二百八十五話得たからと言って良い物でも無い
「どうも、ロウさん。今日は自主練ですか?」
「う~~~ん、自主練と言うよりこの子が面白そうな依頼を眺めていたからね。それについて語り合っていたんだ。そして訓練場に行かないかと誘ったんだ」
「・・・・・・そうでしたが」
ロウから何故ここにいるのかの理由を聞き終えた少年は不機嫌そうな表情でソウスケの方へ顔を向ける。
「何か用か」
「今日はエルフの女性はいないんだね」
「今日は休日だからな。お互いに自由行動だ。それで、もう一度聞くけど俺になんの用だ」
ソウスケは何故目の前の男が不機嫌なのは予想がついていた。
理由は単純で自身より冒険者ランクが高いジーラスやロウが自身より歳下の少年に興味を持ち、自分より実力が上だと判断しているから。
ロウはまだそのように口に出した訳では無い。
「ロウさん、いきなりですが一つ教えてください。この少年と自分達ではどちらが実力が上ですか」
なので男は反射的にロウへ自分達と目の前の少年の実力を比べるとどちらが上なのか尋ねてしまった。
本当に突然の質問にロウは一瞬目を丸くするが、直ぐに考え始める。
冒険者になって二年経つバランスが整っている優秀なパーティー。
それに対してまだ冒険者になって半年も経っていないであろうが、それでも性格は屑であっても実力と経験はベテランと言える冒険者を涼しい表情で始末したと言える冒険者。
答えは考えずとも明白だった為、ロウは小さく笑ってから答えた。
「君達が求めている答えとは違うだろう。僕の答えはこちらの少年だ」
「ッ――!! り、理由を教えていただいてもよろしいですか」
「理由か・・・・・・言える事はあるが、それは少し少年のプライベートに触れる可能性がある」
一番明確なのは新人潰しをしようとしたベテランの冒険者を殺した事。
それだけの実力を考えればDランクの中でも上位の実力を持っていると言っても過言では無い。
目の前の少年少女達はまだロウの記憶が正しければ盗賊殺しの経験はしていない。
冒険者にとってその一線を越えているか超えていないかの違いはかなり大きい。
「簡単に言うならば少年は君達が持っていない物を持っているといったところかな。あっ、言っておくけど強い武器や防具にマジックアイテムとか仲間って意味じゃないからね」
「自分達が持っていない物・・・・・・それは、自分達も手に入れられる物なんですか」
「そうだねぇ・・・・・・・・・・・・そうだ。なんて無責任な事は言えないね。仮にそれを手に入れたとして強くなるかと言われれば解らない。道を踏み外し、冒険者を辞めてしまうかもしれない」
ロウの言葉に四人はどういう物なのか予想がつかず動揺してしまう。
最後の言葉に四人はそれは冗談なのではと思ったが、決してロウの言った事は冗談では無い。
例え殺した相手が悪人であっても同族を殺した事に変わりはない。
その感触に対し、この先もこの様な事をしなければならないのかと押し潰されそうな吐き気や気持ち悪さに耐えきれず冒険者を辞めてしまう者もいる。
逆にその人を殺す感触に酔いしれてしまう者もいる。そういった人物はただ自分の快楽を得る為だけに冒険者を続けながらダンジョンなどでバレる可能性が少ない場所で同業者を殺し、又は自身が盗賊となり商人や貴族などを襲うようになる。
「とりあえず、君達とこの少年の違いはそんなところだね。そこまで違いが知りたいならこの少年に頼んで摸擬戦をしてもらったらどうだい」
ソウスケが面倒だと思っている流れになってきた。
ここで断るのは簡単だが、目の前の四人が何を言ってるから解らない。
ソウスケからすれば負け犬の遠吠えに変わりないのだが、それでもまだこの街にいる期間はあるのであまり自分達の評価を下げたくないという気持ちも少なからずあった。
そこから二言、三言会話があり、ソウスケと四人の内のリーダーの男が一対一で摸擬戦をする事になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます