第2話 謁見

ありえない状況が目の前で起こっている。

先ほど自分は賢者の石の神子に選ばれ、神官に連れられ大聖堂の奥の部屋へ連れていかれている最中に新たな神子が選ばれた。

神器はもちろんリヴァイアサンなのだが、神子がエドの親友のメガイラだったのだ。


「な、エリーがリヴァイアサンの神子...?」


エドの頭の中には困惑という2文字しかなかった。

ただでさえ自分が神子に選ばれたのにも関わらず、新たな神子が見つかり、しかもそれが自分の親友だったのだ。

困惑しない方がおかしいだろう。

しかし、周りはそんなエドを差し置いて、


「神子様だー!リヴァイアサンの神子様が現れになられたぞ!」


「1年にお二人も神子様が現れるとはこれは神が私たち勝利への光を照らしてくれていることに間違いない!」


と、神官を含めて意気軒昂な様子で各々が鼓舞するような叫びを上げている。

すぐさま神官がメガイラの元へ駆け寄り、恐らく先ほどエドに話した内容と同じものを伝え、こちらへ連れてきた。

メガイラの目は落ち着いておらず、プルプルと震えているのが目に取れる。


「エ、エド、どういうことなんだろう。ぼ、僕が選ばれるんなんて何かの間違いだよね。」


「これからどうなるかは分からないが、ひとつ分かるのは俺とお前は神子に選ばれたということらしい。」


「そんな...僕には荷が重いよ...」


真面目な顔をして言うエドに対しメガイラは不安の色を顔に浮かばせていた。


「お二人とも、こちらへ。」


神官の1人が2人を部屋の扉を開けて待っていた。

部屋の中は真っ暗で中は何も見えない。

大聖堂の中の光は窓から来る太陽の光と『魔晶石』という魔法の力が込められた石を使って室内の明るさを保っている。

もちろん個室なども『魔晶石』を使って部屋の明かりを灯しているはずなのだが、この部屋はそれがない。

ロウソク1本すらない部屋。

気味が悪かったが、聖堂の中に危ないものはないと思ったので勇気を振り絞り、部屋の中へと入った。

遅れてメガイラもやって来た。

ここからどうすればいいのだろうと待っていると、勢いよく後ろの扉が閉められ、鍵を掛けられた。

何事かと振り返るが部屋の中は常闇の中。

分かるのは閉じ込められたという事実のみ。

すると、突然地面が光り始めた。

見ると円を描くように光っている。


「これは、魔法陣!しかも転移用の...」


メガイラがそれを言ったの最後に目の前が白くなった。

次に見えた景色は煌びやかで大理石で出来上がった大聖堂の広場を思わせるような大きさの室内だ。

様々な模様の描かれた柱。

巨大なシャンデリア。

高く広い天井にはステンドガラスの天窓があり天使や人間が描かれている。


自分たちの下には真っ赤なカーペットが敷かれ、カーペットの先には椅子がある。

それも単なる椅子ではなく通常は骨組みに木を使うのだが、一見しただけで分かる。

使っているのは金だ。

クッション部分もフカフカとしているのがすぐに分かる。

椅子というか玉座というべきもの。


「ここは一体何処なんだろう。」


「わからねぇ。ただ、誰でも来れるような場所じゃ無さそうだな。」


「ん、遅かったか。知らせがきてからそんな時間をかけずに支度をしたのだがな。」


知らぬものの声が聞こえた。

声のした方向は玉座がある方向。

玉座の後ろから一人の男が現れた。

服装は白色のウェストコート、右肩から左へ真っ赤なマントを垂れ下がらせている。

首元には七色に光る宝石を埋め込まれた首飾りをしている。

短くきり揃った髪は全て後ろへ流れ、青い眼、高い鼻、左右対称に整えられた髭。

顔には年齢から来てるのか少しシワが見える。

しかし、それを差し置いても彼の顔は男の目線からでも素晴らしく思え、文句のつけ所がなく、シワさえも逆に彼の良さをひき立てているような気さえしてきた。


「あなたは一体...」


「ん?ああ。君たちは農村の生まれの者か。ならば知らぬのも無理もないな。

我が名はシグムンド。この国の王である。」


「「ええぇぇぇ!!!!!!」」


「ええい。騒々しいぞ。静かにできんか。」


いや静かにしろというのが無理な話なのだが。

いきなり連れてこられた挙句自分の目の前には国のトップが目の前に現れているのだ。

驚かないやつなどいない。


「し、しかし陛下自らがなぜ私たちのようなものと謁見を?」


「おかしなことを言うなメガネの小僧。

今までの流れで何故ここに呼ばれるかわかるだろうに。」


「私たちが神子に選ばれたからですか。」


「そうだ。」


と言うとシグムンドは玉座に座った。


「お前達が神子に選ばれたのは良いが、いきなり戦いの場にいけと言うのも酷だろう。

故に私自らこれからの行動を伝えるのが決まりとなっておるのだ。」


頭をポリポリとヘアスタイルを崩さないように下記ながら言った。


「そうなのですか。しかし、お付の者も居ないのは少々不思議なのですが...」


「いや、まぁな。気にするな。」


ごまかすように言ったのはちょっと気になる。


「話を戻そう。先も言った通りお前達は神器に選ばれ神子となった。

しかし、戦闘経験もないお前達の今の現状はまさに宝の持ち腐れという言葉が相応しい。

だからだ。お前達には訓練を受けてもらう。」


「訓練ですか。」


エドが返すように聞く。


「そうだ。だが、ただの訓練では時間がかかる。そこで、実戦的な訓練を受けてもらう。」


「まさか、いきなり最前線に派遣とかじゃありませんよね?」


エドが顔をひきつりながら問う。


「それは最早訓練ではない。実はな魔王軍は1度この国の領土に攻めてきたことがあってな。

その時は撃退できたのだが、敗残兵がこの国に住み着いてしまってな。

村にも被害が出ていて見過ごす訳にもいかんのだ。

そこで、お前達の訓練と併用として敗残兵の駆逐をしてもらいたい。

拒否はできんがな。」


「そ、そんなの俺たち2人で出来るわけないじゃないですか!」


メガイラの静止を無視してエドが怒号する。


「吠えるな吠えるな。

お前達に死なれたら困るのだ。

だから、冒険者を雇いお前達の警護人にしてやる。

そいつらはS級冒険者チーム『黒き聖杯』。魔術師ソーサラーのコンタンス・レヴィがリーダーを務めている。

かなり頼りになるぞ?」


いや、そういう問題じゃないと思うが...


「時刻は明日の明朝。遅れることないように。

『黒き聖杯』には私から話しておく。

宿を取っておいた。

もうチェックインはすませているから休むといい。」


「「は?」」


シグムンドが手をエド達に向けると地面が光り始めた。

気づくと今度はこれまた大理石でできた部屋だ。

床は1面カーペットが敷かれているため柔らかい。

大きな屋根付きベッドは二つあり、大きなクローゼットが2つ。

シャンデリアまでついている。

スウィートルームとしか言いようがない立派な部屋だ。


「なんか、すごいな。流石は皇族の力。」


「そうだね。今この状態で驚いていない自分に恐怖を感じるよ。」


色んなことがあって2人は身体ともに疲れていたためもうベッドで寝ることにした。


翌日の『』に備えて。

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