妹的に衝撃の事実。


「はぁ……」


 これは完全に外れじゃん。

 私はため息を吐き出しながら周りにいる面子を見回す。


 まずナーリア。これはもってのほか。そもそも苦手。

 あとなんか知らないおじさん。確かアレクとか言ったっけ。この人の事はよく分からない。めりにゃんが連れてきた人だけど、王都の騎士団で昔一番偉い人だったんだってさ。


 なんでそんな人が一緒に来たのか分からないけど、この人が誰なのかとか強いとか弱いとかあまり興味が無い。


 だっておじさんだし。


 せめてもの救いなのがこのメリーって子。

 アシュリーの話によるとアーティファクトなんだってさ。でもこの人も結局ダメ。


 結論を言うと、やっぱり外れなのだ。


 とはいえ人型のアーティファクトなんて珍しいよね。


 それに、実はかなり重要な人らしい。

 他の人達と別れる時にアシュリーから言われた。


「こいつを魔族に奪われるわけには行かないからしっかり守ってやってくれ。あんたなら大丈夫だとは思うけどな……」


 だってさ。そんなに心配なら自分で守ればいいのに。


 だからさっきメリーとシリルが二人で障壁中に行っちゃった時あんなに焦ってたんだね。

 てっきりアシュリーの女なのかと思っちゃったよ。


 私的にはアーティファクトだろうとなんだろうと可愛い女子だったら大歓迎だったから、アシュリー達が見えなくなってすぐ手を出した。


 そりゃもういろいろと。


「あれれあれれー? ショコラさんいったいどうしちゃったんです? 遊んでくれてるんですかねー?」


「……マジか……」


 ってな事があった。


 こいつはダメだマグロだマグロ。

 そういう機能が付いてないみたいで全く反応しない。


 何度でもいうけれどこのグループは完全に外れだ。


 せめてシリルでもいれば憂さ晴らしが出来たのにアシュリーの方になっちゃうし。


 本当はアシュリーかめりにゃんと一緒がよかったなぁ。


「ショコラどうしました? 随分暗い顔をしてますけど」


「……だいたいお前のせい」


「ひ、ひどい! 私ともっと仲良くして下さいよ」


 ナーリアがごちゃごちゃ言ってくるが無視だ無視。

 そもそもナーリアと関わってもろくな事がない。


「……ショコラさんと言いましたね。貴女はあのセスティさんの妹と聞きました。そして先程の身のこなし……なかなかの手練れですね」


 先程の身のこなしってアレ? メリーに対してのアレの事だよね? まったく無反応だったアレの事だよね? だとしたら嫌味で言ってるのかな? こんにゃろう。


 もし純粋に褒めてくれてるんだとしてもおじさんに褒められても嬉しくないんだよなぁ。


「まぁ、ね。私はニンジャマスターの弟子、だから」


「なっ!?」


 今までのクールでスカした表情が真っ青になった。


「何?」


「ニンジャマスターの、弟子? 貴女、まさか……サクラの関係者ですか?」


 サクラ……? サクラコだからサクラ?


「私の師匠はカオルコ・サクラコだけど。おじさんの言うサクラって師匠の事?」


「……え、えぇ……古い知人です。よもやこんな所であの人の関係者と出会うとは……嫌な縁というのは切れない物ですね……」


 こっちの方が驚きだよ。

 あの変人師匠に男の知り合いがいたなんて。


「師匠とはどういう関係なの?」


「……いえ、昔一緒に旅をしていた事がありました。私がまだ一騎士団員だった頃の事です……」


 うわ、なんか語り出したよ……。

 でも一応師匠に関係する事だから私もそれなりに興味があるし聞くだけ聞いてみよう。


 なんだかメリーとナーリアは少し後ろで勝手にイチャコラしてるし、私の暇つぶし相手は今のところこのおじさんだけみたいだからね。


 おじさんが言うには、昔騎士団の視察でロンシャンに行った事があったらしい。

 関係が悪化していたロンシャンと、手を組む切っ掛けが何かないかを模索していた頃だったんだって。


 だけど結局ロンシャンはユーフォリア大陸自体を目の敵にしていて、手を組むどころかアレクがディレクシアから来たって情報をどこかから仕入れて宿屋を襲撃。

 大怪我を負いながらもかろうじてその場を逃れ、ディレクシアに帰ろうにも沖に出る船にはすべて調べが入るような状態になっちゃって、指名手配みたいな感じになったらしい。


 そこでしばらく様子を見て、間を開けてから改めて帰る手段を探そうとしたけど、ロンシャンに居る以上いつか見つかっちゃう。


 だからやむを得ず一度ニポポンに渡って身を潜めていたらしい。


 そこで、魔物に襲われている少女を助けたら惚れられて、ストーカー気味に追いかけまわされたらしいんだけど、その少女が師匠の女だったらしくて……。


 なんかその光景が頭に浮かんだ。

 自分の女を男に取られたとあっちゃあの人は完全にプッツンしちゃうだろうなぁ。


「そりゃもう大変でしたよ……昼夜問わず襲撃してくるんですあの人は……。なんとか毎回退けてはいましたけれど三か月くらいほぼ毎日襲撃を受けていましたね……」


 まだ若い頃とはいえあの師匠に三か月も追いかけまわされて生きてるなんてこいつかなり強い人だ。


「あの日々は間違いなく私の人生で一番の修行になりましたよ……」


 瞳から光をなくし遠くを見つめながら語るおじさんの姿はなんだか哀愁が凄かった。

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