魔王様は大賢者に呼び出される。
「……少しは、落ち着いたかのう?」
「……うん、ありがとうな。めりにゃんが俺の嫁で良かったよ」
「……」
「めりにゃん?」
急にめりにゃんが黙ってしまったので急に不安になる。
いくら彼女が優しかったからと言って甘えすぎてしまっただろうか。
「……せ、セスティ……そろそろ……」
そろそろなんだ? ちょっと待て。
この先の展開に進むとか俺達にはちょっとまだ早いっていうかその……アレだ、そう、アレだから!
「ち、力を……抜いて……」
「めりにゃん! ダメだって! 俺達まだ……」
「……ぐぇぇ……」
ふいにめりにゃんが脱力して完全に体重を預けてきた。
これはもしかして、そういう事なのか?
ここで俺は一線を……!?
「……きゅぅぅ……」
「……? めりにゃん?」
反応がない。
「おい、めりにゃん??」
抱きしめていた腕を離し、めりにゃんを一度引き剥がすと……。
「た、大変だ! めりにゃん! しっかりしろーっ!!」
俺は馬鹿だ。
いつから? めりにゃんは俺がぎゅーっと力を入れていたのをいつから我慢していた?
俺があの日の事を話し始めたあたりからか?
めりにゃんはぐでーっと脱力し、白目を剥いて泡を吹いていた。
「……う、うーん……」
「めりにゃん! 気付いたか……ほんとごめんな?」
「う、うむ……よいよい気にするでない。これも妻の務めじゃよ」
めりにゃんのいじらしさに俺は不覚にもきゅんと来てしまって、今度は出来る限り加減してもう一度抱きしめた。
「ほんっとにごめん。今度から気を付けるから」
「本当に気にせんでいいのじゃ。しかしその力、やっぱり凄いのう……元の力を取り戻してなかったら死んでたやもしれん」
俺はその場にニポポン式ドゲザをして謝罪の意を伝え続け、めりにゃんはそんな俺にまだ優しい言葉をかけ続けてくれた。
「おいセスティ、ちょっとラボまで来てく……れ……え、何これどういう状況?」
俺が地べたに頭をこすりつけてめりにゃんに
謝罪している最中に、ノックもせず現れたのはアシュリーだった。
いつから居た? 転移で直接ここへ来たのかもしれない。
「アシュリー、せめてノックくらいしたらどうじゃ?」
「そ、そうだぞアシュリー! これにはいろいろ事情があるから気にするな!」
「……ま、まぁいいわ。それよりちょっと一緒に来てちょうだい。大事な話があるのよ」
大事な話というのはなんだろう? とにかくアシュリーが真剣な顔をしているのだから重要な要件なのだろう。
「お主まさか……」
「何を勘違いしてるかしらないけれど貴女も来るのよめりにゃん」
「へ? 儂も?」
めりにゃんが何を誤解したのかは分からないが、めりにゃんも一緒にという事なら今後に関する話だろうか?
「アンタ達だけじゃないわ。そうね……あとナーリア、ショコラ、ライゴスあたりは呼んで来てちょうだい。私はラボで準備しておくから」
アシュリーが真面目な顔のまま、転移でラボへ戻っていく。
「なんじゃろのう? 皆に声をかけてラボまで行ってみるか。ほれ、セスティ……そろそろ顔を上げるのじゃ」
めりにゃんの差し出した手を掴み、立ち上がって、先ほどの詫びにもう一度優しく抱きしめてからその額に軽くキスをする。
「ふにゃっ!? お、お主……不意打ちはずるいのじゃぁ……」
「さっきのお詫びといつものお礼だよ。さ、みんなを集めて行こうか」
「むぅ……セスティはずるいのじゃ」
「……? 何か言ったか?」
「何でもないわい。早く行くぞ!」
めりにゃんは俺の手を引っ張って小走りに部屋を出る。
こういう所も本当に可愛らしいと思う。
俺が自分の身体だったら我慢できんぞこれは……。
まぁ、夫婦なんだし我慢する必要もないのかもしれないけど。
そんな事を考えつつ皆に声をかけにいってたらなんだか少しもやっとした。
「そう言えばアシュリーは言ってなかったけどメアにも声をかけた方がいいだろうな」
「うむ、あやつも最早完全な当事者じゃからのう」
それぞれ声をかけると、
ライゴスはちょこちょこと駆け寄ってきてすぐにめりにゃんの頭に乗っかる。
ナーリアは「姫が私に御用なんて珍しいですね!」と目を輝かせて付いて来て、同室のステラに滅茶苦茶睨まれた。
ショコラに声をかけようとしたら部屋に居なかったのでどうしようか考えていると、突然背後から声をかけられ悪寒が走った。
「お前いつの間に……」
「ライゴスに話しかけてるあたりからずっとおにぃちゃんのすぐ後ろに張り付いてたよ」
「……こんな所で妙な隠密スキルを発揮しないでくれ」
ほんとこいつは何を考えてるかわからん。
最後にメアに声をかけに行ったのだが……。
「何? 今ヒールニントとお茶してるんだけど」
「あ、大丈夫ですよーおかまいなくー」
しかめっ面をしながらもメアは一緒に来る事に賛同し、ヒールニントに「ちょっと待っててね」と告げる。
「いったい何の用?」
「アシュリーが大事な話があるんだとよ」
「……それはろくな話じゃなさそうね」
まぁ、そうなんだろうけどお前が言うな感が凄いのはどうしてだろうか。
「ついでだからラボまで転移頼むよ」
「はぁ……いい加減転移魔法の精度上げなさいよね……?」
ブツブツ言いながらもちゃんと俺達を運んでくれるあたり優しい。
ヒールニントが居てくれればこいつは大丈夫だろう。
おふくろともうまくやってくれてるみたいだしな。
ほんとに義理の妹か何かのようだ。
ラボの入り口に到着し、中へ入ると既にアシュリーが妙な機会を準備して待っていた。
「アシュリー、みんな連れて来たぞ」
「……メアも連れてきたの?」
「何よ? なんか文句あるの?」
なんだ? メアが居るとまずかったか?
「まぁいいわ。じゃあ始めましょうか」
特に気にする事もなく話を進め出したので別に問題は無かったのだろうが、妙な気持ち悪さを感じた。
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