3.欲情と寝言の間で巨乳が揺れてますっ!

 時刻は既に夜の一二時過ぎ。

俺は今、猛烈に危険を感じている。


 空き巣を警察に引き渡し事情を説明したあと、どういう流れか紗月姉さつきねえによる格闘術のレクチャーが始まってしまったのだ。


「まずね、拳はグーじゃなくて掌打しょうだの方がいいんだよ」

「あ、それ俺聞いたことある! 拳で身体の硬い部分殴ると骨折するんだよな?」

「ってことで蒼ちゃん、姉ちゃんの部屋のベッドで寝技の練習ね。服掴んだりできないように全裸ルール!」

「それ却下っ! なんだよ全裸ルールって!」


 紗月姉は格闘戦の興奮冷めやらぬという感じだ。

汗で肌に張り付いたスポーツブラとショーツはぐっしょり湿っている。


 侵入した空き巣は五〇代後半の男性だった。

外から見ると、この家が空家に見えたそうだ。


 トイレに起きた紗月姉が発見。逃げようとする男に掌打を浴びせ、狭い廊下から部屋に引きずり込みジャーマンスープレックス、脳震盪を起こしている隙に……


「あっ! 蒼ちゃん、ちょっとそこに仰向けに寝転んで!」

「ん? 今度はちゃんと寝技とか関節技教えてくれるの?」


 言われるがまま広い居間に仰向けになると……突然目の前が真っ暗になった。

紗月姉がいきなり顔の上にしゃがんできたのだ。


「これがさっき見せた必殺の顔騎固め! どうよ? 蒼ちゃん」

「うぶぁっ!!」

「動けないでしょ?」


 両腕を抑えられ、顔の上半分に重みを感じるが、重み以上に汗ばんだショーツから伝わる酸っぱく甘ったるい匂いに酔いそうになる。鼻骨がど真ん中にジャストミートしているからか、それほど圧迫感を感じない。


