三百八十八話 考えていなかった性能

試し切りを終えた日から数日後、今日もダンジョンに向かうミレアナにソウスケの一つの短剣を渡す。


「ミレアナ、この短剣が使える試してきてくれないか」


「はい、分かりました。ところで、この短剣にはどのような効果があるのですか?」


「こいつに……で、……って感じで試してみて欲しいんだ」


ソウスケの説明を聞いたミレアナは渡された短剣を興味深そうに眺める。


「この短剣にそんな効果が……流石ソウスケさんですね!!!」


「いや、俺はこいつをちょいちょいイジッただけだ」


「ちょいちょいでは済まないだろう。俺としては、流石の一言だと思うが」


ソウスケが造った短剣の詳細を知っているザハークとしては、そんな軽くちょいちょいって感じで造れはしない。


「あぁ……あれだ。ちょっと錬金術師の分野が入ってるからな。まっ、そんな訳で頼むよ」


「分かりました。しっかりと感想を伝えられるように使ってきます」


「おう」


短剣を鞘に納めたミレアナは軽快な足取りで工房から出て待ち合わせ場所の鉱山へと向かう。


「例え錬金術を扱えたとしても、そぅ簡単には出来ないと思うが」


「確かに、そうかもしれないな。元々スキルレベルがあった俺だからそこまで苦も無く造れた可能性はあるだろう」


「お前がメインに考えた性能は確かに有能だが、副次的な効果も俺は有能だと思った」


「副次的って……あぁ、なるほど。確かにそういう捉え方も出来るな」


ソウスケが考えていた性能は前衛タイプの接近戦でも使える遠距離武器。

ただ、その性能を考えれば攻撃面だけの効果では無いとザハークは解った。


が……ソウスケとしては全くそんな事を考えず造った。


「ただ、それはあの短剣のキャパ量にもよるだろ。そっち方面の性能も確証を持たせるなら、色々と実験しないとな。それが解れば……また使い方も変わってくる」


ザハークが思いついた効果をアイデアに、ソウスケはもう一つの可能性を思いつく。


「はぁーーー。相変わらず天才だな。経済については今一つ分からないが、ソウスケが造った魔道具を売れば大量の金が入ってくるのは確実だな」


「そうかもしれないな。でも金儲けは今のところボードゲームとエアーホッケーの収入で十分。だから売るつもりは無い。基本的にな」


「……そうだったな。ただ、今日ミレアナはそれを実戦で使うのだろう。一緒に行動している冒険者が絶対に口外しないと決めていても、どこかで口が滑ってしまうんじゃないのか?」


人間、どこかでミスをしてしまうものだ。

そのミスがいつ、どこで起こるか分からない。


なのでザハークが考える可能性が起こらないとも限らない。


「ん~~……そこはミレアナと一緒に行動している同業者さんを信じるしかないな」


別にこの街に永住するつもりは無いので大丈夫だろう。

そう思ってソウスケは鍛冶作業に移る。


ザハークはそんな軽い感覚のソウスケを心配そうに見るが、もう短剣はミレアナの手にあるのでどうしようも出来ない。

なのでどんな武器を造るかという考えに意識を移した。



(確か魔力を流して、刃の部分の魔力を飛ばすのをイメージして撃てば)


オークとの戦闘中、ミレアナは三人を後ろで待機させてソウスケから渡された武器の性能をチェックしている。


短剣に通常の魔力、もしくは属性の魔力を注いで発射する。

その動作自体に技術は必要ない。すべて短剣が勝利を行う。


しかし明確な攻撃方法を知って欲しいソウスケは一応イメージを伝えた。


そして風の魔力を短剣に注ぎ、刃から魔力を放つイメージで操作。

すると刃から飛び出した風の刃はミレアナの狙い通りにオークの顔面に飛んでいき、斬る動作と合わせた攻撃だったのでフェイクを見破れなかったオークは避けることが出来ずにモロに受けた。

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