ぼっち姫、刺される。
「さっきのって魔物の国に行ってるっていうナーリアさんでしょ? 私の仲間だった人なんだよね?」
「……しらない」
嘘つけこんにゃろ……。
いったい何を考えてるんだ……?
「とにかく、今はまだその時じゃないから。次に声かけるから今度は絶対静かにしてて」
そう言ってショコラは私をめっちゃ睨みながら次の人に向かって話しかける。
「らいぐるみー。返事しろー」
「らいぐるみとは失礼である! 一体なんの用であるか?」
「単刀直入に聞くからイエスかノーで答えて。お兄ちゃんがメディファスをどこで見つけたか知ってる?」
「場所自体は知ってるのであるが、恐らくそれならヒルダ様の方が詳しいかと……おや、ナーリアどの? どうされたのであるかそんなに血相を変えて……」
「ちょっとショコラ!! そこに姫が」
「さよならー」
ぷつっ。
「おい、らいぐるみとかいう奴もなんなのか気になるけどさ、あのナーリアって奴いいのかあれで?」
「いい。ナーリアは今呼ぶにはうるさすぎる」
……うーん。なんとなくこの子の言う事も分かる気がするけど、それだけ私の事を心配してくれてるって事なんだよね?
ちょっとかわいそうな気もする。
「それより急がないと。次はめりにゃんだ」
めりにゃん……? なんだその可愛い名前は!
「はろはろめりにゃーん」
「ん? なんじゃショコラか。お主いったいどこに行ったのじゃ? みんな心配しておったぞ」
のじゃ!? でも声は可愛らしい女の子だったけど……。
「悪いけど説明してる暇ないから急いでここに転移してきて。絶対にナーリアに見つからないでね」
「ど、どういう事なのじゃ? ナーリアなら何やら下の階で騒いでおるようじゃが……」
「今すぐこっち来て!」
「こっちってどこじゃっ!?」
「あぁもう! とにかくナランの入り口にすぐ来て。絶対他の人連れてこないでね!」
ショコラはそれだけ言うと通信を切ってしまう。
まだ向こうでは「なんじゃどういう事じゃ」とか聞こえてたけど。
「おじさん悪いけどすぐにナランに引き返してくれる?」
「えーっ、何か忘れ物ですか?」
「うるさい死にたくなかったら早くしろ」
ショコラが急に御者のおじさんを脅し始めたので私は慌てて割って入った。
「お、おじさんごめんね! ちょっと人と合流しなきゃいけなくなっちゃったからもう一度戻ってもらえるかな?」
私が手を合わせてごめんね? とウィンクして見せると「そ、そういう事なら……」と馬車をぐるりとターンさせて元来た道を戻り始める。
「ちっ……この魔性の女め」
ショコラは私にそんな暴言を吐く。
あんたが急に御者に暴言吐くからこんな事になったんだろうが!
妹のくせに私に対して当たりが強すぎるんだよなぁ。
昨日の夜はあんなに興奮して襲い掛かってきたくせに。
……いや、あれは忘れよう。トラウマになりそうだ。
ほんのちょっとだけ、ショコラに襲い掛かられたあの時……何かを思い出しそうになった事は私だけの秘密。
あんな事で記憶が戻りそうになったとか恥ずかしすぎて死ねるから。
幸いまだナランに近い場所なので、すぐに戻る事が出来た。
引き返している最中にめりにゃんって人からショコラに通信が入って、「どこじゃー?」「今向かってるからちょっと待ってて」みたいなやり取りもあったので、相手はもう到着してるみたい。
私の仲間の一人、めりにゃん。
めりにゃんってなんだよ可愛いすぎるでしょ。
昔の仲間……とうとうここまで来た。
勿論ショコラも前の仲間なんだろうけど全然そんな気がしないんだよなぁ。
何も教えてくれないし変態だし。
「死にたくなかったらちょと馬車止めて」
ショコラは荷台から顔を出し、また御者を脅してる……。
御者のおじさんは無言で頷き、馬車のスピードを落とした。
「……よし、本当に一人だな。もういい、あそこに居る子の所まで行って」
ちゃんと一人で来てるか確認をするあたり徹底してるというかなんというか……。
「突然こんな所に呼び出してなんのつもりじゃ? 納得のいく説明は聞かせてくれるんじゃろうのう?」
「……背、伸びた?」
「これがわしの本来の姿じゃっ! お主だって見た事あるじゃろうが!!」
「うん、でも小さい方が好み」
「やかましいわっ! で? 早く説明するのじゃ」
「分かったからとにかくこの馬車に乗って」
外でそんなやり取りが繰り広げられて、馬車の荷台に私より少し小さいくらいの女の子が入ってきた。
黒髪。それとおでこの両端からにょきっと生えている角。背中から生えた二つの羽根。そしてお尻にはぴこぴこ動く尻尾。可愛すぎかよ。
「おいこりゃ人間じゃねぇぞ……! しかも、ただ者じゃねぇ……」
サクラコさんがその女の子を見るなり腰の剣に手をかけて警戒態勢を取った。
見ただけで相手の実力が分かるの? そういうスキルなのかな?
でも私の時とは反応違いすぎるよね? 今は警戒してたから見えたとかそういう事なのかな?
それともニンジャマスター的勘??
「おや、お嬢さんはあの時の」
カエルさんは知ってるみたい。
「おぉ、いつぞやのカエルではないか……って、……え?」
黒髪の少女は、私に気付くとその場で静かに涙を流した。
荷台の床にぽたぽたと雫が落ちる。
「え、えっと……泣かないで、ね?」
「うわぁぁぁん!! セスティ! セスティぃぃぃっ!!」
どごす!
「ぐえっ!!」
黒髪少女が私に凄い勢いで飛びついてきて、
角が、刺さった。
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