四百三十四話 そこまで心配するという事は
「さて、そろそろ就寝組と見張り組で別れようか」
夕食と談笑が終わり、特にやることも無くなったので体力を回復させるための就寝組と、モンスターや盗賊が襲ってくるのを防ぐ見張り組に別れる。
「ソウスケさん、俺がやっておくから休んでおいて良いぞ」
「そうか? ならお言葉に甘えさせて貰うよ」
そう言いながらソウスケはミレアナと一緒にテントの中に入っていく。
二人が入ったテントの中は一般的な物とは違って中の広さが拡張されている。
「はぁーーーー、やっぱり集団行動ってのは合わないもんだな」
「何度もあの子供をぶっ飛ばしてやろうかと思いました」
「はっはっは、思うだけで実行せずにいてくれて有難いよ。流石に同ランクの奴をボコボコにするのは気が引けるしな」
ソファーにドカッと腰を下ろし、のびのびと休息を取る。
ミレアナはササっと紅茶を淹れてテーブルに置き、椅子に腰を下ろす。
「ソウスケさんは相変わらず優しいですね。ああいう解らない馬鹿は一度本気で潰した方が良いと思いますが」
「いやぁ~~~、だってそんな事をしたら再起不能になりそうじゃん。それに俺本当に力も立場も弱い人とイジメたい訳じゃ無いしさ」
相手が貴族のボンボンであり、ミレアナやザハークを自分に寄こせと言ってくればその場で思いっきり殴ってしまうか、レグルスとルーラに頼んで地獄を見せるだろう。
だが、今回やたらとソウスケを目の敵にしているアーガスは実力は無く、当然権力は無い。
そしてミレアナやザハークを寄こせと言うことは無く、ただただ自分に嫉妬しているだけ。
そんな相手を潰そうとは思えない。
「それに、依頼の最中にどさくさに紛れて俺もさせる技量も無いし」
「でしょうね。まぁ、そんな事はそもそも私とザハークがさせませんが」
「ありがとな。それで、だ……今回の依頼で何か起こると思うか?」
「それは例外的なモンスターと遭遇するかもしれないという事ですか? それならば……起こる可能性がゼロとは言えませんね。ザハークはそれを望んでいるようですし」
ザハークとしては自分と殴り合える相手を望んでいるが、そんなモンスターが今回の依頼中に遭遇すれば大問題となる。
「ただ、ソウスケさんは望まれていないのですよね」
「そうだ。まぁ、ゴブリンの上位種だったらって話だ。あいつらは上位種になっても使えるのは魔石だけだからな。それ以外のランクが高いモンスターなら歓迎するけど……今回俺はサポートに回りそうだな」
「安心してください。私とザハークでなんとかしますので」
「おう、頼む」
必要以上の力を他人に見せたくないソウスケ。
だが、それはソウスケ達と対峙するかもしれないモンスターによる。
「ただのゴブリンの群れとかなら別に問題は無いんだけどな。レアレスさん達はしっかりとDランク相応の実力があるだろうし、グランだっている。雑魚の群れなら心配は無い」
「……もしかして何か嫌な予感がするのですか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「何と言いますか、いつもより依頼内容に対してネガティブな方向ばかり考えているので」
ソウスケ自身の実力が足りず、強大な力を持つモンスターに対してビビっている訳では無い。
だが、それでも嫌な予感がしているのは事実だった。
「バレたか。まぁ……本当に何となくなんだけどな。ちょっと嫌な予感がするんだよ」
「それはザハークが喜びそうなものでしょうか?」
「ん~~~~……どうだろうな? 嫌な予感の正体がゴブリンの上位種とかだったらそうでも無いだろうけど、退屈はしない相手と戦えるんじゃないか?」
「そうですか。それがもし現実になるのなら、少し気を引き締めておいた方が良さそうですね」
ミレアナとしては今回参加したメンバーの殆どがソウスケに嫉妬心を抱いており、あまり良い感情を持っていない事は解っている。
なのでミレアナもそのメンバー達に対して良い感情は持っていない。
しかし戦闘が始まればそれは別の話になる。
(もしそういったモンスターと遭遇したのならば、ある程度のサポートは必要ですね)
なんだかんだいってミレアナも優しいことに変わりは無かった。
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