第1章11 『纏った闇は』

 数十人の牢に閉じ込められていた子供達の母親はすでにユウラのように血を吸われ、亡くなっていた。キャラバンは三つに分かれ、近隣の街へと子供達を身内へと届ける事にした。アルニラムへはカプやミーリア、ナギサが同行し、ルナとフィアナも来る様で、五人には家へと寄ってもらう事にした。

 無断外泊してしまったので、心配しているだろうシルアに、キリユウは何か嫌な予感がして堪らなかった。


「はぁ、怒られる……鉄槌が下るっ」


「何だ? そんなに怖いもんが待ってんのか?」


「まぁね」


 キリユウは約束をすっぽかし、無断外泊をした為、シルアの怒る様を想像し溜息しか出なかった。

 キリユウ達一行はアルニラムに到着し、馬達を預けるべく厩舎へと向かう。

 厩舎への道のりをカプへと教え、先にルナとフィアナと共にアルニラムに住んで居たと言う四人の子供達を連れ、国家剣術騎士団へと預けに行く事にした。

 商人や街の人たちで賑わう大通りを抜けると、広い敷地が目に入る。受付で事情を話し、中へと入れてもらう。子供達を預け、この場から去ろうと門を出た瞬間、


「──ユウ……ちゃん?」


 黄檗色の髪を風になびかせ、瞳に涙を浮かべながらキリユウの元へと駆け、抱きしめる少女、シルア。


「ユウちゃん! 今までどこで何やってたのっ」


「あ、えと。ハーブを探しに……」


「時間かかり過ぎっ!」


「ヴァッ!?」


 キリユウの頭を拳で殴るシルア。一方的な取っ組み合いをする二人は何処か幸せそうであった。


「何だよルナ、その笑みは」


 二人を見るとキリユウの事を小馬鹿にする様に笑うルナ。


「誰? まさかっユウちゃんの友達!?」


「うみゅ! フィアはフィアって言うのぉ」


「……ルナ、だ」


「ルナ? 君、その体格でその名前はかわいいね!」


「なっんだとこら? 人の名前、馬鹿にすんじゃねぇよ」


「なんだい? やろーっての? 私が女だからって侮っているのかな?」


 名前を小馬鹿にされたルナはシルアに喧嘩を売る。その喧嘩を容易くかったシルア。キリユウの顔は見る見る青ざめていった。


「おい、悪い事は言わないから辞めた方がいいって」


「あ? こんな事で漢が引けるか」


「いいね〜そう言う子、嫌いじゃないよ」


 かくして、ルナとシルアの殴り合いが幕をあげたのだった。

 両者、睨み合い、一歩も動かぬままだったが、先に動いたのはルナだった。


「はぁっ!」


 ルナはシルアに拳で殴りかかるが、シルアは簡単に避け、体勢を崩したルナの頭へと容赦無く一発拳で地に叩きつけノックアウトさせた。


「ぐはっ」


「だから言ったのに……」


「んだよ、この女が強過ぎだからだ!」


「言い訳は見苦しいぞ、ルナ」


「ルナナ弱っちぃ〜」


「なっ」


 言葉を詰まらせるルナに容赦無くキリユウとフィアナは言葉で叩く。そんな三人を見てシルアは笑みをこぼす。


「ふふっ、君達仲が良いね!」


「別にそんなんじゃっ」


 照れ隠しの様にシルアの言葉に対抗するキリユウ。

 しかし、シルアが優しい微笑みをしている事に気付き、言葉を止めた。


「ルナ、フィアナ。キリユウをこれからもよろしくね」


「うみゅ!」


「ああ何だ、こいつには一応、助けられたしな」


 シルアはルナとフィアナに深く頭を下げた。ルナとフィアナは顔を見合わせ、シルアに向き直り、それぞれの答えを述べた。その答えにシルアは微笑みを返した。その時、


「──幸せそうなのぉ」


「っ!?」


「ルナナ、上!」


 フィアナは茜色に染まった空を指差す。そこに居たのは闇黒の粒子を身に纏い、不快な笑みを見せるハクの姿があった。


「なっ、何でお前がここに!?」


「ふふっ、貴方の幸せ。黒く、闇黒に染めてあげるのっ」


 闇黒に染まった粒子が降り注ぎ、キリユウ達の身動きを封じる。粒子は一点に集まると鋭く研ぎ澄まされた太い矢のような形を成す。


「お前、何をっ」


「ハク、痛いのここがっ」


 そう言い自身の胸元を強く掴む。ハクの瞳には恐らくキリユウに対しての憎悪しか無いのだろう。身動きのできないキリユウ達はただただ、聞くことしかできない。


「だぁかぁらぁ〜君も痛くしてあげるのぉ! ふふっ死んじゃえっ」


 闇黒の粒子を纏う矢がキリユウの眼前まで迫る。しかし、

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