三百八十九話 サブも充実させたい

「ミレアナさん、さっきオークの顔面に風の刃を飛ばした時って魔力操作で飛ばしたんですか? それともその短剣の効果なんですか?」


「先程の攻撃はこの短剣による効果で飛ばしました。普通に刃に纏った風の魔力を飛ばす事も出来ますが、この短剣を使えば物凄く簡単に飛ばせます。魔力操作に慣れている必要はありませんからね」


ミレアナは何もない壁に向かって実演し、その能力を三人に見せつける。


「それはその短剣に元々風の魔力を纏わせる効果が付いてるんですか?」


「いいえ、そういう訳ではありません。自身の属性魔力を短剣に流し込むことで自動的に刃の部分に魔力が纏い、意識一つで飛ばすことが出来ます。勿論属性の無いただの魔力でも可能です」


「それは結構使い勝手が良い短剣ですね!! どこのお店に売ってたんですか?」


「これは……お店というより露店ですね。店主の方がしっかりとこの短剣の能力を把握していなかったのか、結構安かったんです。私も正確に能力を解っていませんでしたが、他の武器とは何かが違うと思ったので誰かに買われる前に買ってしまいました」


不自然ではない間を造り、どのようにしてこの短剣を入手したのかを話すべきかミレアナは考え、自身のパーティーのリーダーであるソウスケが造ったとは言わない方が良いと判断。


そしてそれらしいエピソードを三人に話す。

少しありふれた内容かとミレアナは思ったが、ミレアナの事を信用しきっている三人は特にその話を疑うことは無かった。


「地味に良い能力ですね。ミレアナさんのお陰で結構お金が貯まって来たけど、サブの武器にお金を使うのはちょっとなぁ」


「お財布にダメージちょっと大きいですね。でもやっぱりそういうのがあると無いとじゃまた色々と変わってきそうですけど……」


「もっと財布に余裕が出来たら買ってみよう」


贅沢をしなければ十分に彼女達の財布の中身は貯まり続ける。

メインの武器以外を装備しておくのも大事だと解っているが、ミレアナがソウスケから渡された短剣並みの武器だと買ってしまった後に不安が残る。


「その方が良いですね。いつ大きな出費があるか分かりませんし」


「ミレアナさんのパーティーの収入源は何が一番大きいんですか?」


ここで女性冒険者が少し踏み込んだ質問をした。


ソウスケ達は一週間に一度か二度のペース、もしくは十日に一度ぐらいのペースでギルドの依頼を受けているが、それは新人の冒険者にしては依頼を受ける回数がかなり少ない。


速くランクを上げるため、日々の生活費の為に依頼を受けた次の日は体を休め、次の日はまた依頼を受ける。

二日に一回のペースで依頼を受けるのが一般的。


しかし最近こそ三人の女性冒険者と一緒に依頼を受けていることが多いが、以前聞いた話ではあまりハイペースに依頼を受けていない。


ベテランの域に達している冒険者なら報酬も高くなるので依頼を受けるペースを落とせるが、ミレアナのランクでそのペースはあり得ない。

ミレアナとその仲間であるザハークとソウスケの実力がランクと同じであることは解っている。


それでも依頼で貰えるお金と依頼を受けている回数を考えるとお金に余裕があるようには思えない。


「……少し前まで、ダンジョンのある街で活動していたんですよ。そこで結構貯まったので当分の間は心配する必要は無いんです。ダンジョンの宝箱は魅力的ですよ。当たり外れはありますが」


合っているけどそれが全てでは無い回答に対し、これまた三人は直ぐに納得してしまった。


「や、やっぱり当たれば凄いんですか」


ダンジョンに潜ったことが無い三人は興味津々な様子でミレアナに尋ねる。


「……はい、凄いですよ」


親指を立てて笑顔で答えるミレアナを見て三人はいつか自分達もダンジョンに潜ろうと心に決めた。

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