第76話【善意の怪物】
「救ってあげたい?儂をか?」
「えぇだって見ていて気の毒ですもの」
「気の毒・・・じゃと?」
「老人を労わる心位私も持ち合わせていますよ」
「話が分かりそうじゃないか」
「クハルさん」
「冗談じゃ、それで?儂を助けると言う事は儂を若返らせてくれるのか?」
「半分正解です」
せむし男は後ろのモニュメントを見る。
「このモニュメントはこの三次元空間に干渉して高次元の存在の私を
この次元に固定して、時空間を流動的に安定させ
私が時空間にパラドックス無しで干渉する事を可能にする機械なんです
一度使うと数十年単位で使用不能になる欠点がある上に
今回は故障していたのでローブ君に精神干渉して直して貰いましたが」
「ねぇ、アンタ私達に分かる様に言いなさいよ」
「失礼、この装置を使いクハルさんの精神を過去にワープさせる、と言う訳ですよ」
「・・・・・何じゃと?」
「つまり貴方は過去の若々しい自分に戻れる、と言う事です
私は今が苦しい、辛い人達を過去の幸せな時間に戻す、と言うボランティアをしているのです
ローブ君も今が苦しいので過去の幸せだった時間に戻してあげるんです」
「・・・そのローブは何処だ?もう過去に行ってしまったのか?」
「貴方達に捕まる前に未来に送りました、明日の夜中ですかね
過去へワープ出来る様になるのは明日からなので」
「つまり明日ここに来ればまだローブに会える、と言う事か?」
「そういう事ですが乱暴をしてローブを連れ出す事は私が許しません
私は戦いませんが貴方達をいなす事位は出来ます」
せむし男はそう言って頭を下げる。
「クハルさん、貴方が過去に戻りたいと言うのならば私は喜んで手伝います
是非ともお声をかけて下さい」
「待て、アンタの目的は何だ」
キョクが刀を構えて尋ねる。
「ボランティアです」
「何だそれは」
「唯の慈善事業です、何の裏も有りません、唯の善意です」
「それを信じろと?」
「えぇ、本当にそれだけなのです、私は可哀想な人を助けたい、それだけで動いています」
「・・・・・」
「貴方が信じようと信じまいとこれが真実です、では失礼します」
「待てっ」
キョクの静止も虚しく消えてしまうせむし男。
「何なんだ、何なんだ、一体!!」
「今のは本当に現実なのか?」
「現実じゃろ・・・信じ難いがな・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます