第5話 苦手

女について行き僕は少し古い小屋を出た。

僕の記憶では外は雨が降っていたが今は快晴だ。女は険しい山道をどんどん進んでいく。男の僕の方が足でまといになっていた。思わず休憩したいと女に伝えた。すると女は

『あんたまじ?まだ半分も来てないわよよ?それでも男?ちゃんと付いてる?』

と半笑いでバカにしたような口で言った。

下品な女だ、やはり僕はこの女が苦手だ。と思ったがそれよりまだ半分も来てないことに絶望を感じた。休憩を終えて腹を括り女について行き後半は女に手を引っ張ってもらい歩いた。正直手を引っ張ってもらうのはプライドが許さないがそんなこと言ってる場合ではなかった。

『着いた』

一足先に女は山頂について2秒ほど遅れて僕がついた。そこには見たことないのにどこか見たことのあるような不思議な空間があった。来たはずの道が一つも見えないどころかそこからは大きな湖以外霧で何も見えない風景があった。

『ここはね、私が好きな場所』

女は言った。わけがわからなかった。分かるのは女はなにか目的があったかのような雰囲気で僕を連れてきた。しばらく湖を見ていると女はさっきまでの強い口調ではなくどこか寂しく、

『私たちなんでここに来たんだろう』

とつぶやいた。

『あんたが連れてきたんだろ?』

と聞いたが女はしばらく黙り泣いていた。

どこの誰かも知らない女、しかも嫌いなはずの人間なのに僕は気づいたら女の横で背中を撫でながらただ湖を見つめていた。ここがどこかも分からないのに。

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