第37話 魔石銃

 野営の朝が明けた。

 微妙に疲れている。

 気合入れて頑張るか。


「おはよう。フィオレラ。ローレッタ」

「おはようございます」

「おはよごす」


「よく眠れたかフィオレラ」

「はい、ぐっすり眠れました昔から寝つきはいいんです」

「ローレッタも見張りご苦労様」

「野営の見張りは任せでけ」

「よし、てきぱきいこう」


 朝食は昨日の残りと携帯食で素早く済ませた。

 テントをたたみ馬ゴーレムに積み込み野営地を撤収する。




「今日は魔石銃を使って魔獣を狩ろう」

「はい」

「フィオレラは魔獣を探してくれ」


 魔力探知を適当な間隔で掛けながら進む。


「一匹います。ですが魔力の反応が大きくありません」

「とりあえず行ってみよう」




 フィオレラの指示した方向に歩く。


「あれか、エッジラビットで無くて良かった。ラッシュボアだな」


 地面を掘り起こしている最中のラッシュボアがいた。


「気づいてない。ローレッタ魔石銃で炎の矢を撃とう」


 二人で後ろからこっそり近づく。

 同時に魔石銃を撃つ。

 ローレッタの方は当たりお尻に爆発を食らった。

 ラッシュボアはびっくりして飛びのく。

 俺の方は脇を外れ地面に爆発を起こす。

 ちっ、外れた。

 気を取り直して頭を狙い撃つ。


 またも、脇を炎の矢は通り過ぎあさっての方向へ。

 ローレッタを見ると頭に炎の矢を当て爆発させている。

 ラッシュボアはプギーともの凄い音量で鳴く。

 そして、ローレッタの次の炎の矢でラッシュボアは息絶えた。

 俺の方は結局全て外れた。




「魔石銃気に入ったこれだの」

「俺に良いところ全然無いな」


 やっぱり俺に射撃の才能は無いらしい。


「がんばって! 師匠!」

「よし次は当てるぞ」


「これ魔力の補充無しでどれぐらい撃てる」

「作って試した時は炎の矢は九十発、炎の槍は九発撃てた」

「そったにです?」

「ああ、魔力が無い時の手札としては頼りになるだろ」

「筋力強化が使わいね時切り札にす」

「夕飯の為の肉と魔石を取ったら、次の魔獣に行こう」


 魔獣を探しながら歩いていた時。




「あちらの方向に魔獣が一匹います」


 すぐに魔獣が見つかる。魔獣の方からも近づいてきた様だ。魔獣はソードタイガーだった。


「やばい素早い奴だ。フィオレラ、薄いトーチカと鉄条網。ローレッタは炎の槍の魔石銃で撃て」


 二人でトーチカの窓から魔石銃で炎の槍を撃つ。

 ソードタイガーはステップを踏みながら猫科特有の滑らかな動きで突っ込んでくる。

 俺の炎の槍は外れ、ローレッタの方は胴体に当たり爆音を響かせた。

 動きが鈍ってる。


 今度こそ当てる。

 炎の槍を良く狙って撃つ。

 避けられた。


 ローレッタの炎の槍が方向転換を図るソードタイガー突き刺さり爆発する。

 ソードタイガーは倒れこんだ。




「落ち込みそう。ここで魔石銃の充填をして昼飯を食って次に行こう」


 フィオレラに魔石銃の充填をしてもらう。

 その間俺とローレッタは警戒に当たる。


「なあローレッタ当てるコツとかある?」

「動きば先読みす事だ」

「地道に練習するしかないか」




 一時間ぐらいしてフィオレラから声が掛かる。


「充填終わりました」

「よし、昼飯にしよう。いただきます」

「いただきます」

「いただぐ」


「昨日の夜、見張りしていて思ったんだ。遠吠え無かったら、気づかなかったんじゃあないか」

「そった時は周りの音ばいぐ聞ぐ。虫の声が聞こえねぐなったら、何か近づいでら」

「さすがローレッタ詳しいね。私の場合は百二十数えたら、魔力探知してます」


 参考になったが、どちらも俺には無理だ。

 耳も良くないし、魔力の回復もフィオレラみたいにはいかない。

 帰ったら、何か作ろうと思う。




 次の魔獣を探す。

 今度はオークだった。


「近づく前に魔石銃で倒そう」

「はい」


 オークはドタドタと足音を立てて歩いてくる。

 魔石銃で炎の槍を撃つ。

 腹に当たり苦悶の表情を浮かべるオーク。

 オークはグオオっと叫び、腕を上げ気合を入れる。


 しかし、かなり動きが悪い。

 チャンスだ。


 ローレッタの炎の槍も当たり更に動きの悪くなるオーク。

 この調子だ。

 接近しようと近寄ってくるオークに二人で炎の槍を撃つ。

 今度の炎の槍は頭に当たる。

 止めを刺したみたいだ。

 結局計四発でオークは息絶えた。




「魔石と肉の良い所を取ったら、野営地を探そう」


 しばらく、歩いて問題無いと思われる場所が見つかった。


「どうだ、ローレッタ」

と思う。平地だはんで水がではだ時の為に溝ば周りに掘るべ」


 泥ゴーレムを作りスコップを持たせて作業させる。

 テントを張り終える頃には夕飯の涎の出そうな匂いが漂ってきた。


「おっ美味そうだ」

「ええ、オークの良い肉を使ってますから」

「狩りはこれがあるはんで好きだ」


 なごやかに夕飯を終える。


「今日の見張りはどうする? 俺はちょっと自信がないので皆がぐっすり眠ってない最初がいい」

「では、シロクさん。わ。フィオレラの順であんべ」

「それでいいです」


 昨日は重要性が分からなかった。

 しかし今日はビクビクしながら見張りをする。

 早く時間が経たないかなと思いながら魔道具の時計を何度も見た。

 俺が見張りの時に魔獣が来て全滅したら、なんて考えが浮かぶ。

 疲れていて少しネガティブになっているみたいだ。

 結局交代の時間まで魔獣は来なかった。

 魔獣が来ないよう祈りながら眠りつく。




 無事朝が迎えられた安堵感にホッとする。

 起きると空がじわじわと明るくなりさわやかな風が吹く。

 昨日の残りのスープを温め、携帯食を浸して食べる。

 さあ撤収に掛かるとするか。

 テントを解体して馬ゴーレムに積み込む。

 後は帰るだけだ。




 無事、西門をくぐり町に入り家に帰る道すがら感想を聞くことに。


「ワイバーンの領域に行ったつもりの半分の日程だったが皆どうだった」

「馬ゴーレムは荷物運びには良いですね。ストーンゴーレムほど足音を立てませんし、魔獣に気づかれにくいのが利点です」

「魔石銃が便利これにつぐの」

「俺は見張りが厳しかった。後、射撃の腕を上げないと。今日の課題を解消したら、また野営の訓練しよう」

「「はい」」


 こうして一回目の野営は終わった。

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