ぼっち姫、ご褒美になる。
「で? 結局プリンはこれからどうするつもりだ?」
王様との謁見が終わって、私達は先程よりは少し狭い部屋に通された。
目の前には山盛りのご馳走。
あとお酒。
サクラコさんは狂喜乱舞してがつがつむしゃむしゃ食べている。
カエルさんも、物を吟味しながらだけど食事を摘まんでは幸せそうな顔をしていた。
カエルなのに普通に料理食べるんだなこの人。
てっきり虫とかを舌でひゅんって感じで取って食べるものとばかり。
そうそう、もうあのフードは被っていなかった。
王様は最初からカエルさんの事を魔物だって見抜いていたらしくて、「楽にしていい。魔物とは同盟を結んでおるしな」と言って、城内でのみ本来の姿のまま行動をする許可をもらった。
って事は城の中に居る人達は、どう思っているかはさておき魔物との同盟を理解しているということなんだろう。
「この酒ハ奢りの酒とは別ダゾ」
「分かってるようるせぇなぁ! それよりもだ。あたしはこの後エルフの里を目指すつもりだがプリンはどうする?」
「……あっしは、魔族と戦うかどうかはおいといて姫さんの手伝いをするつもりでさぁ。記憶を取り戻す協力する約束ですんで」
サクラコさんはエルフの森へ。
カエルさんは私が記憶を取り戻す為の手伝い。
私は……?
魔族とか神様とか言われてもいまいちピンとこないんだよなぁ。
とりあえずは今まで通り自分の記憶を取り戻す旅、でいいのかなぁ?
もしそうするなら目指す場所は? 特に行く当てがないんだよなぁ。
だったらサクラコさんと同じでエルフの森へ行こうか?
サクラコさんはショコラを探してるわけだし、ショコラなら私の事も知ってる筈だよね。
ここまで来て全てを諦めるわけにはいかない。
私は私と向き合って、変わる為に。
「それなら私も一緒に……」
エルフの森へ。
そう続けようとした時だ。
私の視界が揺らぐ。
目の前が真っ暗になる。
意識はある。
次に視界がぐにゃりと歪んだ時、私は……。
「ここ、どこよ?」
瓦礫の山。
見るからに城の中。
だけど、ディレクシア城じゃ……無い!
『やぁ久しぶりだね』
その声にハッとして振り返るけど、そこには誰も居ない。
「?」
『上だよ』
声の通り、天井を見上げると、そこにはなんだか全体的に白っぽい人が浮かんでいた。
脇に何かを抱えてる。
「貴方、誰? ここどこ??」
『ふむ……君もいい具合に機能しているようだね』
「答えて! 貴方が私をここに連れてきたの?」
誰だこいつマジで。
「貴方は私の事知ってるの? だったら私の記憶を……」
『それはできない。そもそも君を今ここに呼んだのはちょっとしたサービス精神というやつだよ』
サービス? なんのサービス?
『君は分からなくていい事さ。君に対してではなく、今そこで結界に閉じ込められている人達へのサービスだよ』
全然意味わかんない。
変な人が指さした方を見ると、なんだか球体に近いけど角ばってる大きな物体があった。
「なんだこれ」
『私とゲームをしていた人達だよ。今回は私が勝ったのでね、一時的にそこに閉じ込めておいた。だがとても楽しかったのでご褒美を用意したわけさ』
「ふぅん。でご褒美が私なわけ? 意味わかんないんだけど。で、そこに居るのが誰か聞いても?」
『答える義理はないね』
その男はゆっくりと地面に降りてきた。
小脇に抱えていたのはどうやら女の子らしい。
「え、もしかして人さらい? さいってー」
『いやいや。それは誤解というものだ。これは元々私の物だからね』
「人を物呼ばわりしてる時点でヤバいやつじゃん」
『ふふふ……これはこんな形をしているがアーティファクトだよ。道具さ』
人の形をしてるだけ?
だったら別にいいか。
……いい、のか?
「その道具とやらに意識はあるの?」
『使用時以外は自立して動くようにプログラムがしてあるね。まぁ、それを意識と呼べない事もないかな』
「うん。だったらあんたは人さらい決定だよ。どう考えても同意してない無理矢理の連行でしょ?」
『ほう、確かにそれはそうだ。だとしたら、君はどうするんだい?』
「悪い奴は……ぶっとばす!」
『ははははっ!! これは面白い事になってきたぞ君を呼んで正解だったかもしれないね』
何が面白いのかしらないけどヤバいやつっぽいからぶん殴ろう。すぐぶん殴ろう。
ただ、その前に確認する事がある。
私はぐるぐる巻きにしてある着物の生地をほどき、剣を構えて叫んだ。
「だからここどこよ!?」
もしこいつ倒したとしても帰れなかったら困るし!
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