人形少女は思考する。
マスターは私を目覚めさせてくれた。
ちょっと……いや、かなり……ううん。すっごく怒りっぽくてすぐに私の頭をぶつけど、なんだかんだでちゃんとお肉食べさせてくれたいい人。
私がおうちに帰りたいって言ったらちゃんとローゼリアまで連れて来てくれたし。
懐かしい匂い。
綺麗な小川も、草木も、記憶にある姿とは大分変っちゃってるけれど、ここは間違いなく私が知っているローゼリアだ。
この匂いにもう一度包まれたくて連れてきてもらったけど、なんだあれ。
ちょっと距離はあるけれど、なんだか青白い光の柱が地上から空へ向かって伸びている。
綺麗ではあるんだけど、この場所には似合わないなぁ。
私ちょっとだけご機嫌斜め。
「ねーマスター? あそこがローゼリアのお城ですかー?」
マスターに詳しく聞こうと思って振り返るとそこには誰も居なかった。
マスターってば迷子ですか?
まったくしょうがないなぁ……。
ってこれもしかして私が置いてかれちゃってるんです?
その時、ちょっと離れた所、木々の向こう側で爆発音が響いた。
誰かと戦ってる??
急いでそちらに向かうけれどどうにも身体がちゃんと動いてくれない。
マスターがくれた動力源は最低限の活動を保障するだけのものだったらしく、少し走るだけでも息が上がる。
「ひーっ! ひーっ! ちょっとマスター置いてかないでくださいよぉー」
「お前は黙ってろ!! それより、アンタ一体なんなんだ? 私が知ってるメアとは……」
なんだかもめてるみたい。
話を聞く限り、相手は魔王様なんだってさ。
で、マスターが魔王の友達を閉じ込めちゃってるんだけどその人はマスターの妹で……?
もうぜんぜんわかんない。
なんやかんやと騒いでるうちにいろいろ解決して、マスターのお友達達が沢山集まって来た。
「げっ、ショコラ!?」
「久しぶりのご馳走!!」
「ぎゃーっ! 誰かこいつをどこかにやってくれ! おいメリー助けろ!!」
「私は戦闘とか無理ですー」
「この役立たず! ぽんこつ! ぎゃーっ!!」
マスターがショコラって人とすっごく楽しそうに遊んでてちょっとだけ羨ましい。
やめろやめろと騒いでるけどだんだんマスターも変な顔になってきたし多分喜んでるんだろう。
マスターの友達達もその風景を止めもせずに見てるし、きっとこれがいつもの風景何だと思う。
あんな怒りっぽいマスターにも友達が沢山いたんだなぁ。
「わ、私も混ぜてもらってもいいですか!?」
「ナーリアちゃん!?」
「ナーリアはダメ」
「お前らは相変わらずじゃのう……でもなんだか懐かしいのじゃ」
混ざろうとしたナーリアって人にメアって人が驚いて、ショコラって人が断って、ヒルダって人がやれやれって感じ。
マスターは……あ、ダメだこれ。
「マスター? いきてますー?」
「ぐすっ……ぜったいゆるさないんだからぁ……」
あ、マスター可愛い。
私はマスターに手を貸して、ゆっくり立ち上がらせると、
「……偶然ここに集まったにしては出来過ぎてるわね。それと知らない顔が幾つか……。ショコラと一緒の女、それと……そこの眼鏡。あとなんだこのでかい竜は!」
「というか何故おぬしらメアと一緒に居るのじゃ!? あまりに自然に溶け込んでるからスルーしてしもうた……」
「……確かに。おにいちゃんを返してもらう」
なんだかヒルダさんとショコラって人が魔王から距離を取りつつちょっと険悪な感じになって、それを必死にナーリアさんが説得っていう何回目かの繰り返し。
説明し疲れて大変そう。
そして、今まで皆がバラバラに行動してたらしく、何があったかっていう報告会が始まった。
私的にはあんまり興味ないんだけど、おっきな竜が人型になったのはびっくりした。
健康的なおじいちゃんって感じの外見になった。
あと、多分だけどショコラって子が連れてる女の子は人間じゃない。
何だあれ。
……多分私と同じだ。
アーティファクトじゃなくてもっと単純な……だけどきちんと生命体。
神に作られたガーディアンの一種だとは思うけれど……。
とりあえず皆の報告会が終わって、分かった事があるとすれば、何故かそれぞれがローゼリアを調べに来たって事。
ショコラさんと、そのお供のシリルって人はローゼリアに興味ないみたいだけど。
話が落ち着いた頃を見計らって、全員でローゼリア城の方へ向かう事になった。
ほんのちょっと前までマスターと二人っきりだったのになんだか随分とにぎやかになっちゃったなぁ。
私が昔、ちゃんと起動していた頃だってこんなに騒がしい事は無かったと思う。
いまいち覚えてないけどー。
そんな事を考えてるうちにあの青白い光の壁までやってきた。
でもみんなその障壁に阻まれて中に入れないみたい。
「マスターマスター」
「なんだよ今こいつの対策考えなきゃいけないから少し黙って……」
「私これ通り抜けられますよー?」
私がその光に手を触れると、驚くほど簡単にするりと手が向こう側へと突き抜けた。
そして、私と同じ人がもう一人。
「あっ、お姉様! 私も通れるみたいですの!」
それはショコラさんが連れてきたシリルという女の子だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます