ぼっち姫、王都と魔物の国。
リンシャオさんは街を眺めるだけで作業を手伝おうとはせず、サクラコさんはその辺のお姉さんをナンパし、カエルさんはフードを目深に被りなおして人目に付かないように隅っこの方に引っ込んでいる。
つまり、街の作業を手伝ってるのは私だけって事になる。
みんなもう少しこの状況を見て手伝うなりなんなりしてくれたってよさそうなものだ。
結局私は世間話なんかをしながらある程度手伝って、やがてリンシャオさんが城へ行くというので仕方なく切り上げて後をついて行く事にした。
城の前は流石に警備が厳重で騎士団の人達が沢山居たけれど、「リンシャオが来たと王に伝えてクレ」と伝えると、五分もかからず城の中に通された。
リンシャオさんっていう名前だけで話が通る時点でやっぱり同盟の話はロンシャンというよりもリンシャオさんに対してきた話だったのかもしれない。
お城っていうだけあってかなり中は広く、階段を上がったり廊下を渡ったりを何回かして、やがて一際大きな部屋の入り口へとたどり着く。
大きな部屋、だと思ったのは単純に扉が大きかったからだけど、中に入ってみれば実際に広い部屋だったと分かる。
勿論簡単には入れずドアの前に騎士が立っていて、後ろの連中はここで待て、と言われてしまったのだがリンシャオさんが、「こいつラ入れないならワタシは帰るネ」と言い出し門番を困らせる。
結局王へ許可取りに行き、OKをもらって私達も入る事になった訳だ。
「……遠路はるばるようこそ、ディレクシアへ」
王様はもうかなりの高齢のようだけれど、その威厳というか王の貫禄みたいなのが身体中から溢れ出している。
頭に豪華な王冠を乗せていて、髪は短くて綺麗な銀髪。長い髭と顔の皺が今まで長い時を生きてきた経験の深さを物語っていた。
「そこの女性は……? 何故魔王と同じ顔をしている?」
そこの女性って誰。もしかして私の事?
リンシャオさんじゃないだろうし、サクラコさんが魔王と同じ顔な訳ないだろうし。
まぁ私だって同じわけないんだけどさ。
「……ふむ……まぁよい。それはおいおい考えるとしよう」
「なんの話カ分からないガ、それよりモ同盟というのはどういう風の吹き回しネ」
「それはこちらの台詞という物だろう。確かにこちらから同盟の提案をさせてもらったがお前が簡単に受け入れるとは思わなかったぞロンシャン第二皇女リン・リンロン」
皇女? リンシャオさんが? ロンシャンの? ……この人だったらなんだとしても驚きはあまりないんだけど、どっちかっていうとこの性格で皇女様な上にあんな所で地下闘技場を仕切ってたのが不思議。
サクラコさんはどうやら知ってたみたいで全く動じてない。
カエルさんに至っては別にどうでもよさそうな感じ。フードのせいで顔は良く見えないけど。
「その名前はモウ捨てたネ。あの国の王は死んダヨ」
「……確かにロンシャンに何かがあったという報告は受けているが……本当だったようだな」
「フフ……もう少しで準備が整うはずだったノニいいところで邪魔が入ったネ。それさえなけレバ今頃この国は火の海だったヨ」
「相変わらず危険思想の持主だな……しかし、同盟を受ける気になったという事でいいのであろう?」
リンシャオさんはどうやら本気でユーフォリア大陸に攻め込むつもりでいたみたいだ。
国の決定というよりも、彼女が決めた事、という雰囲気がある。
真実までは分からないけれど、この人がかなり危険な人だったのは間違いない。
「繰り返すガもうワタシはただの一般人ヨ。一般人の立場から考えたらこの同盟は悪い話ジャないネ。勿論組むからには経済的な協力はしてモラウけれどナ」
「……まったく。そういう所は変わっていないな。その歳で本当に恐ろしいよ。本来ならばそんな危険思考の指導者など始末するに越した事はないのであろうが……一般市民を手に賭ける程腐ってはおらんのでな」
そう言いながら王様は笑っていた。
こんな状況を楽しんでいるかのように。
どんな神経してたらこんな物騒な会話で笑えるんだろう。そういうタフさがあったからこそ王様なんてやってられるんだろうね。
「具体的な話は後々詰めていくとしてだ。同盟の理由は……そう、世界に脅威が迫っている」
魔族。
王様が言っていたのはそれの事だろう。
最近このユーフォリア大陸の各地で魔族と呼ばれる存在が多数目撃され、甚大な被害も出ているのだそうだ。
でもそんな事よりも、驚いたのが……。
魔王軍、つまり魔物達との同盟。
「この国は魔物とまで手を組んだノカ? 世も末ネ」
「それがまた新たなる魔王が実に面白い人物でな。魔物だけの国を造り人を襲う事を辞めるんだそうだ」
……じゃあ魔王の命令で各地の魔物が居なくなってたって事? どこかに集まってるんだ。
そしてその中心地が、魔物達の国。
人に害がないのであれば一度観光にでも行ってみたい気がする。
「その国の名は……魔物フレンズ王国」
だっさ!!
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