妹的にお荷物な奴。
「ふぅ……シャリィってばめちゃくちゃ抵抗するじゃん」
「……あ、たり……まぇ……だろう、が……」
「でもおかげですっごく楽しかった。次回も楽しみにしてるからね」
「うるさい! 早く行けよ。ばかぁ……」
シャリィは服をほとんどはだけさせて一糸まとわぬならぬ一糸くらい纏ってる感じ。
服の乱れを直すのすら忘れて顔を両手で覆って泣き崩れている。
あぁ、この子は何処まで私の加虐心を煽るのが上手いんだろう。
「ねぇ、ほんとにシャリィは一緒にこないの? 一緒に来てくれたら私すっごくたのしめ……嬉しいんだけど」
「今お前楽しめるって言おうとしただろ!! 絶対行かないからな! キャナル様を守る使命があるんだからなっ!」
シャリィはずざざざっと服を引きずりながら後ずさりして私から距離を取る。
あーたまんない。
「お前はあの鏡に映った奴探しに行くんだろ!? だったらここでお別れだ早く行け! 行けよ!!」
「シャリィ……?」
「頼むから早くどっかいってよぉ……ふぁぁん……」
やっべもう無理。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「……ほんと勿体ないなぁ。でもそろそろ行かなきゃだから。キャナルさんにも宜しくね。またそのうち遊びに行くからって」
「……お前は人の皮を被ったケダモノだ……キャナル様はっ、私が……まもるんだからぁっ……」
うずうず。
「大丈夫? ここから一人で帰れる?」
「もういいから私の事は放っておいてよぉ……ぐすっ」
むらむら。
「シャリィってさ、すっごく可愛い声出すよね」
「ばっ、ばかぁっ! 死ね! 早くどっかいって遠いところで死んじゃえっ!!!」
あーこれはもう無理。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ……あぁっ……」
「ニポポンにはね、閑話休題。って言っておけばとりあえず問題なく話を進められるっていう文化が」
「そんなそんな悪い文化滅びろ!!」
本当にいつまでもここから離れられなくなりそうなので、今度こそシャリィに別れを告げて目的地へ向かう事にした。
ここで別れたとして、もしシャリィがキャナルさんを説得して集落ごとどこかへ移動してしまった場合……。
「絶対また楽しみに……遊びに来るからね。もし逃げたとしても今の私にはこの手鏡があるんだから……。どこにいるかなんてすぐに突き止めてやるから」
「……うるさい早く消えろー!!」
このくらいで勘弁してあげよう。
私は顔を真っ赤にして泣きながら暴れるシャリィの耳元に、最後に一度軽くキスをして別れを告げた。
「じゃあ、またね♪」
「ひゃぁっ……貴様という奴は……もう、いい加減に行ってくれ。ほんとにこっちも限界だ……地の果てまで追って来るっていうなら続きはまたその時な。……だから、死ぬなよ」
「もう一回しとく?」
「うせろ!!」
私はシャリィの怒声を背に、軽く背後に手を振りながら神殿を後にした。
しかし楽しかった。
シャリィと別れるのは本当に勿体ない。
いろいろ片付いたら必ずまた来るよ。
さてさて。とりあえずこの辺で一番高い丘へ登ってみよう。
さっと見渡して、ここだと辺りをつけてひょいひょいと崖を駆け上がる。
「うーん。ここからじゃ見えないなぁ」
念の為に自分でも方角を確認しておきたかったんだけど……。
そうだ。
私は近くに生えてる木の中で一番高いのによじ登って天辺に立ち、もう一度周りを見渡してみる。
「おっ、あれだね」
うっすらとだけど青白い光の柱がぼわっと見える場所がある。
確かに鏡に映ってたのに似てる。
まずはあそこまで行ってみようか。
そしたら何か分かるかもしれない。
距離的にどのくらいあるかなぁ。
走って行ったとして三日もあれば行けるかな?
とりあえず途中で水分不足とかにならないといいいんだけど。
あの砂漠みたいなのが途中にあると困るけど、それは反対方向だからきっと大丈夫だろう。
多分。
あとはなるようにしかならないよね。
よく考えたらシャリィを連れてこなかったのは正解かもしれない。
だって一人で走った方が早いし。
その辺考えると一人行動ってのは気楽だ。
責任が生じるのは自分の命だけだし。何かあっても自分の責任だし。
「とうっ!」
方角も確認したので木のてっぺんから飛び降り、枝を幾つかぴょんぴょんと足場にしながら地面に降り立つと、なんていうかちょっと困る事になった。
「お姉様! 私を連れて行ってください!」
……ゆっくり振り返ると、そこには……鏡を守ってた集落の巫女が潤んだ目でこっちを見ていた。
「あのね、これから私全力で走って行くから多分途中ではぐれるよ?」
「それは追いかけていくのは許可してもらえるという事ですか!?」
あー。うーん。
「君の命には責任持てないんだけど」
「構いませんわ! 遅れたら置いて行ってください。死ぬ気で付いていきますし死んだら放置で構いませんの! 私もうお姉様無しでは生きていけない体になってしまったのですわ!」
「……へぇ。言うじゃん」
実はこういう健気なのも嫌いじゃない。
それはそれ、これはこれ、というやつなんだよ分かる?
「それなら私の事、死ぬ気で追いかけてきて」
「はいですのっ!!」
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