第69話【せむし男】

―クハルの回想―


クハルが貧民街に聞き込みを行おうと路地裏に向かった時

道端にせむし男が座っていた。

クハルは無視して進もうとしたが。


「クハルさん」

「!?」


せむし男に呼び止められた。


「・・・失礼だが何処かで会った事有るかのう?」

「今はまだ」

「・・・・・」


首を傾げるクハルをよそに立ち上がるせむし男。


「クハルさん、貴方今の自分に満足していますか?」

「宗教の勧誘か?」

「いえいえ私は下次元人の様な宗教は理解出来ないのです」

「かじげんじん?」

「いえ、失礼三次元人と言うべきでしたね」

「???アンタ頭大丈夫か?」

「あぁ失敬失敬、話を戻しますね

貴方は今の老いさらばえた体に満足していますか?」

「喧嘩売ってるのか?」

「いえ違います、私は貴方を救済に来たのです」

「救済?宗教じゃねぇか」

「いえいえ宗教ではありません、お金も頂きませんよ

私はただ貴方を救いたいのです」

「宗教の常套句じゃねぇか」

「あぁ、貴方が無駄話をするので時間がもうありません

仕方が無い明日の夕方にこの街の高台に来て下さい」


すっ、と去ろうとするせむし男。


「おい、逃げるのか?」


ゴーンと鐘の音が鳴り響きた後、

止めようとするクハルの前でパッと消えるせむし男。


「!?・・・な、消えた・・・じゃと?」


―回想終了―


「と言う訳なんじゃ」

「ふーむ、そのせむし男が怪しいな」

「いきなり出て来て宗教勧誘するとは・・・妙な奴ですね」

「と言うか何でクハル爺の名前を知っていたのかが疑問だね」

「そこから紐解いていくか・・・」


①依頼人とせむし男が繋がっていた


「これは無いだろう

そもそも儂はあの依頼人の嬢ちゃんに自己紹介出来てないもん」

「じゃあこうか」


②街中で他の3人が喋っていたのを聞いたのを知っていた


「クハルさんの名前呼んでないですよ?」

「うーんこっちに来た時に名前呼んだ、かも?」


キンが自信なさげに言う


「じゃあその時に近くに居た奴がせむし男と繋がっていた?」

「御者か?」

「それは無いだろう、都から態々来たんだぞ?

都からの御者とこの街のせむし男が繋がっているとは考え難い」

「ふーむ・・・じゃあこういうのは如何です?」


③せむし男は神州進撃会関係者


「無いな」

「無いわね」

「無いじゃろ、ハック、もう少し真面目に考えろ」

「ですよねー」

「仕方ない、せむし男については明日ローブが見つからなかったら

高台に夕方にでも行く事にしよう」

「何だか怪しいですけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃろ、壺は買わん」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る