4.避妊具装着で起こすとか鬼畜ですかっ!

 朝の目覚めの良し悪しは、普段の生活習慣や睡眠の質によると言える。

俺の場合、それらに加え姉に起こされないかどうかで変わってくるのだ。

鍵をかけ忘れようものなら姉襲来注意報どころではない、警報レベルだ。


「――ん、んあ? ん? もう起きる時間か?」


 目覚まし時計がジリジリやかましく鳴り響いている。

起きてすぐ思考を巡らすのは困難だが、よく思い返してみると……

夜中に花穂姉ちゃんがノーパンで侵入して来る事案発生!


「姉ちゃん……よくあんな姿で部屋に来たな。絶対、変だ」

「変じゃないっ! 恋よっ、蒼太!」

「えぇ!? うわぁぁ!!」

「おはよう、蒼太」


 ベッドに仰向けのまま、寝惚け眼まなこを横に向けると姉が座っている。

昨晩とは違い、セミロングの髪を結わえ、制服をビシッと身にまとう。

これが青山花穂の猫かぶりバージョン。学校での姿なのだ。


「――花穂姉ちゃん……なんで俺の部屋にいるんだよ?」


 ゆっくりと身体を起こそうとしたとき、俺はある異変に気付いた。


「ねえ、蒼太。今朝もすごいねっ! 中でキャンプができそうな勢いでテント張ってるって感じかな!?」


 タオルケットはベッドの下、俺はパンツ一丁で朝勃ちの真っ只中だ。

それをクスクスと笑いながら指先でパチンと弾く花穂姉ちゃん……


「……痛い! 痛いって!」

「蒼太のパンツすごい盛り上がりっ!」


 花穂姉ちゃんの言葉に反応して、咄嗟に隆起した前を隠そうとしたが……

自分の両手首をよく見てみると、ナイロン紐で縛られている!!


 右手はベッドの右の支柱に、左手はベッドの左の支柱に、足も同じように。

少し動かせる余裕があるから、起きてすぐに気付かなかったのだ。


「おわっ!? ちょっ!? 花穂姉ちゃんっ、なんの冗談だっ!?」


 足をバタつかせながら、とにかく前の生理現象を隠そうともがく俺。

それに対して姉ちゃんは、制服のポケットからなにかを取り出した。


「これね、保健体育で宮本先生がみんなに回したやつを拝借してきたの。蒼太がこれ付けてエッチしてくれないと赤ちゃんできちゃうもんねっ!」


 花穂姉ちゃんが今持っているのはコンドームだ。

エッチビデオなんかで時々見たことがあるし、それほど珍しいものではない。


 しかし、これを姉が持っているのが問題であり、それを無理矢理装着しようとするなど鬼畜の所業ではないのか……


「待てえっ! 姉ちゃん、それは本気でやめろっ!」

「えっ? でも、付ける練習しておかないと赤ちゃんできたら困るよ?」


 なぜ姉と子づくり行為をする前提で話が進んでいるんだ。

断固阻止、絶対拒否だ。手かせを切ってこの場から逃げなければ……


 既に姉ちゃんの片手は俺のパンツをずり下げる作業に取り掛かっている。

もがけばもがくほど、ナイロン紐が肌に食い込んで痛みを感じる。


「蒼太、ちょっとじっとしてっ! 痛くないから大丈夫っ!」



パンツはずりおろされ、巨大化したペニスが丸出しになった。

花穂姉ちゃんはパンツ越しに握り、コンドームをかぶせようとしている。

棒の先にゴムの感触、やり方が下手で強引なのか痛みがある……


「痛い! やめろっ! いくら花穂姉ちゃんでも本気で怒るぞ!!」


 そう言うと花穂姉ちゃんの手はピタッと止まった。

さすがに弟とはいえ、男を本気で怒らせるのは怖いのだろうか。


「朝勃ちの、いのち儚き、蒼太チン……花穂心の俳句……」


 もがいているうちに生理現象がおさまっていたのだ。

これで花穂姉ちゃんの暴挙は阻止できたと言えるだろう……


「姉ちゃん……心の俳句が声に出てるから……」

「じゃあさ、映画風に朝勃ちぬってのはどう?」


 施錠を忘れて最悪の朝がやって来た。

姉襲来警報……結果は手遅れ。しかし、最後の一線は死守成功。


「とりあえず、制服着るから……姉ちゃん、紐切ってくれ」

「ごめん、蒼太!」


 手を合わせて謝り、俺を拘束している紐を切る花穂姉ちゃん。

今回は特にひどい。やはり、本人もやりすぎたことに後悔しているのだろう。


「花穂姉ちゃん……」

「ごめんね。お姉ちゃんとしたことが、うっかりしてた。蒼太は普通サイズじゃダメッ! ラージサイズのゴム買っておくからねっ!」

「反省するのはそっちかよ!!」

「だってさ、いくら姉弟でもナマでエッチはやばくない?」


 姉は使用未遂に終わったコンドームをゴミ箱に投げ込んだ。


「もう問題点がおかしいから、却下なっ! 着替えるから出てくれよ!」


 俺は姉の背中を押しつつ、部屋から強制退去させたのだ。

相変わらずというか……花穂姉ちゃんは猫かぶりの変態だと思う。

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