姫魔王はオカマオウ?
「なんだ!? 何が起きてる!?」
イムライが慌てて騒ぎが起きている方向へ走り出す。
「なんじゃなんじゃ? まだ何かあるというのかこの街はっ!!」
「めりにゃん、とりあえず俺達も行こう! ろぴねぇ、ライゴスを頼む!」
「あいよーっ♪」
ろぴねぇがなんだか文句を言っているライゴスを抱えあげ、後を追ってくる。
「ナーリアはステラを守る事を最優先しろ!」
「わ、分かりました! ステラ、こちらへ」
俺達は急いでイムライの後を追いかけ、その背中に追いついた時……そこはまさに惨劇だった。
「な……何てことだ……これは、いったい……?」
呆然とするイムライの背中を思い切り叩く。
「止まるな! ぼーっとしてたら死ぬぞ!? とにかくこいつらを何とかしないと!」
街の中に複数の魔族が襲来しており、既に被害者はかなりの数にのぼっていた。
「めりにゃん! ろぴねぇ! 魔族どもを退治するぞ!」
「魔族……あれが? あれが、魔族なのか……?」
イムライはまだ呆然としていて、街の惨劇を見つめていた。
「イムライ! お前も多少戦えるんだろう!? この街が大事なら、守りたい人がいるなら動け!」
「そ、そうだな……俺に何が出来るか分からないがやれるだけの事はやってやる!」
そうはいう物の、視界に入る限りですら五体の魔族がナランに来ている。
まだどこかに居るかもしれない。その証拠に、別の場所でも騒ぎが起きているようだった。
「……い、イルナとリーシャが危ない!?」
そうだ、この街にはこいつの嫁さんと、娘……リーシャが居る。
「ならお前は家族を守りに行け! こっちは俺達がなんとかするから!」
「し、しかし……この街の人々は俺にとって……」
「つべこべうるせぇ!! お前がこの街にどんな思い入れがあってどんな立場か知らねぇけどな、家族を優先する事が許されねぇなんてある筈がないだろうが!!」
イムライは一瞬ぎゅっと目を瞑り、そして決意する。
「分かった。でも俺にとってこの街の人々は大事な仲間なんだ! だから……」
「分ってる。だからさっきも言っただろ? 任せろってな!」
俺は目の前で街の人に襲い掛かろうとしている魔族へ飛び掛かり、その首元へ思い切り回し蹴りをくれてやった。
血飛沫を上げ魔族の首が近くにある商店の売り物の棚へと飛んで行く。
こりゃあ事後処理が大変だぞ……でもそれは街の人とイムライに任せりゃいい。
「俺達は俺達のやるべき事をやるだけだ! めりにゃん、ろぴねぇ! それとライゴス!! ここに居る奴等は俺が受け持つからお前らは散ってそれぞれ討伐と避難誘導だ!」
「分かったのじゃっ!」
「あいよーっ!」
「り、了解である!!」
ろぴねぇの腕から飛び降り、本来の姿を現したライゴスが街を駆けるが、それを見た人々が悲鳴をあげて逃げていく。
しまった、あいつの外見モロに魔物だもんなぁ……。
「なんだてめぇは! このアニリル様にはむかぶっ!!!」
俺の背後から名乗りを上げつつ迫ってきたヒトデみたいな魔族のどてっぱらにメディファスをぶっ刺して切り上げる。
「てめぇらの名前なんぞいちいち聞いてる余裕はねぇんだまとめてかかってこい!」
出来る限り俺にターゲットを集中させないと。
これ以上街に被害を出すわけには行かない。
「めりにゃん! ろぴねぇ! お前らも出来るだけ街に被害を出さずになんとかしろ! できるな!?」
「勿論なのじゃっ!」
「まかせときーっ!」
それぞれライゴスとは別の方向へ向かう。
全部でどれだけの魔族がきているのか分からないが、これ以上殺させはしない。
「ひ、姫っ!? これは一体……!?」
ナーリアがステラを連れ、遅れてやってきた。
「見ての通りだ! 魔族共が来てるからぶっ潰すぞ! お前はステラを守りながら人々を逃がせ! 弓はいざという時以外使うな!」
こんな街中でナーリアのスキルが外れを引いたら最悪の場合死人が出る。
「くっ……こんな時にデュクシが居れば……!」
「いねぇ奴の事をごちゃごちゃ言ってもしかたねぇだろうが! とにかく急げ!」
「分かりました! ステラ、少し怖い思いをさせるかもしれませんが私が守りますから一緒に来てください!」
「わ、分かりました! どこまでもお供します! おいそこの魔王! そんな奴等さっさとぶっ殺して騒ぎを納めろよな!」
その豹変ぶりと言い草に笑いがこみ上げる。
「ふふっ。大丈夫……こっちは任せておきなさい。ステラこそナーリアの邪魔にならないように気を付けるのよ?」
「お、お前に言われるまでもねーや! このオカマオウ!」
オカマオウ!?
さすがにちょっと傷付くあだ名だよそれは……。
「こらステラ! 姫に失礼な事を言うんじゃありません!!」
「す、すいませんナーリア様……」
「ほらいちゃついてないで仕事しなさい!」
「分かりました! 行きますよステラ!」
「はい♪ 地獄の底までも!」
いやいや。
地獄なんか目指すんじゃねーよ。
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