4. 陰謀と陰毛を確実に阻止できますかっ!

『イグゥッ! ふぅうううううぉぉぉぉぉぉおおおおおおふっ!!』


 山河にこだます男の低い声、それは加奈子さんの端末から鳴り響いた。

動画検索ワード、『スマタ』……『極上素股体験動画後編』をタップして再生。


 タップするとき操作を誤ったのか、いきなりのフィニッシュシーン炸裂。

再生ボタンを押すとすぐに男が歓喜のうめき声をあげ果てた。

画面を凝視していた俺と加奈子さんの動きが一瞬固まる……


「うわっ! 音量マックス!?」

「ごめんなさい……弟君……まだ操作方法よくわからないんです……」


 加奈子さんの端末はファブレットといって、六インチの大きめの機種だ。

最近買ったこれに数十冊分の書籍データを入れて持ち歩いているらしい。


「加奈子さん、これ見ない方がいいと思う……」

「……光の反射でよく見えませんでした……男性が裸で……女性も……」

「うん! 男女混合プロレス動画だよ。男が負けちゃったけどね」

「あの……弟君。それがプロレスじゃないことぐらいわかります……」


 裸で仰向けに寝転ぶ色黒マッチョな男の上に女が乗っかって、腰をウネウネ……

体に粘っこい液体をつけて、外性器同士を直接摩擦している。


 これが紗月姉の言ったスマタなら、とんでもない話だ。

俺は正直、もうちょっとソフトなエロを期待していた。


「こういうの素股っていうのかぁ……俺、まだまだ無知なんだな」


 加奈子さんは隣で顔を赤くして、画面から目をそむけたままだ。

そこに花穂姉ちゃん、四条先輩、紗月姉がやって来た。


「悪い、悪い! 加奈子ちゃんが勝ったんだから、蒼ちゃんになにかないの?」


 紗月姉が加奈子さんに歩み寄って聞いてみるが……


「……少し……考えさせてください……」

「三人とも、本気であんなことするつもりだったのか?」


 いくらなんでもあんなことまではしないだろう、そう思っていた。

当然のことだ。あれは性行為をしているのと大差ない。


「蒼ちゃんと口か手かアソコでしようとは思ってたけど?」


 胸をグッと突き出して、さらっと言う紗月姉を変態便で海外へ送りたいっ!


「蒼太っ! 次のダイエットはお互いパンツなしっ!」


 花穂生徒会長様は既に乗馬マシン事件という前科がある。

もう暴れ馬にシルクロードの果てまで連れ去られやがれ……


「蒼太郎……あわよくば剛剣を滑り込ませて……契ろうかと……」


 先輩、あなたの倫理観や貞操観念がぶった斬られて千切れていませぬか……











 こうしている間にも加奈子さんは俺の隣で思案に暮れている。

たった一〇秒だけで、してあげられることなんて俺も思いつかない。


「加奈子ちゃん、蒼ちゃんにほっぺにチューでもしてもらう?」


 いきなり紗月姉が切り出した。


「それで……いいです……弟君……」

「え!? いいの? 加奈子さん」


 加奈子さんがうつむいて目を閉じた。

その横顔は湯気が出そうなほど赤く染まっている。


「蒼太、頬チューの一回や二回ぐらい男ならサクッと決めなよっ!」


 この馬鹿姉妹には頬チューどころか、散々弄ばれているのだが……

ただ、これが優勝賞品になるのかどうか、かなり微妙な気がする。

どちらかと言うと、俺がご褒美をもらっているようで複雑だ。


「蒼ちゃん、父さんたちが起きる前に早く。押し倒して、ハグ、チューだっ!」

「なに言ってんだよ……」


 加奈子さんはピンと背筋を伸ばして、横座りのまま目を閉じている。

ほっぺにキスをするより、華奢な身体を思い切り抱き締めたい。

そんな気持ちをいったん心の奥へしまって、俺も目を閉じて加奈子さんの頬へ……


「……あっ」


 加奈子さんが小さな声を出した。

眼を閉じたまま俺の口は触れている……


 加奈子さんの湿り気のある、ジョリジョリした汗の匂いがする頬……

……湿り……汗……ジョリジョリ……?


「ぺっ! ぷぁっ! 毛えっ!? おいっ! 紗月姉っ!」


 ビキニをずり下げて、眼前に仁王立ちする紗月姉。

キスしていたのは……紗月姉の蒸れたアンダーヘア……



「ばーんっ! どうよ蒼ちゃん、なんならもう少し下の方に口づけする?」

「紗月姉……ちょっと汗臭いぞ……毛がモロに見えてるし」


 発情期なのか、この姉の暴走がいつになく激しい。

加奈子さんへの頬チューで盛り上がったムードが完全にぶち壊しだ。

女神様を敬慕する俺の純真は、紗月姉の陰毛を見て劣情に上書きされた。


「紗月姉……それすっごい下品っ!」


 花穂姉ちゃんにもこの姉の暴挙は止められない。


「紗月さん……下劣極まりないな……」


 四条先輩も呆れてしまった。




 ――スマタ計画の陰謀阻止成功。陰毛は……阻止失敗……

しかし、紗月姉の股の間から見える加奈子さんは、笑っていた。

本物の女神のように微笑んでいた……

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