第14話【ヴェンデスさんの遍歴】

「そこはそうじゃなくてこうなんだ」

「あ、そうか、ヴェンデスさん有難うございます」

「良いって」


ハックが寮に戻ると机にヴェンデスとナガノが二人並んで座り勉強をしていた


「帰ったかハック、おつかれー」

「ども、おじゃましてます」

「ナガノさんいらっしゃい、何してるんですか?」

「ちょっとヴェンデスさんに勉強を教えて貰ってます」

「無論有料だ、一時間7Fでお前にも勉強教えてやろうか?」

「金取るの?」

「あたぼうよ、俺はこう見えてもそれなりに出来る魔法使いだからな、ロハでは動かん」

「はぁ・・・」

「・・・ハック君、ヴェンデスさん本当に凄いんだよ?

全部の魔法使える魔法使いなんて始めて見たし」

「でも八浪中ですよね?」

「あー・・・一応誤解を解いておくとな八浪中に努力の末に様々な魔法を獲得したんだ」

「そうなんですか?」


意外そうな顔をするナガノ


「あたぼうよ、 最初から魔法を全部使える奴なんか居ない」

「へぇ・・・でも個人的にはオールラウンダーよりも一つに集中した方が良いと思いますけど」

「それに関しては色々と深い訳が有るんだよ

まず八年前俺はそもそも付与魔術師だった」


付与魔術師とは主に補助的な魔法を使う魔法使いである

敵にデバフ、味方にバフをかける様なタイプである


「昇格する為の試験用の洞窟に入った結果

ボッコボコにやられて出て来た、次の年もボッコボコだ

俺は気が付いた、補助的な魔法使い一人ではどうにもならんと

それで俺は次に俺は普通に攻撃魔法を修めることにした

三年目、攻撃魔法一年生の頃は上手く行かずボッコボコに

二年生の頃は途中までは上手く行ったが詠唱中にボッコボコにされた

俺は気が付いた、どんなに強い魔法でも唱えている間に殴られれば無意味だと

で、俺は召喚師になった」


召喚師とは異界の存在を使役する召喚術を得意とする魔法使いである

召還した者を自らの代わりに戦わせる事も可能である


「まず一年がかりで召喚師のスキルを得て、召還には成功したんだが」

「だが?」

「・・・召喚した奴は結構賢い奴で意志疎通が出来るんだがそりが合わなかったんだ」

「そりが合わなかった?」

「そう、結局、六浪目でそいつは封印して俺は治癒魔法使いになった

これならば攻撃魔法を唱えている間にダメージ受けても回復できるから

これは良いと思ったがダメージレースで敗北して結局駄目だった」

「駄目・・・だったんですか?」

「じゃなきゃ浪人してないわな、だがしかし俺は閃いたよ」

「?」

「武術を習って物理で殴り、ダメージは魔法で回復すれば良いんじゃないかって」

「・・・・・は?」


ポカンとするハックとナガノ


「この戦術で去年挑んだが付け焼刃だったから上手く行かなかった

だが今年は行けるぞ!!ポートとかに稽古つけて貰っているしな!!」

「・・・・・魔法使いの試験じゃ無かったんですか?」

「魔法使いだからと全部魔法で解決しようとするのは愚か者のする事よぉ!!」


がっはっはと笑うヴェンデス


「魔法使いとは一体・・・」

「流石はヴェンデスさん、考える事が違う」


呆気に取られるハックと尊敬するナガノであった

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