魔王様とニポポンのカミヤシロ。
「どうもここはダメっぽいな。もう誰かに荒らされた後みたいだ」
サクラコも俺と同じ意見。恐らく誰にどうやって、というのももう分ってるだろう。
「多分リンシャオの姉ちゃんってのが荒神研究をする時にニポポンのカミヤシロも漁ってったんだろうな」
そう考えるとニポポンにあるカミヤシロはもうほとんどダメかもしれない。
それはリンシャオから事前に言われていた事ではあるのだが……。
「おにぃちゃん、どうするの? 諦める? それとも他の所も行ってみる?」
「うーん、判断が難しい所だけど、出来れば他のも一通り見ておきたいな。ロンシャンの捜索漏れがあるかもしれないし」
「そういう事なら任せておきな。あたしはニポポン国内は一通り旅した事があるからな。カミヤシロの場所なら大体わかるぜ」
「そりゃ助かる。じゃあ次の場所まで案内してもらえるか?」
次の目的地はどうしようかと少し話し合った結果、このニポポンという大陸を北から南へ順に調べていこうという事になった。
多少時間はかかるかもしれないが、虱潰しに調べていくのが一番間違いが無いだろうという事だ。
この大陸はユーフォリア大陸に比べたら相当小さいので転移を活用していけば回りきるのも数日で済むだろう。
勿論、目的地が明確でスムーズに辿り着ければの場合だが。
まず調べるのは大陸最北端。アイヌドウという場所らしい。
そこにあるカムコッタンという場所を調べる事になった。
何でも、現地の言葉で神の住まう場所というような意味があるらしい。
場所はサクラコが知っているので、サクラコが見たい場所をショコラに映し出してもらい、それを俺が視覚情報として認識し、転移をする。
ニポポンに来た時にショコラが言っていた方法を実際に試してみた形になるが、これがどうやらうまくいったらしく一発ですぐ近くまで行く事ができた。
ここには水神の伝承があり、神の怒りに触れると溺れ死ぬという話だそうだ。
人間を溺れさせる事がその神の力ならばたいした事ないように思えるが、それが伝承として伝わっているのならば本来は川の氾濫や海からの津波、そういった類の現象を神の仕業として伝えられてきた可能性が高い。
……と、サクラコは言っていた。
結果だけを先に言うならばここもハズレ。
神が居たかどうかは分からずじまいである。
相変わらずカミヤシロは荒らされていたし、それどころか廃墟のようになっていたので既にロンシャンが調べる前から廃れていたのかもしれない。
人々の信仰心が無くなったのか、それ以前に何かしらの理由でカミヤシロが倒壊したか……。
それは判断しかねるが、どのみちここには何もなかった。
次の目的地はアワモリという地域。
人里からは離れた場所にカミヤシロがあったのでここは荒らされてはいなかった。
かなり秘境じみた森の奥、断崖絶壁の上にあり、人の手が入った形跡は無かったもののそこにはそもそも最初から何も無かった。
メディファスが調べても力の残滓も感じないようだったので、恐らく形式上のカミヤシロか、或いはこの地区の守り神、信仰の対象としての象徴として設置されていただけなのでは? とサクラコは語る。
そして、とうとう俺達は次の目的地にて神を見つける。
特に険しい山に囲まれた地域で、マングーという場所だった。
山に囲まれてはいる物の、それをこえると中央部は比較的平地が多く、ここもあまり人の気配がない場所だった。
そして、そこで見つけたカミヤシロを調べていると、そこ自体はおそらくロンシャンが調べた後だったようだが、メディファスが地下に通じる扉がある事に気が付く。
「お、確かに床下から地下にいける階段があるぞ。やるじゃねぇかメディファス。偉いぞ」
『素直に褒められると明日にでもまた故障するのではと心配になります』
「褒めてんだから喜べ。それよりさっさと地下へ降りてみよう」
俺達はそのまま地下へ続く階段を下りて行く。
最初のうちはきちんと整備された階段が続いていたが、どんどん降りていくにつれて自然の岩肌が見えてきて、足元も元々の地面を削り出して作った階段のように変わっていた。
あまりに暗いので魔法で明かりを灯して進む。
「ここの奥に……何かあるかな?」
サクラコが少し緊張したような声を出した。割と珍しい気がする。いつもの太い神経はどうした。
「なんだか、嫌な予感がするんだよ」
「師匠の言ってるのなんとなく分かる。この奥、多分なにか居るよ」
「何をビビッてやがるんだ? むしろ何か居てくれなきゃ困るんだぜ。今は俺にショコラ、サクラコが要るんだからもし万が一戦闘があったとしても楽勝だろうけどな」
「期待してくれんのは良いけど神様相手は初めてだからな……?」
意外とサクラコは未知の物っていうのには警戒するタイプらしい。
それとは真逆でショコラはなんも気にしてない。
何か居ると言いながらも俺の前をすたすた歩いていく。
本当にこの妹は頭のネジがいくつかどっかいっちまってんじゃないのかねぇ。
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