第78話【クハルの想い】

「最近若い頃の夢を見るんじゃよ・・・」

「若い頃の夢?」

「野山を駆けて獲物を狩っていたあの頃の夢じゃ・・・」


遠い目で窓を見るクハル。


「だ、だからと言って過去に戻るなんて・・・」

「儂もそれが正しいとは思わん、だが多少は揺れ動くって言うもんじゃよ・・・」

「・・・・・」

「クハル爺、俺はクハル爺が過去に戻る選択をしても構わないと思う」

「キョクさん!?」


キョクの言葉に驚くハック。


「だが過去に戻っても仕事はして行ってくれ」

「・・・・・あぁローブは何としても依頼人の前に連れ出さなきゃならんて

それはやらねばならない・・・だが如何する?何か方法が有るのか?」


唸る4人、それから互いに意見を出し合ったが良い意見が出ない。

そして夜も更け眠る4人だった。






クハルは昔の夢を見て居た。

野原に相棒や大勢の戦士達と共にドラゴンと戦っている。


『ぐわっ!!』

『大丈夫か!?』


ドラゴンに吹き飛ばされながらも必死に戦い続けるクハル達。

斧でドラゴンの翼を切り落としてもドラゴンは未だに健在で爪や尻尾を振い続ける。


『何という力だ・・・』

『だからこそ戦う甲斐が有るってもんだ!!』


ドラゴンとの戦いは三日三晩に及び四日目の朝にドラゴンは地に倒れた。

そしてクハルは斧でドラゴンの首を落とした。


『『『『『お”お”おおおおおおおお!!!!!!』』』』』


集っていた戦士達が勝鬨を挙げる、その声はまるで地響きの様だった。


『やったなぁ!!おい!!』

『俺達本当にドラゴンを倒したんだな!!』

『ああ!!やったなぁ!!おい!!』


その後、皆で大盛り上がりになり酒盛りが始まった。

酒を一気に呑むクハル。


『ぷはぁ!!染みるなぁ!!』

『御疲れ様クハル』


肉の串を持って労を労う相棒。


『ドラゴンの肉焼けたから持って来たよ』

『おう!!あちちちち・・・うめぇ!!』


肉汁が迸るアツアツのドラゴンの串焼きに舌鼓を打つクハル。


『最高だな・・・』

『本当にね』

『こんな時間が何時までも続けば良いな』

『何それ相変わらずクハルジジ臭いわよ』

『うるっせぇや』

『それに私は嫌よ』

『何でだ?』

『もっともっとサイッコーな時間を過ごしたいから

休むのも結構だけど足踏みとかはゴメンよ?前に進まなきゃ!!』

『・・・そうだよな、ありがとう』

『何よ、急に改まってさ』


そこで目が覚めるクハル


「・・・俺は昔に戻らん、前に進むよ」

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