【序幕・第8章】あねさんぶる挟撃っ 前編!

1.姉を介抱して汗パンツも解放ですかっ!

 五月三日、午後五時。

四条先輩を姫咲公園前で降ろし、自宅に到着。

両親と花穂姉ちゃん、加奈子さんはこのあとも予定がある。


「ああ、疲れたぁ……寝る」


 背伸びをしながら、紗月姉が家の中へ入って行く。

川遊びではしゃぎ過ぎて相当疲れているんだろう。


「蒼太もいっしょに温泉行けばいいのに」


 花穂姉ちゃんが車の中から声を掛けてきた。

今晩から結城社長夫妻と加奈子さん、うちの両親と花穂姉ちゃんで温泉へ行くらしい。


「俺と紗月姉は、枕が変わると眠れないからな……」


 ゴールデンウィーク、お盆休み、正月にこうして家族ぐるみで結城家との交流がある。花穂姉ちゃんは親に同行するが、紗月姉や俺は宿泊にあまり参加しない。特に今日はそこそこ疲れがたまっているのか、家でのんびり寝たい気分だ。


「それじゃあ、戸締りよろしくね!」

「わかった。行ってらっしゃい!」


 加奈子さんは疲れているのか、後部座席で寝息を立てている。

寝息をほとんど立てず、座席に身を預けて眠るその姿は、絵の中の少女のようだ。














 両親と花穂姉ちゃんを見送った後、汗を流すため風呂に入った。

紗月姉は熟睡しているはずだ。侵入して来ることはまずないだろう。


「紗月姉暴れ過ぎだな……」


 加奈子さんの頬にするはずの口づけを、汗ばんだ陰毛で汚す暴挙……

つつしみのない数々の言動が頭をよぎる。

それでも怒りが湧いてこないのは、あの姉の魅力の一つだと言える。


(――腹減ったな)


 浴槽に浸かり、心身をリラックスさせると腹の虫が鳴き出した。

夕飯は帰りの道中で買ってもらった弁当を紗月姉と食べる予定だ。





 しばらく部屋でゴロゴロしたあと、夕飯の準備に取り掛かる。

準備と言っても食卓の上の弁当を袋から出して並べるだけの作業だ。

時間は午後八時半、そろそろ紗月姉を起こしてもいいだろう。


「呼びに行ってみるか……」


 二階の奥の部屋が紗月姉の部屋である。

一応、この家の個室では一番広い八畳のフローリングだ。


「紗月姉! 起きてるか!?」


 ドアをノックして呼びかけても返事がない。

いつもの勢いなら、ここで飛び掛って来たりするものだが……


「おーい! 入るぞ?」


 ゆっくりとドアを開けて中へ入ると、苦しそうな顔をした紗月姉がいる。

吐息が荒く、顔も赤い。昼間の状態とは大違いだ。


「……蒼……ちゃん……」

「姉ちゃん、これ熱あるぞ! それも、微熱じゃない……高熱だ」


 姉の額に手を当ててみると、通常よりもかなり熱い。

微熱なら少し熱い程度だが、手の平に伝わる熱はそれを超えている。


「蒼ちゃん……小栗内科の先生……呼んで……お願い」

「わかった! すぐ連絡して来てもらう!」


 小栗内科はこの近くにある開業医だ。

小さい頃、熱を出したときに来てもらったことがある。





 病院から先生が来たのはそれから三十分後だった。

紗月姉は食あたりと夏風邪だと診察され、解熱剤や抗生物質、胃薬を処方された。


「おかゆ作ってくるから、ゆっくり寝ててくれ」


 料理はこの一ヶ月、花穂姉ちゃんの見よう見真似でやや上達した。

おかゆなら、塩加減さえ間違えなければ問題ない。


 弁当の白ご飯を圧力鍋に移して、水と塩を少々を入れて火にかける。

しばらく煮込めばおかゆの出来上がりだ。


 トレーを戸棚から取り出し、紗月姉専用の茶碗におかゆを盛る。

梅干を別皿に乗っけて、箸とウッドスプーンも用意した。


 戸締りとガスの確認をして、紗月姉が待つ部屋へ向かう。


「紗月姉、自分で食べられるか?」

「……蒼ちゃん……食べさせて……あーん」


 先日、高熱を出して加奈子さんにおかゆを食べさせてもらった。

まさか、次は自分が食べさせる側に回るとは……


「熱いからゆっくり食べろよ……」


 ふぅふぅして、あーん。

俺が小さい頃熱を出したとき、こうして面倒を見るのは紗月姉だった。


「……ありがと……蒼ちゃん……ごめんね」


 紗月姉がおかしい。いや、元々俺に対しておかしいが……

最近暴走気味だったというのに、この素直さはなんだ。











◆◆◆◆◆◆












 おかゆを片づけて紗月姉の部屋に行くと、あることに気づいた。

汗をかいてシーツが湿っている。まだ熱が高いということだ。

紗月姉のTシャツも着替えさせないといけない。


「姉ちゃん、着替えるか? 汗拭かないと……」

「ん……無理……動けない……蒼ちゃん、着替えそこあるから……お願い」


 とりあえず、紗月姉をいったん布団からソファへ移してシーツを替えることにした。

そして、汗を拭くためにTシャツを脱がせる。


「ぬるま湯持って来たから、これで拭くよ」


 肩を抱いて起こして、首、背中、腕を丁寧に拭いていく。

紗月姉はまだぐったりして、力がない。



「……蒼ちゃん……替えたい……パンツも……汗で気持ち悪い……」

「え!? 姉ちゃん、着替えは自分で……」

「ん……無理かも」

「パンツも換えないとダメなのか?」

「下着は換えたいよ……」


――人生で初めて脱がす女性のパンツが……姉のパンツになるようだ……

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