「紗月姉! これは護身術というより、変なプレイじゃないの?」

「そっちのがいいなら、脱いでしてあげよっか?」


 立ち上がってショーツに手をかけ、脱ごうとする紗月姉……


「断固拒否! ってか、姉ちゃん汗臭いぞ。シャワーすれば?」

「蒼ちゃん、まさか匂いフェチ!? 鼻でクンクンしてたのバレバレだよ?」


 そういえば、花穂姉ちゃんが部屋に落としていたパンツも無意識に嗅いでいた。

フェティシズムなど今まで理解不能だと思っていたが……


「俺、ちょっと疲れた」

「あ、整理体操と柔軟やるから背中だけ押してくれないかな?」


 それだけ言うと姉は床の上で柔軟を始めた。

最初は立ったまま、片足を真っ直ぐあげて脛すねと耳をくっつける。

次は座ってほぼ一八〇度の大開脚。自分の肩をポンポンと叩き、俺に合図する。


「押すよ」

「ふぉうっ! ふぅー! うんしょっ!」

「姉ちゃん……おっさんみたい」

「次はもっと強めに押してもいいよ。体重かける感じで」


 紗月姉のこの体の柔軟さが、必殺の回し蹴りやローリングソバットの原動力だ。

体の柔軟性を高めると、美容にも効果が高いと言っていた。


「それじゃあ、強めに押すよ」


 ほぼ全体重を預けるように背中を押した。

それでも、余裕なのか開脚したままペタリと床に手をついている。


「あはぁん、んふぅ! 気持ちいい! 蒼ちゃんもっと来て突いて!」

「突かないって……夜中に変な声出さないでくれよ……」

「おっさんみたいって言うから、艶かしくしてみた。興奮した?」

「――してないって……」


 肌に張り付いた姉の下着よりも、汗臭い体にひどく興奮する。

露出した部位に浮き出る汗が、色気をより引き立てる。

荒々しくなりそうな鼻息を殺し、冷静でいるフリをするのがやっとだ。


 紗月姉は整理体操を終えて、入浴の準備を始めた。

着替えは既に脱衣場に置いてあるのか、バスタオル片手に歩いて行く。


「あ、そうだ。蒼ちゃんもいっしょに入る?」

「絶対入らない!」


 欲望とブラコン阻止の天秤がずれ始めたのは、この時からだろう。

まるで水のない砂漠に放り出された気分だ。乾ききった喉を潤す甘い水が姉二人。

飲まねば苦しいが、理性を保てる。飲めば甘い快楽を得られるが……

……これ以上の思考は、しないほうがよさそうだ。









◆◆◆◆◆◆









 午前一時、紗月姉はシャワーを浴びている。

俺はリビングの床でダラリと寝転んで、今にも眠りの世界に入りそうな状態だ。


(――あ、花穂姉ちゃんが夜には帰って来るな……)


 青山家の仲良し姉妹、二人揃うと妙な相乗効果が起こる。

まず、水面下で俺を取り合いしようとする。

表立って争わないのは、母が激怒したことがあるからだ。

お互いが牽制し合うので、両者共に自制する。


「――ねむっ……寝るか……」


 次に眼を覚ましたとき、違和感を感じて体を起こそうとするが……

やけに重量を感じる。石鹸のいい香り、髪の毛が肌に触れる感触。


「なんで紗月姉が俺の上で寝てるんだ……」


 バスタオルを巻いた紗月姉が俺の身体に抱き付いて眠り込んでいる。

散々暴れて疲れていたのだろうか。


「……蒼ちゃん……チン……こ……」

「起きろよ姉ちゃん! なんだよその寝言!」


 モソモソと紗月姉が動き始め、留めていたバスタオルがずれる。

豊かな乳房が零れるように露出した。


「寝相悪いよな。昔から」

「……蒼ちゃん……加奈……ちゃ……ダメ」

「なんで寝言に加奈子さんが出て来るんだよ。起きてくれよ!」


 ゆっくりと抱きかかえるように、姉の身体を支えて起こした。

バスタオルがハラリと落ちてしまったが、不可抗力というやつだ。

起こした瞬間、プルンと揺れ動く大きめの胸。

何度も見て慣れつつあるが、何度見ても興奮する……


「……ん、んんー……あれ? 蒼ちゃん?」

「姉ちゃん、なんで俺の上で寝るんだよ……それに服着ろよな」

「ふぁあ……ねむっ! シャワーしてここ来たら、姉ちゃん放ってグウグウ寝てるんだもん。爆睡中の蒼ちゃんにイタズラしようと思って……」

「なにをしようとしたんだよ」

「もちろん、蒼ちゃんの欲望を刺激しまくるイタズラ!」

「紗月姉、ストレス溜まってる?」


 長年姉弟をやっていると、微妙な変化に気付くことがある。

一ヶ月ぶりに見た姉の表情はどこかもの憂げだった。

こんな強い姉でも、五月病やホームシックになるのだろうか。


「うーん……結構鋭いなっ! ちょっとだけね。蒼ちゃん癒してくれる?」

「癒すってどうやって? 遊びに行くとか?」


 言った瞬間、紗月姉はガバッとバスタオルを開く……

勢いの反動で豊満な胸が再びプルッと揺れ動いた。


「戦闘後の興奮抑制やストレス解消はやっぱりアレがいいよ」

「なんでまたタオル外すんだよ! アレって?」

「蒼ちゃんとセックスする! セックスは安眠にもいいらしいよ!」

「ファックスするみたいに手軽に言うんじゃないっ!」

「んー。じゃあ、ファ○クする!!」

「絶っ対に却下なっ!!」


 このあと、紗月姉は眠気に勝てず、自室であっさり寝入ってしまった。

俺はというと、悶々としながら姉の全裸を思い出して自家発電機と化した。

誰にも言えない欲望だ。姉二人のうちのひとり、紗月姉としたい……

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