【序幕・番外編】あねびりーばぼーっ 壱

0.弟はわたしの下着に興奮するんですっ!

まえがき

姉の花穂視点の「姉らぶるっ!!」前日談となります。

最終話以降に執筆した話ですが、ネタバレ等はありません。

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 青山花穂、姫咲高校の一年。部活には所属していない。

家族は姉ひとりと弟がひとり。両親は今冬から仕事で海外へ行ってしまった。


 既に進路が決まった姉紗月は、四月から大学近くで寮暮らしを始める。

受験生の弟蒼太、わたしたちと同じ姫咲高校を受験する。


 つまり、邪魔者の姉は家からいなくなって、弟と二人暮らし。

思う存分襲撃……お世話をすることができる。


「ただいま――」


 一月の下旬。まだまだ寒さが厳しい。

玄関に弟の靴はあるが、姉の靴は見当たらない。紗月姉はお出かけのようだ。

時刻は午後四時、夕飯の支度には少し早い。


 足音を殺し、二階へあがって自室で着替えを始める。

蒼太は今、受験を控えた大変な時期だ。余裕がない成績だと聞いている。


(ちょっとだけ運動しようかな……)


 最近、ヨガがブームだ。まず最初に始めたのが紗月姉だった。

それを真似してわたしもやってみたのだ。

姉は形から入るほうなので、ヨガマットやヨガウェアを先に揃えた。

わたしも安物のスポーツブラとショーツの上下セットをネットで購入。


 淡いピンク色の上下は肌に張り付くようなフィット感がある。

生地の通気性がいいため、汗をかいても気持ち悪くならない。

なによりこの上下の利点は見せブラ、見せパンだということだ。

紗月姉はスポーツブラの上下で家の中を徘徊するのが常となっている。


 そのまま部屋を出て、弟の部屋をノックする。

すると、中から返事が帰ってくる。受験勉強中のようだ。


「花穂姉ちゃん、お風呂洗うのちょっと待ってくれ。今、勉強中で――」

「うん。いいよ。入る前に洗えばいいしね。勉強はどう?」

「順調だと思う。紗月姉と花穂姉ちゃんさえ邪魔しなければだけど!」

「邪魔はしない。ちょっとイタズラを……」

「おい、ホントにやめてくれよ。俺だけ落ちるの嫌だぞ」

「冗談だって。それじゃあ、夕飯できたら呼ぶからね!」


 ドア越しに蒼太の返事が聞こえる。

部屋に入らないのは弟が施錠しているからだ。

施錠する原因はわたしたち姉妹が蒼太でイタズラばかりするからで……

まあ、我が弟もお年頃ということだろう。





***





 一階におりて、リビングルームの液晶テレビでヨガのDVDを再生する。

動画の通りに体を動かそうとするのだけど、なかなか難しい。

姉の紗月は誰がいるときでも、ここで堂々と運動しているけど……

この格好はあんまり他人に見られたくない。


 体を動かしていると汗がジンワリと出てきた。

暖房の設定温度は二五度。少し高めに設定してある。

あらゆるヨガのポーズをしていると、いつの間にか体中から発汗している。


(暑い……)


 ブラとショーツが汗で肌に張り付いたようだ。

吸水速乾の生地も、これだけ大量に汗をかけば吸収しきれない。

時間にして一時間と少し。夕飯準備前のいい運動になった。


 午後五時半、自室から部屋着と下着を持って浴室へ。

汗まみれのスポーツブラとショーツを脱いで洗濯カゴの中に放り込む。

 

 このあと、蒼太が風呂掃除にここにやって来るはずだ。

だからこそ、これ見よがしに脱ぎたてのショーツを置いておく。

弟はわたしのパンツが大好きだから。


「使うかな?」


 もうずっと前から気づいていた。

紗月姉のパンツは使わないのに、わたしのパンツは……

脱いだときと洗濯前のニオイが変わっているのだ。


 シャワーを早々と浴び、着替えを済ました頃に弟が浴室にやって来た。

とても眠そうな目をこすりながら気怠そうな表情だ。


「あれ? 花穂姉ちゃん、今頃シャワーしてんの?」

「うん。ちょっとホットヨガやっててね」

「ああ。紗月姉がやってるあれか……」

「わたしは夕飯の準備するね。蒼太、お風呂洗いお願いね」

「わかった。任せてくれ」

「――ごゆっくり」


 最後の一言は弟に聞こえていない。

浴室のドアがパタンと閉まり、今頃蒼太の視線にはわたしのショーツが映っている。


 姉の紗月はデリカシーの欠片さえないが、わたしは理解ある姉のつもりだ。

弟のプライベートタイムは絶対に邪魔しない。


 覗いてみたい気持ちは確かにある。

今頃、汗臭いスポーツブラとショーツを存分に嗅いでいるだろう。

いや、もう始めている可能性だってある。


 こうして本能と欲望のままにストレスを発散できた弟は姫咲高校に合格した。

そして、始まる蒼太との二人暮らし。やれることをやるだけ。


(――今度、覗いてみよう!!)

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