4.キスの嵐は姉弟パンイチで行いますっ!

 月明かりが消え、液晶も休止状態。部屋の中に光源がなくなった。

暗闇の中でも感じる呼吸音や体温、肌の感触、微かな動き、髪の匂い。


「暴発って……ほんとになんでも報告し合うんだな」

「あのことも紗月姉に合わせたんだよ? 水着と下着のプレゼント」


 おかしいと思っていた。

どこかで話を合わせておかないとあれは無理だ。

紗月姉の置き土産、ブルーのビキニとブラジャーとパンツのセット。

花穂姉ちゃんの合宿の土産、黒いビキニとパンツ。


「洗濯物増やしただけじゃないか……」

「うん、そうだね。でも、蒼太は使った。洗濯カゴに入ってた紗月姉とわたしの下着、わたしのだけ水洗いしてあった。ちょっと精液の匂いしてたよ?」


 敵の奸計に早い段階から陥っていたってことか。

俺が二人の姉に対して、どんな感情を持っているのか試されたのだ。

紗月姉のつけたものに、全く興味が湧かなかった。紗月姉に対する感情は性、衣類に触れたいわけではなく、直接肉体に触れたい欲しかない。


「ごめん。花穂姉ちゃん……気持ち悪いよな?」

「なんで? 手紙に書いたじゃん。使ってねって。キモ嬉しいよ?」


 なんだそりゃ。キモいのか嬉しいのかはっきりしろよな。


「蒼太、ダイエットのときのこと覚えてる?」

「人を乗馬マシンにした挙句、暴発させて……」


 今更ながら、あれはダイエットと言えるのだろうか……

スマタっていうものに近いのではないだろうか。


「最後の方は目を閉じてたね。紗月姉が揺れてるのを想像したんだよね?」


 なにもかもお見通しなんだな。

はかりごとを巡らせる前に謀られていたようだ。

確かにあのとき、紗月姉の体のことばかり考えていた。


「花穂姉ちゃんには、なにも隠し事できないな……」

「いいよ、原因はわたしたち姉妹にあるもん」

「花穂姉ちゃんには俺を好きでいてほしい、構ってほしい、世話焼いてほしいって内面的な欲がある。一方で紗月姉の身体に触れたい、触れられたいっていう肉体的な欲がある……それが一つにならないんだ。どうしても、分離してしまう」

「ごめんね、蒼太。それは、わたしと紗月姉に取り合いされたトラウマなんだよ」

「紗月姉と花穂姉ちゃんが合体して一人の人間になればオッケーだっ!」

「そうだねっ! 超強いし、頭いいし、ボインだし……って、できるかっ!」





 恋をしたことが一度もない。その概念がない。

その原因は紗月と花穂、二人の姉にあった。なんでも分け合う姉妹、弟は分けられない。身体は分離できなかったが、心を真っ二つに割られたようだ。


「治るのかな? 俺、恋できるの?」

「大丈夫。その分、お姉ちゃんが蒼太に恋をする……」

「俺が紗月姉とエッチしたいって思ってても?」

「それは前からわかってる。紗月姉も承知の上だから。紗月姉が蒼太とすることはない」


 暗闇の中で花穂姉ちゃんが掛布団を取り払い、起き上がった。


「ん? どうした?」

「テレビ観る。蒼太、リモコンは?」


 真っ暗闇の中、四つん這いでリモコンを探す花穂姉ちゃん。


「姉ちゃん、リモコンはテレビの前! あっち!」


 背後から手を伸ばすと、覆いかぶさるような体勢になってしまった。

花穂姉ちゃんのパンツに書かれた受入可と、俺のパンツの金剛棒の文字が重なった。


「蒼太、この体勢は……金剛棒がお姉ちゃんのお尻に当たってますけど?」

「リモコンこっち。これは……無作為の衝突だって」

「でも、紗月姉じゃないとすぐに萎んじゃうよね?」

「ごめん姉ちゃん……」


 すごすごと引き下がって、布団の上に寝転がる……

花穂姉ちゃんとの接触で、確かに俺のパンツは膨らんだ。

膨らんだのは花穂姉ちゃんの身体に反応したのではない。

肌にジャストフィットするパンツに興奮しただけのようだ。


 テレビがついて部屋が少し明るくなった。

花穂姉ちゃんが、俺の腰の上に座ろうとしている。


「上から乗っかっても、金剛棒と可の文字だけ当たってるね……」

「ちょっと待ってくれ。乗馬マシンじゃないだろうな?」

「今回はちょっとだけ違うのかな」


 それだけ言うと、今度は倒れ込むように抱きついて来る。


「姉ちゃん……一応、姉弟だからな……」

「わかってる。でも、紗月姉と同じことはするっ!」

「同じって……わっ!」

「んちゅっ」

「ちょっ! 姉ちゃ……」

「ちゅ」


 外は晴れて月明かり、部屋はテレビの音声とキスの雨が降り注ぐ……

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