魔王様と性欲処理人形とニポポンの何か。


「あっ、おにぃちゃん……おかえり」


「おう、ただいま。お前らは相変わらず仲良さそうだな」


「はいですの♪ わたくしおねぇさまの愛の奴隷ですので♪」


「愛の奴隷ってなんじゃ?」


 めりにゃん、多分それは突っ込まない方が……。


「愛の奴隷、それはおねぇ様の望む事ならば何でもして差し上げる……嫌な事でも愛があれば何でも耐えられる……むしろ嫌な事など無いのでわたくしにとって天職と言える仕事なのですわ……!」


「そ、そうか……すごいのう」


 めりにゃんは多分よく分かっていない。

 それでいいと思ったのにショコラが余計な一言をぶっこんできた。


「性欲処理人形とも言う」


「せいよっ……!?」


「めりにゃん、こんな爛れた人達の話は聞いちゃいけません」


「おー? プリンも帰ってたのか! ……って、違った。セスティだったな。あたし未だに慣れねぇわ」


 背後に突然サクラコが現れ、珍しくショコラがビクっ!! と身体を震わせる。


「し、師匠……いきなり背後に立つの、やめて」


「あぁん? 別に取って食ったりはしねぇよ。公衆の面前でってのはそれはそれで面白いかもしれんが……」


「セスティ、こやつらは何の話をしておるのじゃ?」


「しっ! めりにゃんはこんな爛れた人達の話を聞いてはいけません!」


「むぅ……気になるのう」


 めりにゃんがいけない大人の階段を登ろうとしている……これはきちんと守ってやらねば。



「みんなお集りでどうされたんです? 楽しそうな話なら混ぜてほしいです」


 クラシカルなメイドという言葉がしっくりくるようなメイド服に身を包み、ナーリアが俺達に料理を運んできた。


「注文を伺おうとしたんですがアレクさんがあの人達ならこれでいいと……」


 目の前に出されたのは俺の分がガリーライスというスパイシーなとろみの強いスープ状の物がライスにかけられている物で、めりにゃんに出されたのは典型的なお子様プレートという奴だ。そしてろぴねぇの前に出されたのが山盛りの何かの肉の揚げ物。


「わお♪ アレクっちもうちの好みをばっちり把握しとるやんか~♪」


「ぐぬぬ……儂は馬鹿にされておると思っていいんじゃろうか……」


 めりにゃんはブツブツ言いながらも、味付けされたライスを卵でくるんだ料理を口に入れてはニッコニコ。なんだかんだこれで正解なのだ。


 そして俺の方も、以前もう少し辛くしてくれと言ったのを覚えてくれていたのか、丁度俺好みの味になっていて流石アレクと言ったところか。


「そう言えばおにぃちゃん何処に行ってたの?」


「ん? あぁ、古都の民の本拠地をぶっ潰しに行ってた」


 さらりと言ってしまったが、古都の民の存在を知っているナーリアやショコラは驚いているようだった。


「本拠地……? 無事に帰って来てくださってよかったですが……あまり無茶はしないで下さい。あのザラのような連中が山ほど居たのでしょうか……?」


「いや、強いのも多少はいたが基本的にはそこまで練度の高い連中じゃなかったな。それと、メアももうこの国に帰ってきてるから安心してくれ。今はヒールニントって女の子を連れてロンシャンへ観光に行っちまったが」


「メア……まったく人騒がせな人ですね。勝手に出て行ってすぐ戻ってきたと思ったら今度は観光ですか……? しかも女の子と二人で? 許せませんね」


 お前が許せねぇのは最後のとこだけだろうよ。



「おにぃちゃん……どうしてそんな楽しそうな事に私を誘ってくれないの?」


「あぁ……いろいろ事情があったんだよ」


 とりあえず飯をかっ込んで、隣でまだ料理をつついているめりにゃんを微笑ましく見守りつつ皆に事のあらましを説明した。


 というかあの大量のからあげがもう消失しているろぴねぇ恐ろしや。


「……姫、それは何かの……冗談ですよね?」


 やはりナーリアが一番衝撃を受けている。それも仕方ないだろう。ナーリアとデュクシは俺がぼっちになってから、旅の最初期から一緒に居たんだから。


「残念だけど本当だよ。あいつは、今はデュクシでもあり、勇者ハーミットであり、悪魔アルプトラウムだ」


 敢えて神、という言葉は使わず悪魔と称したのは、本人がそう言っていたから。

 悪魔に魂を売ったのだと。


「ははーん、じゃあ街で噂になってた勇者ハーミットってのが鬼神セスティご一行の仲間のデュクシって野郎で、今はその神様と一体化しちまってるわけだな?」


 サクラコという人は基本的に無茶苦茶やる人だけど、あまり事情も知らない割には呑み込みが早い。頭の回転が速いんだろう。


「姫、なんとか……できないんでしょうか?」


「んー。正直なんとも言えないが、俺もこのまま黙ってる訳にはいかないさ。何かしら方法を考えるつもりだ。少なくとも、奴に対抗出来るだけの力を手に入れなきゃならんわけで……それが一番問題なんだけどな」


 相手がアルプトラウムならば、何をどうやったら勝てるのかがまず分からない。

 俺達は数パーセントの勝機をどこかに見つけなければいけない。


「私も、出来る事は何でもします! だから……あの馬鹿を救ってやって下さい」


「あぁ、あの馬鹿に説教してやらんとな」


 そんな俺達をよそに、なにやら不穏な会話をする二人がいた。


「力ねぇ……おいショコラ、ニポポンのアレってイケると思うか?」


「アレって……まさか師匠、アレが本当に実在すると思ってるの?」


「……いや、やっぱ無いかなぁ?」


 何の話してんの?

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