四百三十九話 襲撃

「ソウスケさん、敵襲です」


外で見張りをしていたミレアナから声を聞いたソウスケは直ぐにソファーから降りてテントの外に出た。


「ほぉ~~……これはこれは、中々の数だな」


テントの外はゴブリン達に囲まれていた。

通常種のゴブリンだけでは無く上位種も含まれている。


「Eランクの者達は絶対に単独で行動するな!! お互いの背中を晒さない様に戦うんだ!!!!」


レアレスは直ぐにアーガス達に指示を出し、ソウスケ達の元へやってくる。


「緊急事態だ。悪いが力を借りたい」


「勿論ですよ。依頼内容は偵察ですけど、冒険者なんだから戦いますよ。グラン! 俺と一緒に組むぞ!!!」


「りょ、了解です」


レアレス達三人はなるべくアーガス達を守れる位置で戦い、ソウスケはグランと、ザハークはミレアナと組んでゴブリン達の迎撃を始める。


「グラン、俺が後方から支援するからお前は自分に襲い掛かってくる目の前の敵にだけ集中しろ」


「分かりました!!!」


ソウスケの実力を信頼しているグランは全力ダッシュでゴブリンの群れへと突っ込む。


(……いや、俺の事信用してくれてるのは嬉しいんだけど、普通はもう少し躊躇うものじゃないのか?)


グランの素直さに嬉しさを感じながらも疑問を持つソウスケだが、言葉通り後方支援に徹する為に大量の石ころが入ったツボを取り出す。


「ハッ!! フンッ!!! せりゃッ!!!」


ゴブリンの群れに突っ込んだグランは容赦なく拳と脚を使って蹴散らしていく。

数は確かにゴブリンの方が多い。しかし身体強化のスキルを使用しているグランには力もスピードも及ばず、全ての攻撃が炸裂する。


中には武器を持ったゴブリンの上位種が攻めてくるが、それよりも更に速い動きを見た事があるグランとしては大した速さでは無く攻撃を躱す、もしくは硬化を一瞬だけ使用して受け止めて反撃。


それを繰り返すことでゴブリンの死体がどんどん積まれていく。


「やっぱり接近戦に向いているよなグランは」


そして後方でグランの死角から攻撃しようとするゴブリンを石ころで狙撃していく。

たかが石ころ、しかしソウスケが投げればされど石ころになる。


グランを後方から弓で狙撃しようとするアーチャーとソウスケを魔法で攻撃しようとするメイジ。

標的が複数になれば投げる石ころの数を増やして対処。


どうやってコントロールしているのかといえば、単純に投擲のスキルによるコントロール補正により狙った場所に自然と動くようになっている。


(にしても……本当に数が多いな。ファイター、ナイト、アーチャー、メイジ、ジェネラルまでいる。言うてそこまで強く無いからザハークとミレアナだけで蹴散らせるけれど、乱戦だとあんまり派手な技を使うのも躊躇うか」


ミレアナは弓を使って、ザハークはグランと同じく素手でドンドンゴブリンを吹き飛ばしていく。

ザハークという己より圧倒的に格上の相手に怯えて逃げ出すゴブリンもいるが、それを逃がさずにミレアナが狙撃で仕留める。


(こいつらはコボルトみたいに腹を空かせている訳では無い。ならこいつらがコボルト達の食料を奪っていた……でも、普通に戦力を考えればコボルトが負ける訳が無い。数の力で押し切ったのか?)


ソウスケの考えは外れてはいなかった。

確かに一対一の戦力を考えればゴブリンはコボルトよりも弱い。ジェネラル以下の上位種であってもそう簡単には勝たせて貰えないだろう。


だがコボルトはゴブリンよりも大きく優れている点がある。

それは鼻の良さだった。強者の匂いを嗅ぎ取ることが出来る鼻は、ゴブリン達に染みついた強者の匂いに怯えていた。


(それならなんでザハークにはビビらなかったんだって話だが……まぁ、今はそんなことどうでも良いか)


ミレアナの狙撃もあって逃げるゴブリンも全て倒し、襲撃してきた全ての個体を倒すことに成功した。


「ソウスケさん、これで……終わりですかね?」


「そう……じゃないみたいだな!! ミレアナッ!!!!」


「はいッ!!!」


木の奥から放たれた攻撃に対して速攻でミレアナに指示を出すソウスケ。

そしてそれが解っていたミレアナは即座に弓に風の魔力を纏って放ち、対処した。


「真打ち登場ってところか?」


木の奥からは先程アーガス達に向かって放たれたウォーターランスを放ったと思われる個体と、もう二つの個体が現れた。

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