百五十七話あまり警戒せずに済む

休憩を終えた二人は今度は鉱山に向かって走り出した。


先程と同じようにモンスターと遭遇する事もあったが、今回は全て無視して鉱山へと向かった。


三十分後・・・・・・二人は息を切らしながら鉱山へとたどり着いた。


「・・・・・・はぁーーーーー。やっと着いた。・・・・・・結構デカいな」


「はぁ、はぁ、はぁ、確かにそうですね。でも、周囲の様子を見る限り廃鉱山なのかもしれませんね」


「・・・・・・・・・・・・いや、単純にこの鉱山を管理していないだけじゃないのか? かなり距離が離れているしな。街まで鉱石を届けるのにも森の中のモンスターを考えるとな・・・・・・色々と難しいだろうな」


目の先に映る鉱山を見据えながらソウスケはもう一つ予測を立てていた。


(もしくは・・・・・・鉱山の中に相当強いモンスターがいて、定期的に鉱石を採掘する事が出来ない・・・・・・なんて事もありそうだな。それがコボルトキングか? いや、それは何となくだけど違う気がするな)


ソウスケはその場から動かずに気配感知を一先ず平面に広げる事だけに集中した。


「・・・・・・それらしい反応を見つけた」


「本当ですか!? ってソウスケさん!! 鼻から血が」


「えっ!? ・・・・・・ほんとだ。少し集中し過ぎたか」


気配感知で反応を感知出来る範囲の限界を超えて使用した為、ソウスケの脳に負荷が掛かって鼻から血が漏れ出した。


しかしそこまで酷い物ではないので血は直ぐに止まり、二人は反応があった方向へと向かう。


「・・・・・・確かにこの奥に大量の気配が感知出来ますね。ただ、そこまで道が複雑という訳では無いですね。それに最奥までの距離は遠くないみたいです」


「だな。さて・・・・・・今中に入るにはちょっと時間が早いな。どうやって時間を潰すか・・・・・・何か良い案はあるかミレアナ」


「そうですねぇ・・・・・・おそらく今巣の中にいるコボルトが全てではないですよね」


ミレアナの気配感知に反応した数は全部で数十程。確かに群れと呼べる数ではあるが、ミレアナはこの数に先日の出来事を思い出して考え込む。


(もし、もしコボルトジェネラルが群れの長なら殆ど自ら狩りに出ない筈。出るにしてももっと上位種の数が多く・・・・・・いえ、強者のプライド的な物からすると逆に少なくするもの? でも、先日の件を考えるなら群れの長はコボルトキングの可能性が高い筈です)


考え抜いた結果、時間を潰す・・・・・・と言うよりは無駄な仕事を増やさない方法をミレアナは思い付いた。


「一先ず日が暮れるまで巣に戻って来るコボルトを潰すのはどうですか? 魔石も手に入って数も減らせるので良い時間潰しになると思うんですが」


「なるほど、確かにそれは良さそうだな。日が暮れるまでそうしよう。それなら・・・・・・」


ソウスケは辺りを見回して待機場所に最適な場所は無いか探し始める。

そして待機場所に決まった場所はなんと・・・・・・鉱山の側面だった。


土魔法で造られた四畳ほどあるスペースにソウスケは盗賊のアジトで手に入れた椅子を取り出して、交互に巣に戻って来たコボルトを狙撃し始める。


「椅子があるのでお尻が痛くならなくて、飲み物と食べ物ある・・・・・・少しくつろぎ過ぎな気がしませんか?」


「そうか? 狙撃するのは一人で事足りるからもう一人はくつろいでいても大丈夫だろ。まぁ、一応空から敵が来ないかだけたまに確認してくれ」


「分かりました。そちらは任せてください。交代したくなったら声を掛けてくださいね」


「了解」


こうして二人の長い時間潰しがスタートした。

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