四百三十八話 久しぶりの徹夜

探索三日目の昼過ぎ、レアレス達はようやくお目当ての大群を見つけた。


斥候を専門とする者達に加えてミレアナがある程度近い距離まで近寄り、その戦力を確認する。

そして十秒ほどでその戦力を確認した後、直ぐにその場からソウスケ達がいる場所まで戻った。


「どうだった?」


「数は百近いでしょう。中にはジェネラルもいました」


「ッ!!?? そ、そうか……くそッ!! 思っていたよりも面倒な事になっていたのか」


ゴブリンジェネラルのランクはC。一口にランクと言ってもその間に差は勿論ある。

良く似た本能を持つオークのジェネラルもランクはCだが、戦力で言えばオークジェネラルの方が上。


(しかも百近い数とは……ジェネラルがいるならおそらく他の上位種もいるだろう。ソウスケ達の様な異常な全力がいるとしても、流石に良くない状況だ)


レアレスはソウスケ達三人が自分達より強くて戦い慣れている事は解っているが、流石にその数を相手にするのは不可能だと判断する。


それに加えて自分達という存在がソウスケ達の脚を引っ張るかもしれない。

レアレス達三人とグランはまだ戦力になるが、百近い大群が相手となると他のEランクのルーキー達は正直邪魔にしかならない。


「とりあえず、一旦下がってギルドに報告するのが一番じゃないですか」


「……あぁ、それが一番だ。むやみに刺激して全滅するとか最悪なケースは絶対に避けなければならない」


夜になってから不意打ちで殺す。

それは暗闇でもいての姿が見えるソウスケ達三人とレアレス達三人なら行えるが、基本的に夜中に戦闘を行うことが無いEランクの者達には無理な行動だ。


街に戻って今回の事をギルドに報告する。

その行動に反対する者は誰もいなかった。


アーガスですら斥候の者達から情報を聞き、無理に成果を上げようという考えは小さくなっていた。

百近い大群。自分が無理矢理突っ込んだとしても勝てる存在では無い。


ゴブリンの大群が確認できたレアレス達はなるべく他のモンスター達に見つからない様に進んで行く。

しかし一切モンスターに出会わないというのは無理であり、道中で何度か遭遇してしまう。


だがモンスターのランクが低い事もあり、全てソウスケの投擲で事は足り、モンスターが声を上げる前に絶命する。


こうして順調に街へと向かい、森から出ていく。

ただ……道中のルーキー達、特にゴブリンの大群を見てしまった者達の心臓はバクバクと鳴りっぱなしだった。

今こうしていつも通りの歩いて行動出来ている事を褒めるべきだろう。


ルーキーでゴブリンジェネラルを見た事はおらず、今回のような大群を見たのも初めての体験だ。

しかしそんな恐怖を押し殺しながら必死にレアレス達に付いて行く。


「よし、今日はここで野営だ」


移動速度を上げたお陰であと少しで森から出られる位置までたどり着き、野営を始める。

街に着けてない事に不安を感じるアーガス達に対し、ソウスケ達には一切不安の表情は浮かんでない。


ただ、一つ自分の予感が当たっているか外れているかだけを確認したかった。


「ミレアナ、特に何も無かったか?」


「……そうですね。ただ、違和感はありました」


「どんな違和感だ?」


「そうですねぇ……何かを隠しているような感覚でしょうか。そんなものを感じました」


「そうか。それはぁ……一応警戒しといた方が良さそうだな」


ミレアナ感覚が当たるだろうと思ったソウスケは夕食を終え、就寝の時間になっても寝ることは無かった。


(徹夜なんて久しぶりだが、もしかしたらの事を考えれば一日ぐらいどうってことは無い)


そして一時を過ぎた真夜中に……それは起こった。

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