二百二十四話潰れて刺さって更に追い打ち

オークの棍棒を避ける事に成功したザハークは身体強化を使い、背後に回り込む。

そして全身全霊の力を込めて足を振り上げる。


「ブモアアアアアアアアアア!!!!!?????」


「あぁ・・・・・・褒めるべきナイスな一撃なんだろうけど、男としてほんの少しだけオークに同情する。ほんの少しだけ」


「ザハーク自身もホブ・ゴブリンなのでオークの急所が直感的に解っていたのでしょうか?」


「その可能性もあるだろう。うわあ~~~・・・・・・血流れてるよ。一つ、もしくは両方とも潰れたか? 取りあえずこれは大きなチャンスだ」


ソウスケの言葉通りザハークは戦いの中で最大のチャンスだと思い、両足で上に跳んで短剣をオークの頭に突き刺した。


脳が損傷し痛みと、睾丸を潰された痛みにより発狂しながら転げ回っているが、その影響で後頭部に刺さっていた短剣が地面と接触し、更に深く短剣が刺さってしまった。


「あっ、あれはもう完全に終わったな」


「みたいですね。最初に睾丸を潰したのが功を為したみたいですね」


「だな。まぁ、睾丸を潰されてああして転がってしまうのは分からなくもないけどな」


(俺だって戦いの最中に金玉を潰されたら平常心でいられる自信は全くない。痛覚遮断みたいなスキルでも持っていないと絶対に耐えられないだろ)


この世界ならそんなスキルが有っても可笑しくは無いなとソウスケが思っていると、返り血を少し浴びたザハークがやって来た。


「ソウスケサン、ボスヲタオシタ。ウゴカナイカラシンダハズ」


「おう、みたいだな。途中からだけどしっかりと見ていたぞ。ランクが上の相手に良く頑張ったな」


ソウスケはザハークにねぎらいの言葉をかけ、ミレアナも良く考えられた戦いだったと称賛を送る。

二人の言葉に照れたのか、ザハークは下を向きながらありがとうございましたと呟いた。


オークとラージアスラビットの解体を終えたソウスケ達はボス部屋から出た先にあった高さ一メートル程の石柱に触れる。


「これって確か魔力を込めると一階層からこの石柱がある階層まで跳べるんだよな」


「はい。ダンジョンにはこの機能がある場所が多数あります。ただダンジョンによってはこの転移できる場所がありません。特に攻略の難易度が高いダンジョンにそういった傾向が多いですね」


「それは・・・・・・最下層や下層に目的がある冒険者にとっては面倒な話だな」


ダンジョンを攻略する場合、一般的な冒険者にとっては武器や食料の消費は避けたい。

水に関しては手に入る確証が無いため無駄に飲む事は出来ない。

なので転移が可能な石柱が無いダンジョンは未だに最下層まで攻略されてないものが多い。


「さてと、少し時間が中途半端な気がするなぁ・・・・・・このまま十一階層に入った方が良いと思うか?」


「そうですねぇ・・・・・・この場所に居続ければ他の冒険者と遭遇する可能性は高いです。普通の冒険者なら特に問題は無いと思いますが、質の悪い冒険者であれば面倒事に発展するかと思います」


面倒事と聞いてソウスケの眉間に皺が寄る。


(ザハークには少しきついかもしれないけど、俺とミレアナがいれば問題は無い。それでも寝込みを襲われたら直ぐに反応出来るかは分からないな。ザハークに見張りをやって貰えなくもないけど・・・・・・やっぱりまだ少し心配なんだよな)


ザハークの強さではまだ一定レベル冒険者を相手に出来ないと判断し、安全地帯での野営を止めた。


そして十一階層へ突入したソウスケ達の眼に入ったのは密林とも言える光景だった。


「・・・・・・やっぱ不思議だよなダンジョンって。ミレアナ、少し偏見かもしれないけどエルフ、ハイ・エルフってこういった密林や森林の中での行動って得意か?」


コボルトの巣を見つける際に横断した森の比では無い木の多さを見てソウスケは足場に関して少し不安に感じていた。


「勿論得意です。寧ろ任せてください!!」


ソウスケに頼られた事が嬉しかったミレアナは胸を張って誇らしげな表情になる。

そしてミレアナを先頭にしてソウスケ達は日が暮れるまで十一階層を探索し続けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る