第26話 Cランク

 魔石の換金にハンターギルドの窓口に訪れた時、ギルドマスターから呼び出しがかかっていますと言われた。

 二階の執務室の前に案内され、ノックしてから入る。


「失礼します。ゴーレム使いのシロクです。お呼びだそうで」


 ギルドマスターと思しき屈強な男性は革張りの椅子に腰掛け疑いの目でこちらを見ている。


「この支部のマスター、クリフだ。お前色々とおかしいぞ」


 なんかばれたか。とぼけてみるか。


「なにがでしょう」

「調べてみた。まず討伐の記録がおかしい。ホーンラビットの時は普通だったが、ゴブリンの時の一日の最大討伐数が九十四だ。異常だろう」


 ギルドマスターはかなり疑いの眼差しでこちらを見てる。どうしよう。

 罠ゴーレムは別にばれても良いけど。

 どこからこういう発想が生まれたと聞かれると困る。


「まあそれは奥の手なんで詳しく話せないのですが、ちょっと変わったゴーレムを作りまして」

「その後の草原ウルフもおかしい。一日の平均討伐数が十四ぐらいだ。三パーティ分に相当する」


 フィオレラのスキルは絶対に喋れない。

 追求されたら、ハンターの手口は秘密だととぼけよう。


「切り札があるんですよ」

「今もおかしい。オークの領域で空振りの日が無く狩りができている。多い日は四体だ」


 これも喋れないな秘密だらけだ。


「魔獣を見つけるコツがありまして」

「パーティメンバーもおかしい。建築ギルドに登録しているゴーレム使いは良い。助っ人でゴーレム使いが参加するのは良くある話だ。忌み子の射手もまあ良しとしよう。しかし、後衛三人のパーティではどうにもならんだろう」


 だんだん言い訳も苦しい。開き直るか。


「おかしいと何か迷惑になるのでしょうか?」

「迷惑にはならないが、今回の盗賊討伐の件で考えた。最初は闇ギルドのメンバーではないかと。討伐数が多いのは闇ギルドが狩りをした分を回した。盗賊は闇ギルドの構成員でないから邪魔だったと思ったが、違う様だどうにもチグハグだ」


 なんか違う方向に話が向かっている。


「どのへんがチグハグなんでしょうか?」

「闇ギルドならパーティメンバーはもっと無難な感じに揃える。あと偽の素性を周到に用意する。出身地が空欄になっていたがお前素性を言えるか」

「言えません」

「だろう、そこで考えを変えた。腰に差しているのはミスリルの武器だろう。そんな高い物を用意できるのは高ランクハンターか貴族ぐらいだ。お前貴族の庶子だろう」


 貴族の庶子ときたか。

 とんでもない勘違いだ。

 利用するか。


「出生に秘密はあります。しかし内容は話せません」


 嘘は言ってないよ。

 稀人だから生まれは話せない。


「それなら変に礼儀正しいところや常識に欠けた行動を取るのも分かる。まあ貴族のゴタゴタに巻き込まれるのは敵わないからこれ以上追求しない」


 ギルドマスターは納得した様子だ。

 早く退散しよう。


「それだけなら、もういいですか?」

「まぁちょっと待て。討伐数が本当ならランクが釣り合ってない。盗賊討伐の功績で二段階アップのランクCに上げる。盗賊の被害は困っていたからちょうど良い」

「ありがとうございます。では失礼しました」


 危ないところだ。

 変に勘違いしてくれてよかった。

 でも監視が付くんだろうな。




 窓口でギルドカードを更新してもらって二人と合流する。

 これでCランク早いのか遅いのか。

 早いのだろう。

 装備だけは強くなった気はする。

 方向性は間違っていないと思いたい。


「二人共、Cランクになったぞ」

「Bまで後一つです。楽しみです」

「Cランクになると何かい事があるんだが」


「うーん、依頼を受けられる幅が広がるけど、お目当ての魔獣を探し出すなんて技術はないから、討伐依頼は駄目だ。薬草採取の護衛もパーティの秘密がな。依頼は無理だ結局今までと変わらんな」

「今日はお祝いしますか」

「そうだな、帰りにちょっと高級な食材を仕入れよう」

だねお肉」




 家に帰っていつものスキル訓練をする。


「フィオレラ、契約魔法覚えてみるか」

「ええ教えて下さい」


 契約魔法のアビリティを教える。

 ついでに契約確認のアビリティも教えた。


「これでローレッタに私のスキルを使わせる事ができます」

「これでみそっかす卒業だ」


「師匠にはスキルをコピーしなくていいのですか?」

「俺は魔力が無くなるのが前提だ。その度にスキルをコピーしてもらうのも面倒だ。でも、土魔法は欲しい」


「今度師匠には土魔法をコピーします。ローレッタは何が使いたい」

「洗浄がだ」


 こういう所が女の子だ。

 洗浄は体や衣服を綺麗にできる。


「ところでローレッタ筋力強化のアビリティはできるようになったか?」

「はい、まだぎこちねばってできる」


「ならクロスボウをやめて筋力強化を使うのに合わせた強弓にしてみるか?」

「はい使ってみてだ。そへば更に戦力になれる」


 スキル訓練は終わり。

 食事の支度が整い。

 宴会になった。


「今日もお疲れ様。Cランク昇格を祝って乾杯!」

「「乾杯!」」


「今日は家だからって飲みすぎは勘弁してくれよ」

「はい気をつけます」

「今日はずっぱどく」


 ローレッタは食いしん坊キャラだ。


「食べながら聞いてくれ。そろそろ雨期に入る。お金もそこそこ有る事だし、狩りを休んでスキルの取得を雨期が終わるまで頑張りたい。そして、雨期が終わったら、野営の訓練をして、ワイバーンの領域に挑戦したい」

「聞いた話ですが、ワイバーンの領域には魔法が効かない魔獣がいると。当然魔術も効かないですよね」

「そうなんだ。魔力で防御膜を張って魔力を打ち消すらしい。こういう魔獣には単純な物理攻撃しか効かない。対策を雨期の間に考える」


「わがけっぱって弓で対応すのはどんだが」

「ただでさえパーティの人数が少ないから。できれば二人で攻撃したい。まあゆっくり考えよう」

「私が攻撃できれば……」


 フィオレラが落ち込みそう。

 フォローしなければ。


「フィオレラは役に立っている。魔力探知だけでも充分だ。難しい話はここまでだ。今日は食べて喋って楽しもう」

「ところで後一つでBですけど、どっちと付き合うかもう決めましたか?」


 うんそこは勘弁してくれ、強制されるのは嫌いなんだ。


「まだ決めてない」

「どうせなら、二人同時に付ぎ合って。Sランクになり貴族になって二人ど結婚したら、わもフィオレラも幸せになれるのに」

「すまんなヘタレで二人同時は無理だと思う。そんな器用なことできそうにない。まだ時間はある考えさせてくれ」


 宴会は終わり。ベットに入って思う。

 たぶんまた新しいゴーレムが必要になるのだろう稼ぎのネタもかんがえなきゃと。

 そんな事を考えたら、いつの間にか眠りについていた。

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