第37話【ストレイヌベア】

都の大通りに出たハック

町中乾燥した皮膚から出た血で真っ赤に染まっている


「鉄臭いな・・・」


とりあえず都を一回りしてヌベアを何処で売りに出すか検討する事にした


薬屋ではヌベアは一つ20Gで売買され、それでも完売している


「ヌベア一つで20G!?売れるの!?」

「売れないな、そもそも仕入れられない」


薬屋の主人が気さくに話す


「なんだふかしか・・・

因みにヌベア缶を買うとしたらいくら払う?」

「5Gかな、常識的に考えて」

「やはりその位の額になっちゃいます?」

「そうじゃ無いと利益出ねぇしさぁ・・・」

「はぁ・・・」

「止血剤とかは飛ぶ様に売れてるんだよなぁ・・・君も買うか?」

「じゃあ一つだけ」

「毎度、3Fと20Eだ」

「はい」


薬屋を後にするハック


「止血剤ねぇ・・・何に使えば良いのやら・・・」

「ぐはぁ!!」

「姉さん!!」


ハックの向かい側からやって来て道端で唐突に血を流す姉妹

乾燥肌での出血なのだろう


「あ、この止血剤良かったらどうぞ」

「あ、有難うございます!!」


ハックは止血剤を渡して、その場を去る


「どうするかなぁ・・・」


ヌベアを売買する場所が薬屋以外に思いつかないハック


「ヴェンデスさんみたいにコネも無いし・・・

とりあえず色々回るか」


まず八百屋に行ってみた


「ヌベア?何それ、乾燥肌ならまずアロエだ!!アロエ!!」

「は、はぁ・・・」


次に魚屋に行ってみた


「ヌベア・・・・・・・薬屋に売れば?」

「そうですよねぇ・・・」


喫茶店に行ってみた


「行って如何する」


一向に考えが纏まらないハック

喫茶店で一人パフェをつまみながら黄昏ていた


ガタッ、と向かいの席に誰か座った


「やぁハック」

「キュー、何でここに?」

「いや、珍しいなと思ってね、喫茶店良く来るの?」

「偶には、君は?」

「女友達とね」

「ポートと?」

「私はこう見えても役者だよ?役者仲間の女子に決まってるじゃん」


パフェを一口食べるキュー


「勝手に喰うなよ」

「まぁ良いじゃない、で?何黄昏てるの?」

「この前の報酬のヌベア、何処で売ろうかなって・・・」

「私が5Gで買おっか?ルートが有るしさ」

「・・・止めとく、もっと高値で売れそうな所を探すよ」

「あらそう、でも気を付けなよ」

「何を?」

「乾期は永遠では無い、乾期を過ぎればヌベアも唯のクリームに過ぎないわよ」

「・・・覚えておく」

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