第2章 『消えない過去と消えた笑顔』

第2章プロローグ 『罪という名の枷』

 ──鉄の匂い


 五歳になって間もない頃、小さな集落で過ごしていた。親の顔などあまり覚えていない。

 ただ、残っているのは耳障りな集落の者達の悲嘆の叫び声と鼻が曲がる程の濃い血の匂い。何者かに集落を襲われたのだ。

 この家にも襲撃者達が来るのはそう、時間はかからなかった。家の戸を乱暴にこじ開けられ、父親は母親と子供を守る為に戦ったがすぐに殺された。母親も父親を追う様に抵抗し殺された。

 追い詰められた子供は何も出来ず只々、親を殺されるところを見ていた。

 そして、一人の男が現れ子供に枷かせをつけ、告げた。


「今日からお前に自由はない。この枷は一生涯、はずれない」


 この日、少年の運命は天地一変した。未来永劫、自由は訪れないのだから。


「仕事だ、行くぞ」


 頭が小さな少年に告げる。


 ──ああ、また人を殺めるのか


 少年は、小さな体に大きな罪という名の枷を背負う。この人生という長い時の流れに逆らえず、ただひたすらに流される。

 逆らったら殺される。自身が生きる為に罪の無い者達を犠牲にし、生にしがみつき、のし上がらなければいけない。ここに来て生きる事がどんなに苦痛かを知ったのだ。

 また、悲嘆の叫びと呻きに飲み込まれる村が出来る。少年達の手によって。

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