結末と拗れた真相。
「っつ……ちょっと驚いたわ。貴女状態異常耐性持ちだったの? それともそういうアーティファクトでも持ってるのかしら」
「私の場合は後者ね。貴女が知らない所でいろいろとあったのよ」
ロザリアは背中に指を差し込まれたあたりから少しだけ石化が進んだものの、すぐに元に戻っていた。
彼女が言うには、何か状態異常を防ぐ、或いは回復するアーティファクトを所持している……との事だが、私のように体内にアーティファクトを隠し持っているのだろうか?
「まぁいいわ。石にして飾ってあげようと思ったけれど仕方ない。貴女はここらで死になさい」
魔族王が両の掌を合わせ、ゆっくりと広げていくと、片方の掌からずるりと剣のような物が引きずり出されていく。
「これが何なのか今のうちに教えてあげるわ。数あるアーティファクトの中でも破壊にのみ特化した強力な物でね……ローゼリアに封印してあったアルプトラウム秘蔵の一品よ」
「だとして、剣なんかで私が倒せるとでも……」
すぱり。
ロザリアの言葉が終わる前に、彼女の手首から先が切り落とされる。
「……ッ!?」
「なかなか再生されないでしょう? これは切り口から特殊な魔力をその断面にまき散らすのよ。例えばこれで全身細切れにされたらいくら貴女でも当分身動き取れないでしょうね。そして、そうなった貴女を二度と再生させないようにする手段くらいいくらでもあるわ」
あれはまずい。
危険すぎる!!
「ロザリア離れて!!」
「うるさい! こんな物、当たらなければどうという事もないわ!」
ロザリアが構わず、自ら所持している剣を振り回すが、魔族王は剣だけに頼る事なく魔法でロザリアを吹き飛ばした。
「くっ……! こんな魔法なんて」
「効かなくていいのよ。本命はこっちだから」
ロザリアの吹き飛んだ先に既に転移していた魔族王が剣を振り下ろす。
あれは、避けられない!!
「……!!」
私も、ロザリアも一瞬覚悟したと思う。
だが、魔族王の剣が彼女の頭に振り下ろされる事は無かった。
「……何故?」
「なに……?」
魔族王が何故かたじろいでいる。
表情を歪めロザリアから距離を取った。
「何故よ! 何故……どうして貴女がそれを……!?」
訳が分からないが、これはチャンスだ。
「ロザリア! 一気に行くよ!」
「言われなくともっ!!」
「どうして……お姉様の髪留めを、貴女が……」
魔族王がぶつぶつ言っている間に私とロザリアがまず魔法で攻撃しつつ、私のアーティファクトで重力を操作し魔族王の身体を地面へと落とす。
「ぐぅっ!」
あの魔族王が、不思議な程あっさりと重力に負け落下していくのを、ロザリアが横からその剣で切り払う。
直前で防御障壁を張ったのか、ガギンと硬い音がして弾かれてしまうものの、まだ重力は生きているので軌道を変えただけで勢いよく地面へめり込んでいく。
砂埃をあげながら地に伏した魔族王が吠えた。
「それは貴女の物じゃない!!」
「生憎とガーベラ本人が私に託したのよ!」
ロザリアの追撃を剣で受け止めながら、魔族王の表情が険しくなる。
「嘘よ! 嘘……! そうだ、貴女が、お前がそんな外見でお姉様を騙したのね!?」
「おいおい化けの皮が剥がれているぞ? お前はメアリー・ルーナじゃなかったのか?」
「メア、リー……? わ、私は……。う……うるさい。うるさいうるさい煩い五月蠅いうるさいうるさいぃぃぃっ!!」
魔族王の周りで爆発が起き、爆風に目を奪われた一瞬で、ロザリアに魔族王の一撃が入ってしまう。
だがロザリアが着ている赤い服が相当防御力が高いらしく、真っ二つなんて事にはならなかった。
切り裂かれる事は無かったようだがかなりの衝撃がロザリアに駆け巡ったようで、吐血し、おそらく意識を失っている。
慌てて受け止めに行こうとした私の背後に、魔族王が……。
「次は貴女よっ!!」
まずい……! アレで切られたら私じゃ抵抗できないっ!!
「させない」
パキィィン!
私を背後から切りつけようとしたその剣を、何者かが弾いた。
「おにいちゃんに、何してんだお前」
「ショコラ!?」
ショコラは何やら神々しい服装に身を包んでいて、魔族王の剣を不思議な光る刀で受け止めている。
「くっ、邪魔をするなぁっ!!」
魔族王が激昂し、魔法を放ちながら剣を振り回すが、剣撃はショコラが巧みに受け流し、魔法の方はことごとくどこからか飛んできた対属性魔法に相殺され掻き消えていく。
「遅くなったのう。ここからは儂も参加させてもらうのじゃっ!」
めりにゃん!!
一瞬で相手が放った魔法と反する魔法をぶつけるなんてさすが元魔王ね!
「これを使いなさい! メディファス! 分ってるわね!?」
『無論!』
意識を取り戻したロザリアがフラフラしながらも渾身の力を振り絞り私へ剣を投げてよこした。
くるくると回転しながらしゃべり出した気持ち悪いそれを受け取り、魔族王へ向け狙いを定める。
「次から次へと……! 貴様ら纏めて消しとべぇぇぇぇっ!!」
魔族王が振りかざした掌からとてつもない魔力が放たれようとしているのが分かった。
間に合えっ!!
「メリーっ!!」
「……ッ!?」
何処からか聞こえてきた声に魔族王の動きがピタリと止まり、その一瞬に透明な回転する刃が肘から先を切り飛ばした。
「良くやったアシュリー!」
アシュリーの声に反応した時点でメリーの意識はまだどこかに残っているのかもしれない。
だけど、今はこうするしかないんだ。
恨んでくれて構わない。
「行けるか? 相棒っ!」
『行けますとも。主っ!』
「くらいやがれぇぇぇぇっ!!」
ありったけの魔力をメディファスでブーストさせた俺の一撃は、魔族王の肩口から斜めに……その身体を真っ二つに切り裂いた。
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