第35話仕方ない・・・・・・だよな?
「さてと、手ごろな依頼はないかな~~~~」
ソウスケは依頼書が貼ってあるボードを見ながら、自分のランクにあっている依頼を探した。
「まぁ、もう昼だから常時依頼しか残っていないんだけどな。・・・・・・これとこれとこれにするか」
ソウスケはボードから、ホーンラビット五体、スライム十体、ポンズマウ三体の討伐の依頼賞を、受付嬢の所に持って行った。
「すみません、これとこれとこれお願いします」
「はい、かしこまり、ま・・・・・・」
依頼書を完全に一枚だと思っていた受付嬢の表情が固まった。
「えっと・・・・・・ギルドカードを見せてください」
「わかりました」
ソウスケはポケットの中からギルドカードを取り出し、受付嬢に見せた。
ソウスケのギルドカードに載っているランクを見た受付嬢は、困った表情をしていた。
「その、Hランクですと、街中の依頼や採集の依頼を受けた方が良いと思いますよ。それに討伐の依頼を受けるとしても、一つだけの方がよろしいかと」
Hランクと言う事で、ソウスケがまだ冒険者として素人同然だと思っている受付嬢は、他の簡単な依頼をソウスケに勧めた。
前回と似たような出来事が起き、ソウスケはどうしようかと悩んだ。
(見ためのせいで、余計に強く見えないんだろうな。でも、強さを見せて、変に目立ちたいわけじゃないからな・・・・・・そうだ)
考えが思いついたソウスケは、先ずギルドに来る前に買ったバックの中から、昨日採取した薬草の三種類を出した。
「すみません、先に先日受けた依頼の、薬草の採取の依頼完了の確認をしてもらっていいですか? それと・・・・・・」
薬草を出した後に、ソウスケはバックの中からすかさず六つの魔石、ゴブリンの魔石を取り出した。
「それと、これって換金できますか?」
「こ、これは、ゴブリンの魔石・・・・・・どうやってこれを?」
(どうやってて・・・・・・普通に倒したんだけど。まさか、どこかから魔石を買ったとか思ってるのか)
そんな面倒なことをするはずがないだろ、と声に出そうになったが、ソウスケはぐっと我慢して事実を述べた。
「どうやってと言われても、普通に倒したんですけど。それ以外になにかあるんですか?」
如何にも、それ以外の方法を知らない、といった表情を取って対応した。
「そ、そうですか。失礼なことを聞いてすみませんでした。魔石の分も含めてお金を用意しますので、少々お待ちください」
「分かりました」
受付嬢をいそいそと奥へ向かった。
(あまり目立ちたくないし、一気にランクを上げたいと思わないから、強いって印象を持たれないのはいいんだけど、毎回こんな反応されると面倒だな。優しさはありがたいけど、ちょっとな・・・・・・まぁ、何回も依頼を受けていたら、今回みたいなやり取りも減るだろう。パーティーメンバーに頼りになりそうな奴がいたら・・・・・・いや、まだパーティーメンバーはいいや。パーティーメンバーより奴隷の方が良いな)
受付嬢が奥に向かってから三分程が経ち、銅貨を持ってきた。
「お待たせしました。薬草の採取の依頼の分が銅貨三十枚、ゴブリンの魔石六つで銅貨六十枚になります」
ソウスケは受け取った銅貨を、一瞬アイテムボックスの中にしまいそうになったが、踏みとどまりバックにしまうことが出来た。
「それで、この三つの依頼を受けたいんですけどいいですか?」
「あ、はい。大丈夫です。スライムが十体、ホーンラビットが五体、ポンズマウスが三体の依頼を受理します。これから討伐に向かうんですか?」
「はい。ちょっと遅いですけど、今から行けばそこまで遅くはならないと思うんで。ああ、安心してください。冒険者は全て自己責任、って事ぐらいは分かってるんで」
ソウスケは、大丈夫だから子供だからと言って、心配する必要はないと、少しオブラートに包んで言った。
「わ、分かりました。お気をつけて」
受付嬢に礼をした後、ソウスケは速足でギルドをでて、門に向かった。
ソウスケの依頼を受理した受付嬢は、すこし不安そうな顔をしていた。
(つい、依頼を受理してしまったけど良かったのかな? Hランクって事はまだ本当に新人の筈。でもゴブリンの魔石を持ってるって事は、ゴブリンを倒せるだけに実力は持ってる。いや、まぐれだっていう可能性も・・・・・・いや、まぐれで六体も倒せるはずはないよね。でも・・・・・・)
ソウスケに、もしものことがあったらと、受付嬢が考え込んでいると、肩にポンっと手を置かれた。
「ひゃっ」
「どうしたの? ぼーとして。気になる人でも見つけたの?」
「せ、セーレさん!? い、いや、そう言うんじゃなくて、その・・・・・・」
受付嬢はセーレに、さっきまで何があったのかと、自分の判断が間違っていなかったのかという、不安を話した。
受付嬢の話を聞いたセーレは、直ぐに受付嬢の話の中に出てきた少年が、ソウスケだと分かった。
「あなたがそんなに気にする事はないわ。その少年は、人を見た目で判断するなという言葉が、ぴったり当てはまる人よ。さぁ、仕事にもどりましょ」
「は、はい」
この受付嬢が、セーレの言葉の意味を理解するのはもう少し先だった。
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