百二十八話気を抜く余裕は無い

パワーアップを果たし、縦横無尽の動きで直撃は避ける事が出来ていたが、所々に小さな傷が出来て動きにキレが無くなってきていた。


それに対しソウスケはナイトスナイプビーの動きから得た方法で徐々にナイトスナイプビーを捉え始め、確実に追い詰めていた。


そしてナイトスナイプビーから学べる事はもう無いと思ったソウスケは確実に殺すために身体強化を使い、飛竜の双剣に風の魔力を電動ノコギリ状に纏わせた。


「疾ッ!!!」


脱力した態勢からナイトスナイプビーに向かって駆け出したソウスケに対し、油断していなかったとはいえ明らかにギアが上がったソウスケの動きに対してナイトスナイプビーの行動は、完全に一歩出遅れていた。


もしナイトスナイプビーが重量級のモンスターであり、ある程度の頭を持っているのならこの先の結果はまだ分からなかったが、天地がひっくり返っても適う事が無い妄想を抱いても現実にはならない。


一歩出遅れたナイトスナイプビーは反射的に毒付きの針を放ったが、ソウスケはそれをまるで読んでいたかのように上に跳んで躱し、跳躍のスキルを使って空中を駆け、ナイトスナイプビーの背後を取った。


飛ばした針を殆ど元に戻っており、針を後ろに突き出せば一矢報いる事が出来たかもしれないが、それは敵わずソウスケによって綺麗にナイトスナイプビーは三分割された。


「・・・・ナイス、ミレアナ」


「いえ、大した事ないですよ。殺気が駄々漏れだったんで攻撃してくるであろうとは分かっていたんで」


ソウスケがナイトスナイプビーを三分割した直後、隠れていたクイーンスナイプビーがソウスケにナイトスナイプビーより二回りほど大きい毒プラス麻痺付きの針を放ってきた。


しかしそれを見逃すほどミレアナは甘くなく、ミスリルの短剣から放った風の斬撃で弾き飛ばした。


「ただ、やはり厄介なのは変わりないみたいですね」


「・・・・そうみたいだな。クイーンって言うだけはあるって感じだな」


二人はミレアナの風の斬撃によって弾かれたクイーンスナイプビーの針を見ていた。


本来ならばミレアナの風の斬撃が当たれば針は斬り裂かれる筈なのだが、少し傷ついているだけで済んでいた。

ミレアナが本気でなかったとはいえ、針が切断されていないという事実が分かった事で二人はクイーンスナイプビーが針にただの魔力ではなく、風の魔力を纏わせる事が出来るというのが分かった。


「どうしますか。やはりソウスケさん一人で戦うんですか?」


「そうだな。さっき戦ったナイトスナイプビーと比べて実力が数段違う事ぐらい分かるが、やっぱりダンジョンの中で戦ったワイバーン程は怖くないし、緊張しないからな。まぁ、念のため万が一の時の為に準備しておいてくれ」


「分かりました。無いとは思いますけど準備しておきますね」


ミレアナは大きく後ろに下がり、いつでも魔法を放てる準備を始めた。そしてクイーンスナイプビーに対して敵意を向けて圧倒的な威圧感を放ち、クイーンスナイプビーに私はあなたより格上だと無言で伝えて自分を囮にするような真似をさせないようにした。


ミレアナから放たれた威圧感によりクイーンスナイプビーは本能的にミレアナには勝てないと悟り、ミレアナよりも迫力が弱いソウスケに意識を向けた。


だが弱いからといって気を抜くような真似はしなかった。先程までのナイトスナイプビーとの戦いは全て見ており、実力が全て分かった訳では無かったが、手を抜いて勝てるような相手ではないという事は理解していた。


ソウスケもワイバーンより怖くないとはいえ、相手はCランクのモンスター。動きは読み辛い、針で相手を状態異常にしようとし、気が抜ける場面で不意打ちできる程の頭を持っている。


いくらすぐ近くにミレアナがいるとはいえ、ナイトスナイプビーの時と同じく余裕こいては言われないと感じていた。


(武器は・・・・このままでいいか。クイーンスナイプビー相手だと双剣の方が相性が良さそうだな。身体強化のスキルはこのまま継続だな。あの動きに少し慣れたといっても、向こうの方が長くあの動きをしている時点で身体強化のスキルを使わずに戦うのは下策な気がするしな。後、魔法を使うのもありにしておくか)


経った今試してみたい事が出来、油断しない事は勿論だが戦いの最中に隙を作らない程度に実験してみようとソウスケは思い、クイーンスナイプビーに対し構えを取った。

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