百十四話童心に帰る?
マーカスから挨拶をされた二人は、慌ててマーカスに軽く自己紹介を兼ねた挨拶をした。
「ど、どうも。Fランク冒険者のソウスケです。今日はよろしくお願いします」
「ソウスケさんの奴隷のミレアナです。一応Fランクの冒険者の実力があります」
ソウスケは普通に、ミレアナは自分が奴隷である事は隠した方が良いかと思ったが、相手が商人ギルドのギルドマスターを務める程の相手なため、相手が確実に知らなさそうな情報は完全に伏せ、探ろうと思えば探れそうな情報は自分から話した。
「今日はこちらこそよろしくお願いします。ささ、どうぞソファーに座ってください」
二人は言われるがままにソファーに座った。
ソファーに座ったソウスケは、座った瞬間に感じた座り心地に直ぐにソファーが上等な物だと気が付いた。
(見た目からして上等なのは分かっていたけど……実際に座ってみると更に上等な物だと分かるな。セルガーさんの仕事部屋にあったソファーより高級そうだな)
日本に住んでいた頃には味わう事が出来なかった感触に感動しているソウスケに、目的を思い出させるためミレアナがソウスケの横腹をツンツンと突いた。
我に返ったソウスケは直ぐにバッグから自分が作ったリバーシとチェスをを取り出し、交互に指をさしてボードゲームの名前を伝えた。
「こちらがセルガーさんから頼まれた娯楽の品、オセロとチェスです」
「リバーシとチェス、ですか……触ってみても良いですか?」
マーカスの頼みの断る理由が無いため、ソウスケは直ぐに触っても構わないと頷いた。
マーカスが触り始めてから終わるまで、ソウスケの心臓は緊張のせいでバクバクと鳴りっぱなしだった。
ソウスケは職人ではないため、あまりプレッシャーを感じなくても良い筈なのだが、目の前にいる相手が相手なため、ただの一冒険者だから高いクオリティは求められる事は無い……などと考えられなかった。
そしてマーカスは触っていたリバーシとチェスを置くと、早速感想を述べ始めた。
「とても良く出来ていますね。こちらのリバーシはそこまで作るのは難易度が高くない気がしますが、こちらのチェスの……駒? ですかね。こちらは作るのに中々時間と集中力が必要だと思いますね。知ってはいるんですか一応質問させて貰いますね。ソウスケさんの本職は冒険者ですよね」
「はい、俺の本職は冒険者です。このリバーシとチェスを作ったのは何というか……セルガーさんにある提案をした結果という感じです」
セルガーにリフレの事を提案した事に後悔はしていないが、こういった頭を使わなければ自分の首を絞める、又は知らぬ間に首輪を付けられている状況になった事は、少しばかりソウスケは後悔していた。
「……正直信じられない、というのが本音ですがソウスケさんが嘘を言っている様には見えませんので今そこは置いておきましょう。さて、まずはリバーシとチェスのルールを教えて貰えますか」
「分かりました。まずは簡単なリバーシの方から教えますね」
ソウスケがマーカスに説明を始めてから約十分、リバーシの説明は一分足らずで終わったが、チェスの説明が長引いてしまい、ソウスケが予想していたよりも時間がかかってしまった。
だがマーカスは口下手なソウスケの説明にイライラする事は無く、寧ろ楽しそうな表情で話を聞いていた。
ソウスケの説明が全て終わると、マーカスは早速ボードゲームを使って対戦しようと言い出した。
マーカスの子供の様な表情を見たソウスケは、少し後ずさりながらも対戦に応じた。
まずはリバーシ。ソウスケ自身、リバーシはスマホのアプリをダウンロードして暇な時間にやっていたため、ある程度どう攻めれば勝率が高くなるかが分かっているため、結果はソウスケの圧勝だった。
その結果が悔しかったのか、マーカスはソウスケにもう一度やろうと言ってきたが、おそらくそれを聞き入れたらマーカスが勝つまで延々に続くだろうと予測したソウスケは、なんとか言い訳をしてチェスの勝負に移った。
チェスの特別ルールはキングとルークの駒の位置の入れ替え、キャッスリングと敵陣地に入ったポーンの昇格、プロモーションだけを取り入れていた。
そして結果はソウスケの勝利、クイーンは動かぬが定石という言葉通り、ソウスケがマーカスのクイーンをナイトで討ち取り勝負が決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます