二百八十七話必要なアドリブ
「さて、ソウスケ君から見てフォートには何が足りないと感じた?」
(えっ? 何? 俺がこいつにアドバイスしなきゃいけない流れなの?)
したくもない摸擬戦を終えてギルドから出ようと歩き出そうとしたソウスケをロウが呼び留め、フォートへのアドバイスを求めた。
しばしの間嫌そうな顔をしながらもソウスケは溜息を一つ吐いた後に適当にアドバイスになるであろう内容を伝える。
「動きが教科書通り過ぎる。街の槍術道場的な場所で習ったのか、それとも槍を使っている先輩の冒険者に教わったのかは知らないけど動きが一定してるから読みやすい。もう少しアドリブを入れれるようになった方が良い、以上」
「アドリブを入れるなぇ・・・・・・確かに大切な事だね。ルーキーにが初めてモンスターと戦う時はアドリブが殆どだろう。それと比べて戦いかを習っているルーキーは倒す方法を知っているのでその時点では後者の方が実力は上に見えるかもしれない。しかしいざという時に機転が利かないパターンも多いだろう」
ロウが良い感じに話を纏めたのでソウスケはもう自分は要らないだろうと思い、早足に訓練場から出て行く。
「今度時間が合えば一緒に夕食を食べよう!」
最後のロウからの一言にそれぐらいは構わないと思ったソウスケは無言で手を上げて振って答えた。
ソウスケが訓練場から視えなくなったのを確認してからロウはフォート達の方を向いて言葉をかける。
「さて、君達とソウスケ君の何が違うか解るかな? あっ、言っておくけど多分冒険者になったのはフォート達の方が早いよ」
「・・・・・・レベルと経験、ですか?」
「大体間違ってはいないと思うよ。レベルは分らないけど、経験の密度が高いんじゃないかな?」
レベルは目の前の四人より圧倒的に高い。それは先程までの戦いで解ったがそれは言わない方が良いだろうとロウは判断し、レベルの部分はぼかした。
経験についてもソウスケが今までこの街でしか冒険者活動をしていないのか等も分らないので正確な事は言えない。
経験に関しては確かにソウスケの方が内容が濃い戦いをしているかもしれないが。数で言えば二年間弱、冒険者として活動して来たフォート達の方が多い。
「あと、しっかりと相手をどうやって倒すかを考えられている。俺はそう思うな」
「どうやって倒す、ですか?」
「そう。単純に俺の予想だけど、ソウスケ君はモンスターの素材をある程度綺麗に残して倒す事が得意だと思うんだ。それはフォート達よりも手札が多いかもしれない。でもそれだけじゃない。さっきの戦いでフォートはただソウスケを倒す事だけを考えていただろう」
「・・・・・・はい」
少しは反論したかったロウだが、完全に事実な為何も言えない。
「ソウスケ君の場合、いかに自分の手札を晒さずに君に勝つか。そんな事を考えていたんじゃないかな」
ソウスケは全くそんな事を考えていなかった。
寧ろ手札を晒す可能性など一切ないとすら思っていた。
考えていたのはどれだけ苦戦しているように演技が出来ているか。
実質ソウスケはフォートとの一戦でスキルを一つも使っていない。
「君達がソウスケ君に追い付こうと思うなら無理しない程度に経験を多く積む事かな。モンスターや人と戦っている時に最適解が直ぐに浮かび実行出来る様になれば背中は見えると思うよ」
「・・・・・・分りました。絶対に追い付いてみせます」
フォートだけでなく、仲間の三人もやる気に満ち溢れていた表情をしている。
(やる気になったのは良い事だ。まぁ・・・・・・僕が言った事が全て正しいとも限らないんだけどね。にしても良い演技をしていたけど、絶対にあれが底って訳じゃ無さそうだし・・・・・・本当に読めない子だな。いつか本人の意思は関係なく二つ名がつきそうだ)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます