二百四十三話解放

「ソウスケさん。これからの大体の予定は決まっていますがまた翌日から直ぐダンジョンに潜られますか?」


「・・・・・・どうしようか? んーーーー。丸一日時間が空くなら俺はエアーホッケー作りを進めたい。ミレアナは何かしたい事があるのか?」


自分の用事がダンジョンの中にいても出来る事なので、ソウスケとしては自身よりミレアナの意見を優先したいと思っている。


「私は・・・・・・ソウスケさんと同じく錬金術に挑戦したいという思いはあります」


「そっか。それならダンジョンの中に入って錬金術に必要な植物を集めるのもありだな。ザハークは何かしたい事があるのか・・・・・・今考えても分らないし、ひとまず明日はダンジョンに潜らず一日休憩しよう」


ザハークにしっかりとした人格がある為、ソウスケとしてはあまり日常を退屈だと思って欲しくなかった。


翌日、ソウスケは前々から考えていた事を実行しようと、朝食を食べ終えた後に奴隷を売っている店へと向かった。

そしてそこでお金を払ってミレアナの奴隷紋を消した。


店の店主は長年の経験からミレアナの価値を直ぐに見抜いたがソウスケに奴隷として売らないかとは訊かなかった。

しかしミレアナの価値を解っているからこそ、何度も本当に奴隷紋を消していいのかと尋ねて来た。


確かめられた回数的にうんざりして面倒だと思うのが普通だが、ソウスケは店主が私欲でなく善意で訊いて来ているのだとなんとなく解っていたため不快には感じなかった。

そしてミレアナは奴隷紋がなくなった事で奴隷という立場から解放された。


店から出た後、ソウスケはあまり聞きたくなかったが一応ミレアナに自分の元から去るのかと尋ねた。


その問いにミレアナは少し涙を流しながら首を横に振った。

勿論それは悲しいから流した涙では無い。本来ならば奴隷として自分の意志は不必要な環境でただ自分を買った人の私欲の為に扱われる生活を送るのだと思っていた。


だが、ソウスケはミレアナに対してその様な扱いは一切しなかった。

服を与え、しっかりとしたご飯を用意してくれた。

性能の良い武器を渡してくれた。だからといって戦いを全て自分に押し付けるような事はしない。


そんな優しを自分に与えてくれたソウスケに対して、ミレアナは元主の横から離れようなどとは一ミリを考えていなかった。


ミレアナが自分の元を去らず、ずっと傍にいると宣言されたソウスケは当たり前だが嬉しくてたまらなかった。

しかし少しだけミレアナの言葉をどう解釈して良いのか解らないでいた。


(ず、ずっと傍にいるという事は仲間としてって意味か? それもとも・・・・・・そ、そういう感じの意味なのか? やばい、全く分からないぞ)


頭の中でミレアナの言葉に関しての処理が追いつかず、ショートしそうになったがそれを何とか堪え、ひとまず奴隷館から離れた。


そして昼食代わりに屋台の料理を四店程周り腹を満たした後、三人は遅めのペースで宿に戻っていた。


「あれだな。屋台の店主がザハークの食う量に驚くのも慣れて来たな」


「そうですね。いくらザハークの体格が大きいとはいえ、あれだけの量を一人で食べるとなれば驚くなという方が無理でしょう」


「や、やっぱり自分は食べ過ぎですか?」


ザハークの食う量は大体四、五人前が当たり前。

なのでその分食費が多くなっている事に少し気が引けていた。

だがそんな食費事情をソウスケは全く気にしてい。


「お前がダンジョンで稼いだモンスターの素材や魔石の量に比べれば食費ぐらい軽いもんだ。だからそんな気にする必要は無いから安心しろ」


「そ、そうですか。少し安心しました。それにしてもソウスケさん、妙に嬉しそうと言いますか・・・・・・楽しそうな表情をしていますね」


「ああ。宿に帰ってから錬金術で造ろうと思っている物を速く造りたくてな」


決して武器では無く使える場所は限られているが、それでもソウスケに問ってロマンのある道具だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る