三百五十二話 金を大量に使うのにうってつけ

「おーーーいおいおいおーーーい、俺がこのモバールを離れていたのって一か月そこらの話だよな」


「そうですね。そこまで長い期間離れていた訳ではありませんね」


「確かにチェスとリバーシは慣れればそこまで作業時間は掛からない」


「私も作るのに慣れてきました。元々木を削るのに慣れている職人さんなら短時間で作れるかと」


「そうだよな、下手したら魔力を使っている俺より短時間で作ってしまうかもしれない」


ソウスケより速く造り終える事が出来る職人はある程度の数がいるが、職人は雑に商品を作ろうとしない。


「けどなぁ・・・・・・だからって売れ過ぎじゃないか!!!???」


商人ギルドのカードには引き出し可能金額欄の額は、一億を超えていた。


(いくらトーラスさんの商会が有名だからといって、ここまで短時間の間に爆発的に売れるものなのか?)


ソウスケとしては金が勝手に増えていくことに関しては有難いのだが、狙っていたとはいえ需要の高さに驚いた。


(でも、エアーホッケーは白金貨か五枚だから五億になるんだよな・・・・・・ヤバい。本格的に働く気が無くなってくるな)


まだ異世界に来て一年を経っていないソウスケだが、日本に居た頃を考えれば億万長者と言える程の金を有していた。


(普通は色々と面倒な書類仕事やお偉いさんや職人と交渉しなきゃならないんだろうけど、俺の場合は自力で必要な素材が集まる)


改めて考えると本当に楽をして金を儲けているなとソウスケは感じた。


「どうかしましたか?」


「大量に得た金を何に使おうか迷ってるんだよ。贅沢な悩みってのは解ってるけど、あんまりパッと浮かばないもんだ」


日本に居た頃なら一気に使い切ることは無理でも、こんな事に金を使いたいという考えは直ぐに浮かんだ。


しかし娯楽が少ないこの世界で何に金を使うのか、本当に浮かばない。


「ソウスケさんはEランクの冒険者にしては考えられない程のお金を持っていますからね。時期が合えば、オークションというのに参加してみるのはどうでしょうか?」


「オークションか・・・・・・それは有りだな」


人や物関係無く高額な商品が出品されるオークション。

ここならソウスケの贅沢な悩みも解消されるであろうとミレアナは考えた。


「でもどうせなら欲しいと思った物は全て欲しいからな。しっかりと蓄えてから参加してみるか」


「かしこまりました。それではまず鉱山に向かって鉱石の採掘が一番の目標ですね」


「そういう事だな」


鉱石を採掘すればトーラスからの依頼も達成出来、鍛冶に必要な材料を集める事も出来、一石二鳥となる。

特に自分で武器を造ることに興味があるソウスケは速く生きたいなとウズウズしていた。


一晩寝て翌日に朝食を食べ終えてからソウスケ達は直ぐに冒険者ギルドに向かった。


「うん、相変わらず酒臭いな」


夜が空けて完全に日が出ているのに酒を飲んでいる者達が既にいる。


(でも服装を見る限り、ちゃらんぽらんな性格の人物では無い・・・・・・のか?)


朝から酒を飲む事自体が悪いという訳では無いが、受付嬢が見ればサッサと仕事に行けよと言いたくなる光景。

しかし冒険者達身なりでしっかりと仕事を果たしている者達だと解っているので、嫌な顔をしても口には出さない。


「あッ、ソウスケ君久しぶりだね。ミレアナさんも久しぶりですね」


「どうも」


「お久しぶりです」


冒険者ギルドの受付嬢の容姿レベルは基本的に高い。

その中でもトップレベルのの可愛さと魔乳を持つメル。


冒険者から告白される数が既に三ケタに到達し、仕事を辞めるまでには四ケタに届くんじゃないかと予想している同僚もいる。

飛び抜けた容姿を持つ者は同性から嫉妬の対象になりやすいが、メルはそういった嫉妬する気が失せてしまう程の容姿を持ち、なおかつ性格が本気のガチで裏表が無く基本的に毒を吐かないのでまさに彼女にしたい理想の女性の一つに当てはまる。


そんなメルに声を掛けられているソウスケを睨む者は当たり前の様にいるが、受付嬢は人の顔を覚えるのも仕事の内なので嫌われたくないという一心で、話しかけられている者に絡もうとはしない。

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