第1章5 『フィアナという少女』

「なぁフィア、お前も大樹の近くにあった穴から落ちて来たんだろ?」


「うみゃ!? 何でフィアの名前をしってるのぉ?」


「え、さっき自分で言ってたろ?」


「そぉだったぁ〜? でも、フィアの名前はフィアナだよ?」


「へー、そーなんだ」


「何でそんなに興味なさそうに言うのぉ〜」


 天然なのか馬鹿なのか分からない少女、フィアナはさておき、キリユウはこの状況を打破するべく思考を巡らす。


「フィアはぁうさぎさん追いかけて来たの! そしたら、大きな木の穴に落ちたの」


「何故、うさぎを追いかけた?」


「うみゅ? 食べる為だよ?」


 仮にも少女の口から聞いてはいけない様な事だったと後悔すた。そのうさぎも、きっとここに落ちたのだろう、「可哀想に」と哀れむ。


「何だよここ、巨大な花しかないな」


「あるよ湖ぃ〜」


 そう、ここには巨大な花々と大きな湖しかないのだ。


「あぁ寝よ、夜中だし朝になれば俺が居なくなった事誰か気づくはず」


キリユウは考える事を放棄し、大の字で寝そべる。


「夜中? フィアが落ちた時は確か、ぽっかぽかのお日様がいたよ?」


「え、そんな訳無いだろ? 寝てねぇから天然が悪化して呆けた?」


「うみゃ〜っ!  そんなことな〜い!」


 怒るフィアにキリユウは適当に返事を返し重い瞼を閉た。


「──ん?」


 静まり返った空間に心地よい音がキリユウの耳に入る。上体を起こし、湖の方へと行くと湖は波を打っていた。そして、水しぶきが鮮やかに光輝き、飛び出して来たのは、


「うみゅ?」


「のわぁぁぁっ!?」


 その綺麗な水は、ガラスよりも透き通っていて、その水が大きな波を立て、飛沫をあげ飛び出して来たのは──フィアナだった。

 キリユウは反射的に後ろを向きその場から立ち去ろうと足を踏み出した。


「ねぇ、キリュー!」


「は、はひぃっ!?」


「何でそんなに驚くのー? そんな事よりね、この湖、洞窟があったの!」


「洞窟?」


 髪を布で拭きながらフィアは状況報告をする。洞窟と言う事はそれが奥まで続いているとしたら、そこに出口があるかもとキリユウは考えたが、


「キリュー! 早く行こ〜。ここから出てあのうさぎさんを食べなきゃ」


「まだ食べる気なのね、哀れなうさぎ」


「キリュー? はぁ〜やぁ〜くぅ〜」


 素早く着替え、洞窟を泳ぐ気満々のフィアナがキリユウに早くしろと要求してくる。しかし、


「いや、その僕は──泳げない」


「うみゃ!? ……じゃぁキリューを置いて行こぉ!」


「なっ、えぇ!?」


「うみゅみゅっ嘘ぉ〜びっくりした?」


 イタズラ気な笑みを見せてくるフィアナに対してホッと胸をなでおろす。「さぁ、行こう」とフィアナに押され、湖に飛び込む。そして、一気に吸えるだけの酸素を吸って水飛沫を上げながら鮮やかな光を放つ水へと潜り込む。

 湖の底は、宝石を散りばめたかの様に、光を集め放っている。


 ──広い洞窟だな、息が続くか……


 洞窟は奥へ進んで行くほど暗くなる。時々フィアナがキリユウの方を確認する様に見てくる。気にかけてくれているのだろう。

 しばらく行くと三つの分かれ道ができていた。フィアナも泳ぎをやめ、どの道へと行くか迷っているようだ。


 『助けてっ』


 声、いつかの夢で聞いたことのある小さく、か細い呟き。瞬間、視界が開ける感覚があった。再び粒子の飛び交う世界へと引きずりこまれる。何故この粒子は、他の人には見えないのだろうか。疑問に思うことはいくつもあるが、一つ、分かっていることがある。

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