二百十七話進化
ソウスケがザハークを従魔としてテイムしてから数日間、一気に十階層以降まで進もうとはせずザハークの育成に力を入れていた。
元々戦闘センスは十分にあり、ソウスケが人型だからこそ出来る格闘技の技を教え、ミレアナが魔力の扱い方に魔法をメインに戦う相手の対象を教える。
二人から多くの事を教わったザハークは、それらをスポンジの様に吸収していく。
そしてソウスケが与えた装備のお陰もあり、十階層より上層の階では敵なしの状態だった。
ザハークが順調に成長する中、鑑定でザハークが持つスキルを調べたソウスケはある事を考えていた。
ザハークが持つスキルの中に知識向上というスキルが存在する。
それを利用してスキルの書を読む事は出来ないかとソウスケは考えた。
スキルの書は本を開けば自然とページが捲れ、文字が空の中に入り込んでくるような感覚を体験する。
その文字は主に人族だけでなく、他の獣人族やエルフやドワーフ等の文字が混ざっている。
しかしソウスケはそんな多くの種類の言語の中から人族が使う文字が有る事を見つけた。
今ザハークがスキルの書を読んでも無駄になってしまう。
でもザハークが文字を覚えれば?
ソウスケはこの世界に送った神のプレゼントによりどの種族の文字を理解し、書く事が出来る。
ただしソウスケは今現在、人族以外の文字がどういった物なのかはしらない。
スキルの書に書かれてある人族以外の文字もどれがどの種族の文字なのかは理解していない。
だとすれば、一つの種族の言語さえ理解出来ればモンスターであっても、スキルの書を読んでスキルを習得出来るのではという考えに至った。
そしてモンスターとの戦いを終えた夜はザハークに人族の文字を教えていた。
その甲斐もあり、ザハークは人語のスキルを習得した。とは言ってもまだスキルを習得したばかりなので簡単な単語しか発する事が出来ず、勿論片言。
それでも確実に成長している。
早速スキルの書を読んで貰おうとソウスケは思ったが、まだ完全に言葉を理解出来る訳では無く、言葉も片言なのでもう少し人語のスキルレベルが上がってから試す事にした。
そしてザハークと仲間になってから五日後、ザハークの体に異変が現れる。
「・・・・・・ザハーク、お前ホブ・ゴブリンになったのか」
一晩寝て朝になると、ザハークの体格は一回り大きくなっていた。
勿論ザハークは元々ただのゴブリンでは無く、希少種だったので見た目は普通のホブ・ゴブリンとは違い、手の甲に蒼い紋章の様なものがあった。
「ソウスケサン。オレ、シンカシタ」
「おう、みりゃ解るぞ。根本的な強さからが変わっただろうな」
「そうですね。普通のホブ・ゴブリンを相手にすれば、そう時間をかけずに終わりそうですね」
ザハークがゴブリンからホブ・ゴブリンへと進化した事でソウスケ達は少し予定を変更した。
本来ならば一気に地上へと戻るつもりだったが、ホブ・ゴブリンとなったザハークの力を慣らす為にめぼしいモンスターと戦いながら地上へ戻る事にした。
(それにしても、毎日しっかりとご飯を三食食わしていたからか、随分と細マッチョな体型になったな。普通のゴブリンやその上位種のモンスターはそこまでがっちりした体型の奴はいないと思うんだけどな。後、右手の甲にある蒼い刺青・・・・・・いや、紋章か? あれ凄い気になるな)
鑑定を使った訳では無いので正確には分からない。それでもソウスケはザハークの紋章について、もしかしたらという心当たりはあった。
(もしかしたら水龍の蒼剣が関係しているのか? それらしい理由は思い浮かばないんだよな。俺は特に魔法に得手不得手が有る訳じゃないし・・・・・・取りあえず今後のお楽しみとしておこう)
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