四百七十二話 あれ以上の緊張感
「あれが……アシュラコング。迫力エグイな」
リアスをお姫様抱っこから降ろし、他の冒険者達を襲っているアシュラコングの圧に思わず言葉が漏れる。
「三人はここで授業に提出する内容をじっくり観察していてくれ」
「は、はい。分かりました!!」
「よし、ザハーク。とりあえず助けに入ってやってくれ」
「勿論だ!!」
身体強化のスキルを使用し、冒険者達とアシュラコングの間に割って入る。
「……ウホ?」
「はっはっは、流石はAランクモンスターだな。怒気や殺気を放っている訳では無いのにこの圧……戦い甲斐があるというものだ。お前ら、アシュラコングに殺されたくなかったら今直ぐこの場から離れろ」
「あ、ありがとうございます!!!」
ザハークの後ろ姿しか見ていない四人の冒険者はオーガだとは思わず、同じ同僚の鬼人族と認識しており、礼を言うと直ぐにその場から離れて行く。
「おい、これを使ってやれ」
逃げる為に自分達の方向に向かってきた冒険者に対し、重傷を負っている冒険者が二人いるのでそこそこ効果があるポーションを二つ投げ渡した。
「お、おう。ありがとな!!!!」
リーダーである男の冒険者が大きな声で感謝の言葉を述べ、ダッシュで駆け出す。
「……なんだか、珍しいですね」
「そうか?」
「見たところ新人の冒険者という訳では無かったので」
ミレアナの中でソウスケは自分と同じ冒険者になったばかりのルーキーには優しいが、ベテラン以上の冒険者にはそこまで優しいというイメージが無い。
「あぁ~~~、なるほど。でも、見た感じ結構重傷って感じだったからな。せっかくザハークがカッコ良く割って入って助けたのに死んだらちょっと気分悪いだろ」
「……そうかもしれませんね。それで、戦いは全てザハークに任せるのですか」
「そうだなぁ……うん、そうする。本気で戦えば、負けるってことは無いだろ」
その言葉に、三人の強さに慣れてきたリアス達も流石に無理なのではと思った。
人の言葉を喋るモンスターというだけで特殊であり、道中でその強さも見てきた。
だが、今回の敵はAランクのモンスター。実力があっても決して一人で挑むような敵ではない。
「そ、ソウスケさん。相手はAランクモンスターのアシュラコングですよ! いくらオーガの希少種であるザハークとはいえ、三人で戦わなければ勝ち目は薄くなるかと」
「いいや、問題無い。勿論、アシュラコングが弱いとは思っていない。だが……ザハークが負けるとも思ってない。ミレアナはどう思う?」
「……両者とも接近戦が得意なタイプです。腕力は……少々アシュラコングの方が上かもしれませんが、スピードはザハークの方が上なのは確実。それを考えれば、決して勝てない相手ではないと思います」
「だよな。そういう訳だから、三人はさっき言った通りじっくりと戦いを観て考えていてくれ。まぁ、アシュラコングが万が一逃走しようとするなら、そうはさせないように動くけどな」
ソウスケだけではなくミレアナもザハークの勝利を信じている様なので、三人はそれ以上は何も言わず、ザハークとアシュラコングの戦いに集中することにした。
「それじゃぁ……楽しい喧嘩を始めようか、アシュラコング」
「……ウホッ!」
ザハークが体が撒き散らす戦意にアシュラコングは反応し、目の前の敵は先程戦っていた冒険者達とは比べ物にならない強さを持っていると認識。
先程までの遊びの様な戦い方は止めると決め、六つの拳を握りしめてどっしりと構える。
(ふっふっふ、良い緊張感。俺だけがアシュラコングと対峙していると考えると、パラデットスコーピオンの上位種と対峙した時以上の緊張感だ)
ザハークもどっしりとファイティングポーズを取り、両者はいつでも動ける状態になる。
直ぐにどちらかが動くことは無かった。
「……読み合っているのでしょうか」
「どう、だろうな。二人共そこまで考えるタイプには思えないし……単純にタイミングの問題じゃないか」
そんなゼルートの言葉を示すように、小石が地面に落下する音がゴングとなり、両者は動き出す。
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