中に避けるという選択肢は無く、全て迎撃しようとする。
「……俺が言うのはあれだが、中々に単細胞だな」
確かに十二個あるうちの六つはアシュラコングの炎の拳によって呆気なく蒸発してしまった。
だが、残りの六つは素早く軌道を変化させてアシュラコングの体にヒットした。
(ダメージはあまり深くはないが、多少の出血はあるか。決定打にはならないが有効な手かもしれないな)
接近戦とは真逆の遠距離戦で戦うザハークにリアス達は筆は辛うじて動かせているが、その戦いぶりに驚嘆するほかなかった。
「ザハークさんは、接近戦が専門……なんですよね」
「言っただろ、あいつは希少種だ。あれぐらい出来ても不思議では無い……筈だ」
上位種やキング種とは遭遇したことがあるが、希少種とは会ったことが無い。
なのでザハーク以外の希少種が通常の個体と比べてどれだけの技術を持っているのかは知らない。
「それでもあそこまで魔法を無詠唱で連発……それにあの魔力操作のレベル……とんでもないですね」
「魔力操作に関しては努力次第でどうにか出来ると思うぞ。俺も偶に遊びで魔力操作の訓練をしてるし」
魔力操作の難易度は操る魔力の塊の数が増えることで難しくなる。
(ウォーターランスを途中でボールやアローに変えるとかはそこまで難しく無い筈だ。操る数、そして一つ一つに違う動きを追加する。それが結構難易度が高い気がする)
蛇腹剣と他の武器を使って二刀流で戦ったりする事で並列思考のスキルを得たソウスケにとっては難しいと感じない技術だが、そもそもウォーターランスを途中でボールやアローに変える事すら初心者に難易度が高過ぎる。
ソウスケは最近になって自覚してきているが、魔力操作の才に関しては品種改良を重ねてきている貴族よりも圧倒的に上だ。
「今は難しいかもしれないし、無詠唱は努力で出来るようになるかは分からないけど、ザハークの魔力操作は努力を重ねれば出来ると思うから、訓練して損は無いと思うよ」
「そう、ですね。今回の調査が終わって学園に戻ったら早速行おうと思います」
「私も是非行わせていただきます」
「わ、私も頑張ります!!」
魔法を扱う者としては是非とも習得したい技術に、三人の熱が高まる。
(それにしても接近戦の実力が高く、魔法を使った遠距離戦の実力もここまで高いとは……まさにオーガの魔法戦士ですね)
オーガとは本来他のモンスターとはかけ離れた腕力を用いて敵を粉砕する存在。
そんなモンスターが攻撃魔法を使用して僅かずつではあるが、Aランクモンスターであるアシュラコングにダメージを与えている。
学園の生徒達がこの光景を観ればひっくり返って驚く事間違いない。
(流石にそろそろ接近戦に戻しても良いだろう)
ウォーターバーストまで放ったザハークだが、どれも戦いを終わらせる決定打にはならなかった。
アシュラコングの体には無数の傷があるが、そのどれもが熱消毒されており、無理矢理塞がれている。
なので傷の数は多いが、大して出血していないので戦いに殆ど支障は無い。
「さて、そろそろ接近戦に戻すか」
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